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Re:connect  作者: ひとやま あてる
第1章 王国編
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第12話 市場

「皆さま、よくぞご無事で」


不意の遭遇から奇跡的に魔人の討伐を終えた勇者パーティ。


ダンジョンから帰還した彼らはザグドルとともにギルドへ報告を終えた。


しかし緊急性の高い事案のためその足で王宮へ赴き、すぐに話し合いの場が設けられた。


「ハンターの犠牲はありましたが、勇者を失わなかったのは本当に幸運でした。ザグドル、あなたの働きのおかげですよ。感謝します」


「いやいや王女様、頭を上げてくだせえ。

俺としても不甲斐ねえばかりだった。

頑張ったのは坊主たちだ」


ザグドルはそう言うが、シロたちにとってはそんなことはなかった。


彼がいなければ最初の一撃で3人はなすすべも無く殺害されていたはずだ。


あのハンターたちのように。


彼らの無残な最期が頭にこびりついて離れない。


初めて人の死を目撃した。


自分たちが弱かったせいでいくつも命が失われてしまった。


その後も何度も死にかけた場面はあった。


エリザが幸運と言った通り、まさに奇跡の上に彼らの命は成り立っていた。


今になって死の恐怖で全身が震える。


だがこれからもあのような命がけの戦いを続けなければならないのだ。


「ところで、アカ様の容態は……」


エリザが心配そうに聞いてくる。


そう、4人のうち現在この会議に参加しているのはシロとアオそしてザグドルの3名で、アカはこの場にはいない。


戦闘の疲労もあるが、それ以上にギフト使用の反動で全身が激痛に見舞われているのだ。


戦闘終了直後からその反動に侵されていたアカだったが、ギルドに到着した時点でついに倒れ込んでしまった。


外傷などの怪我には効果が見られた回復魔法も、この激痛に対しては意味を成さなかった。


そのため現在医務室で療養中である。


「回復魔法が奏功しなかったため、医務室で休んでいます。魔法以外の治療も試してもらってはいますが、今のところなんとも……」


シロが答える。


シロは守ってもらっていてばかりで、一番の功労者はアカで間違いない。


彼に対する申し訳なさでいっぱいだ。


「そうですか。しかしギフトというのは、それほどのものだったのですか」


「俺がなんとか対応していた魔人の攻撃にも余裕で追いついて、なおかつ受け止めていたくらいだ。

短時間とはいえ、凄まじい身体能力上昇が見られた。

もっとも、より万全の状態で挑めばあそこまで苦戦することもなかったとは思いますが」


ザグドルは、倒れながらも目撃していたアカの動きを思い出して伝えた。


「ギフトをより軽く扱えるように訓練をする必要があるかもしれませんね。

しかし王都近辺のダンジョンに魔人が現れるとなると、この国の警備も厳重にしなければなりません。

国全体を結界で覆っているとはいえ、何かしらの手段を使って魔人が秘密裏に侵入してきているという可能性も考えなければ……」


「今後は万全の戦力で、ダンジョンを早急に破壊していきたいと思います」


ザグドルの発言をもって報告は一段落した。


その後の話し合いは重役たちでということで、3人は解放された。


まだ戦いのことを少し甘く考えていたシロたちは、今回の一件で現実を直視し、本当の意味で勇者の役割を理解した。


そして更なる戦いに向けて、彼らの訓練は激化していくこととなる──






シロたちがダンジョンで訓練をしているともつゆ知らず、クロは王都中央マーケットにやってきていた。


目的は魔道具や魔導書を探すため。


王都各所の魔道具店巡りをしていたが、結局はここにたどり着いた。


お金を得た途端に使いたくなる成金気質なクロであった。


「やっぱ人が多いな。ここなら色々見つかりそうだ!」


ちょっと粋がって隠れた名店探しなんかせずに最初からここに来ればよかったと若干後悔するが、このスケールに興奮を隠せない。


ここはすべての商業の中心地。


雑貨から食材に至るまでなんでもござれ、商業都市といっても過言ではないくらいには展開されている。


エーデルグライト王国は王宮ではなくここを中心に街が広がっているくらいだ。


中心は店舗での営業が多く、外に向かうほど露天がひしめき合うようになり、流行の変化とともに店の並びも様変わりする。


そのため何度訪れても、このマーケットの違う顔を見ることができる。


週末には競売も開催されており、一部非合法な取引も行われているという噂も囁かれる。


商品の傾向ごとにある程度区画分けが成されているため、目的の商品は探しやすい。


「じゃあいっちょ突撃するか!」


案内図を参考にしながら目的の場所に向けて歩き出した。


よく人と肩がぶつかり、その度に謝罪を口にする。


そのくらいには人でごった返している。


ぶつかられた方もあまり気にもしていない様子だった。


夕方ということもあって食材目当ての人が多いのだろうか。


そんなことを考えながらグイグイと進むと、ようやく目当ての区画にやってきた。


「おう兄ちゃん! 何探してんだい?」


不意に、店の中からおっさんに声をかけられた。


「魔導書とか探してるんだけど、置いてないかな?」


「あー魔導書かぁ、うちの店では扱ってねぇな。

他の店でも置いてないんじゃねぇかな。

一般人には関係ねぇ代物だしな」


「やっぱそうか。外の店でもなかったしなぁ」


「それによぉ、魔導書は使い手を選ぶって噂だぜ。

適性がない奴には開くこともねぇとか。

兄ちゃんはコレクターか何かかい?」


それは初めて聞いたな。


「そんなとこ。どこにいったら手に入るとか分かるかな?」


「可能性があるとすれば週末の競売だな。

ああいう骨董品は大概お金持ちの貴族様が買っちまうから、兄ちゃんがお金持ちってんなら手に入れることもできんじゃねぇか?」


「情報助かったよ。ありがとうおっちゃん。

じゃあいくわ」


ガシリと腕を掴まれる。


「まぁ待て。他の商品も見ていけよ」


顔が近いよ、おっさん。


「何かあるの?」


面倒だが聞いておく。


こんな予感がしたからさっさと立ち去ろうとしたのに。


「おう、あるぜ!この掃除用魔道具なんかどうだ!

生活魔法に関わる大概の魔道具は刻印が徐々に薄れて効果が弱くなるが、こいつはすげぇぜ!

なんたって特殊な方法で刻印されてるもんだから、効果がまず落ちない。

吸引力が変わらない唯一の魔道具ってのが売りだ!

なんなら安くしとくぜ!」


ダ○ソンかよ。


「あとこいつもやべぇぜ! これは──」


途中からおっさんの熱弁は聞き流して、店内の魔道具に目をやる。


胡散臭い見た目のものが目立つが、量としての品揃えはなかなかだな。


すると、天球儀の赤い宝石に目がいった。


「なぁ、あれって何なんだ?」


「──ってことだからよ。……あ?」


おっさん、話を遮ってすまんな。


「これのことか?」


そう言ってこっちに見せてくれた。


「これはアクセサリーに加工してるが、この真ん中の宝石が人気みたいでよ。マナを込めたら光るってんで、若者の間で流行ってるみたいだぜ。

魔族との戦争で東から物とか人が流れてきてるから、この宝石もその1つだろうな。

うちの国は西の端にあるから魔族との戦争にはほとんど縁がないしな。

あとは込めたマナを取り出すこともできるな。

取り出せるから何だって話なんだが」


ん……?


「おっちゃん、最後なんて言ったんだ?」


「この宝石に込めたマナを取り出せるって言ったんだよ。MPなんて普通に生活してりゃ枯渇することなんてねぇんだから、こんなちっせぇ宝石に込めて置いといたってなぁ」


「おっちゃん、これいくらだ? 売ってくれ!」


「なんだ兄ちゃん、こいつが気に入ったのか?

取り出し効率も悪いみたいだぜ」


「いや、それでいい。ちょうどそんなのを探してたんだ」


「兄ちゃんがいいならそれでいいが。

じゃあ50ゴールドだ」


「は? たけーよ!」


50ゴールドとか一家3人が半年暮らせるわ!


「冗談だよ冗談。そんな大声出すなよな。

ほんとは5ゴールドだぜ」


「それでも十分高いけどな」


「俺もこれの何がいいのかわからんが、仕入れ額もそれなりだったんだ。他の店よりちっとは安いはずだぜ」


「まぁそれでいいよ。

おっちゃんは色々教えてくれたしな」


「まいどあり! おまけでこいつを引っ掛けるネックレスもつけといてやるからよ。

今度来てくれた時は安くするぜ、兄ちゃん!」


「ありがとう。じゃあね」


他の店舗も色々見てみたが、陽も落ちてきたし全部を回るには時間がどうあっても足りなかったので今日は退散することにした。


宝石以外には、使うかは分からないが回復ポーションだったり、ポーションを入れるための腰に装備するバッグなどを買った。


あとは武器とか防具を揃えたら冒険者みたいでかっこいいな。


大満足で帰るクロであった。

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