第9話 学習
…。
……。
………。
はいはい、わかってますよ。
またあれだろ。
俺が主人公なら、起きたら女の子の膝の上なんてことがそろそろ起きてもおかしくないんだけどな。
だがあいにく主人公はあいつらで、俺はモブキャラだ。
仕方ない、起きるとするか。
はあ…。
目を覚ますと、やっぱり知らない天井だった。
綺麗めなベッドに寝かされて、ベッド周りが白いカーテンで区切られている。
保健室だろうか。
ベッドの上で身じろぎしていると、その音を聞いてカーテンを開ける人物がいる。
顔を出したのは、白衣を纏ったイケメン男性だった。
…俺にはホモルートしかないのか?
話しかけてくるが、やっぱ何言ってるかわかんねーわ。
とりあえず元気になったので、ありがとうとだけ伝えて保健室を出た。
外を見ると、まだ昼間だった。
意識を失ってたのは1、2時間ってとこか。
毎度こうなるようならちょっと考えないとな。
MPって増やせないもんかね。
そんな事を考えながら歩くが、帰り方が分からん。
でも運動場に出たら教室の場所は分かるだろう。
運動場に出てみると、同じクラスの連中がまた何やらやっている様子だった。
昼からの授業も魔法関連か、いいな。
地球で魔法があったら、もっと学校生活が楽しかったんだろうな。
俺の存在に気づいた先生が駆け寄ってくる。
心配している様子なので、親指を立てて笑顔を作ってみる。
我ながら気持ち悪い。
一瞬怪訝な顔をされたが、大丈夫なことは分かってくれただろう。
そのまま集団の中に案内されたので何をしているのかを見てみると、子供達は手のひらの上に出した魔力球を維持しているようだ。
余裕そうな子もいれば汗をかいて必死に維持している子もいる。
維持するのにもマナが必要ってことか、把握。
さっきファイアの魔法が発動した気がするが、多分維持出来ずに消えたんだろうな。
よーし、やるぞお!
腕を捲ってやろうとする素振りを見せると、先生が必死に止めてきた。
あ、やっぱりダメ?
そりゃそうか、毎回倒れられたら面倒くさいだろうしな。
どうしようかと思っていると、このようにやれという感じで小さな火の玉を出して先生が実演して見せてくれた。
小さいサイズにしろって感じのニュアンスを激しく感じる。
なるほど、さっきのは大きすぎてMP消費が大きかったのかな。
じゃあもういっちょやってみるか。
また親指を立てて先生に笑顔を見せてみた。
今度はすっげー睨まれた。
はいはい分かりましたよ。
倒れそうなら止めるんで安心してください。
先生がめっちゃ見てるけど、御構い無しにやる。
やるったらやる。
なんたって魔法使いなんだぜ俺。
羨ましいだろ地球のオタク達よ。
こんな楽しいことってないよな!
たとえMP欠乏のたびにウ○コ漏れるってわかってもやるもんね。
今度は小さい火の玉をイメージしてやってみるぞ。
「ロード!」
ほんでもって注ぐマナは少しだけ。
維持にも必要みたいだしな。
「ファイアボォォォォォル!」
ボッという小さい音を立てて火球が形成される。
うおっほおおお、気持ちいいいいいい!
あ、興奮しすぎてマナ注ぐの忘れて消えちまった。
先生をチラ見したら蔑んだ目線に変化してた…。
すんません、今度はちゃんとやるんで。
「ロード、ファイアボール」
今度も大丈夫だな。
魔力は、形成された火球に注ぎ込んだらいけた。
もりもりマナが減っていくのがわかる。
ぐっ…。
ものの10秒程度で底を尽き掛けたので、マナ供給をやめると火球は消えてしまった。
ふぅ、今度はギリギリだぜ。
先生は安心半分、呆れ半分という感じだ。
これで魔力が回復するまで打ち止めだな。
どれくらいで回復するか時間を計っておくか。
魔力が切れてやることもなくなったので、その後は子供達の練習を見学して過ごした。
見てると、1人すごい男の子がいた。
左右の手で違う属性の魔法球を形成していたのだ。
持続時間は短かったが、俺も色んな可能性を試したくなってすごい興奮した。
あ、興奮っていっても男子生徒に対してじゃないよ?
魔力が増えれば、複数の魔法球を待機させてファ○ネルみたいなことができるかもしれん。
そう言えば倒れる直前よりもMPを使った気がするが、気のせいかな。
授業は進行し、大方の生徒が大体やり終えたところで今日の授業はお開きとなった。
その後は言葉を覚えるために教室に戻った。
数人の生徒が俺の勉強を手伝ってくれて勉強がかなり捗った感じだ。
MPは5分くらいで回復しきった感じだったので、合間合間で魔法の練習も挟みながら勉強を進めた。
しばらくすると、窓から男子生徒達がこっちを覗き込んでいるのが見えた。
勉強も疲れてきたし、なんかやろうと誘ってきてるのでそちらに参加することにした。
こっちの世界の遊びをやるらしい。
見せてもらうと、2チームに分かれて攻撃チームが防衛チームの魔法球を破壊するゲームのようだ。
まず防衛チームのリーダーが水の魔法球を形成して掲げ、それを動かさずに待機する。
それに向けて攻撃チームが水の魔法球を投げてぶつけて破壊すれば勝ちというゲームなのだが、防衛チームのリーダー以外のメンバーが飛んでくる魔法球に魔法球をぶつけて相殺してくるので勝負は一瞬ではなかなか終わらない。
水を使うってのも、濡れるだけで安全だからすごい楽しそうだ。
攻撃チームも決まった範囲外からの攻撃しか認められていないので、狙う精度がものをいうゲームだ。
防衛チームも飛んでくる魔法球を正確に射抜く必要があるため集中力が必要そうだな。
滅茶苦茶に投げまくって数撃ちゃ当たる戦法をとったりなど、白熱している。
今度は俺も参加させてもらった。
ボールを投げる感じで投げれば飛んでいくのだが、最初の1発は届く前に消えてしまった。
予め一定量のマナを込めてから投げると、消えずに届くようだ。
めっちゃムズイぞ、これ!
距離を測って必要なマナだけ込めた上で、さらに正確に投げるという高度なゲームで、MPの少ない俺はすぐに戦力外となった。
だがメンバーが頑張ってくれたおかげでなんとか勝つことはできた。
楽しいな!
しばらく遊び、夕方になってきたので食堂に向かってみんなで晩御飯を食べた。
子供達も寮生活をしているようだ。
食後は皆自分の部屋に戻って行った。
トイレの使い方とか一般的なことは子供達に教えてもらった。
俺も自室に戻り、勉強に勤しんだ。
魔法の練習も欠かさない徹底ぶり。
こんな真面目に勉強することってあるんだな。
自分でも意外だ。
時計を見るともう遅かったのでそろそろ寝るとしようか。
もう数字は読めるから時間は安心だな。
歯ブラシは、日本で使っていたようなものだったので問題なく使用できた。
水道はマナを込める部分があり、込めた分だけ出てくる。
トイレも同様で、用を済ませばマナを込めて流して終わりだ。
汚い話だが、大便の場合もマナを込めるとウォシュレットのようにお尻を洗浄してくれて、さらに風まで出てきて乾かしてくれる。
そのあとは勝手に流れてくれるのでかなり楽だな。
流れたものは最終的にスライムが全部処理してくれてるんだと。
じゃあ下水施設なんて必要ないよな。
異世界ってすげーわ。
感動しつつ部屋に戻って寝る準備をする。
おっと、どうせ寝るならMPを使い切って寝たほうが効率いいよな。
強制的に意識失うし、なるべくマナを使ってたほうがMPを増やすにもいい気がする。
危険だって言われたらやめるとしよう。
マナを保存しておける魔道具とかがあれば便利なんだがなぁ。
まあいいや、それは追い追い調べるとして今日は寝るとしよう。
マナを体外に放出するイメージで手先から魔力を追い出す。
よしよし、減ってる減ってる。
ちょっと気持ち悪いが、意味があることだと思って我慢する。
明日も楽しみだなぁ…。
そして俺は意識を失い、学校生活1日目を終えた。




