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Re:connect  作者: ひとやま あてる
第1章 王国編
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第7話 学校

「ごめんくださーい」


地図通りに歩いて1時間以上。


コミュニケーションに難がある俺は迂闊に馬車などの交通機関を使うことができず、また人に尋ねる事も躊躇われたので歩き続けるしかなかった。


ヘトヘトになりながらようやくたどり着いた俺は、学校の門戸を叩いた。


王都の端という事もあって校舎はそれほど大きくなく、また外観は昔の小学校のような造りであった。


学園みたいなのを勝手に想像してたんだがなぁ。


しばらくそうしていると職員みたいな男性が出てきたので、言葉も発さず黙って王女様からもらった書状を差し出した。


側から見たら明らかに変なやつだ。


でも仕方がない、話せないんだから。


今の俺は、共通言語も扱えないようなド田舎から出てきた未開人という設定だ。


この世界で用いられる言語は一つしかないって話だから、この時点でおかしいんだが。


その上、王家がこの未開人を回収して教育を施すために学校にまで入れてくれるっていう過保護っぷり。


詰め込みすぎて意味わからん。


職員さんは書類に目を通すと、こちらへどうぞというようなニュアンスのことを言って歩き出したのでついて行く。


しばらく歩いて今いる建物から少し離れた宿舎のようなところにやってきた。


途中、小学校低学年くらいの子が走り回っているのが見えた。


まさかな。


そして、3階建の一階にある一室に案内された。


ベッドと机が一つずつの簡素な部屋だった。


ちょっと埃っぽいから、誰も使ってなかった部屋だろうか。


広さとしては10畳くらいで、そこそこ広めにかんじる。


大学で一人暮らしの時はもう少し狭いワンルームだったしな。


ここで待てというようなジャスチャーを受けたので、おとなしく待つとする。


荷物を置いて、ベットでゴロゴロする。


10分程経っただろうか。


ノックの音と共に、さっきの人とは別の女性が入ってきた。


どうやらまた別の場所に移動するらしい。


最初にやってきた建物に戻ってきた。


こっちだという手招きを受けて教室に入ると、10名ほどの子供。


やっぱりか。


ここ小学校だわ。


見た感じ3倍は年齢違うんだぜ、どうするよ。


落ち着け、とりあえず教えてもらったように挨拶をするんだ。


「はじめまして、クロって言います。

言葉はほとんどわかりませんが、よろしくお願いします」


完全に作ってもらったテンプレ挨拶だ。


そう言って礼をすると、教室中の子供達からパチパチと拍手が聞こえた。


多分先生であろう女性も、仲良くしてあげてくださいねというような事を言ってる気がする。


そのあと一番後ろの席で授業を受けた。


授業内容はこの世界の文字を教えているところだった。


もらったノートと万年筆でひたすらに書いて覚えた。


発音しながら文字覚えるっていうのも小学校思い出していいな。


あとで知った話だがこの万年筆は魔道具らしく、小さく刻まれた魔法陣にマナを込めればインクが補充されるらしい。


ずりぃーよ。


文房具屋さん大赤字だろそれ。


休み時間には子供達に囲まれて質問責めだったが、ほとんど何を言ってるのか分からなかったので苦笑いをしていた。


何も出来ずにいたら彼らも察してくれて、本などを見せて文字や言葉を教えてくれるようになった。


学ぶことってこんなに楽しいんだな。


日本にいるときは感じたことのない感覚がとても新鮮だ。


彼らに見せてもらって一番分かりやすかったのは、絵本だった。


ファンタジーにありがちなドラゴンを退治するお話だったり、勇者が魔王と戦うお話だったり。


子供達も教えるのが楽しいのかどんどん教えてくれる。


ところどころ日本語に無い発音しづらい単語もあったが、俺がなんとか発音出来ると周りがワーワー盛り上がって俺も楽しかった。


あと文字の授業の他にも魔法の授業があった。


これはひたすら魔法陣を記憶していつでも呼び出せるようにする作業のようなもので、騒がしい子供達もこの時だけ黙々と教科書に向かっていた。


王女様が言ってた、記憶領域に魔法陣を貯蔵するってやつだな。


それで、覚えた順に外の運動場にいる先生のところに行って魔法を披露できたら終わりって感じだった。


子供達がやってたのは火・水・風・土と光の5つの属性魔法だった。


闇はないのか。


火だったら小さい火の玉を出したり、土だったら地面をモコモコさせたり。


子供達を見てみるとすんなり成功させている子もいればそうでない子もいて、こればっかりは才能みたいなものなのかな。


小学生では足が速い奴がモテたが、ここでは魔法ができる奴がモテるのかね。


そんな事を考えながら、俺も真剣に取り組んだ。


魔法陣を覚えることだが、俺もオタクにありがちな《興味あることだけやたらと覚えが良い》という特性を持ち合わせていたので、大して苦はなかった。


なんか固有スキルみたいだな。


ひと通り記憶したので運動場に出る。


火の魔法陣を思い浮かべて、こっちの言葉で『ロード』と唱えると赤い魔法陣が足元に展開された。


うおぉぉぉ!


ヤベェ、すっごい感動。


ジーン、と感動を噛みしめる。


母さん、産んでくれてありがとう。


俺、魔法使いになったよ。


変な意味の魔法使いじゃないよ。


居なくなって大変な騒ぎになってるだろうけど、俺は異世界で楽しくやってます。


満足したら日本に帰りますので、気長に待っててください。


そんな事を思っていたら足元の魔法陣が消えた。


あぁ、マナを注がないと消えるのね。


そもそもマナってどこにあるんだ?


色々と体の中にマナの感覚を探ってみる。


すると、心臓のあたりに違和感を感じた。


これかな?


そういや日本語でやっても発動するのかね。


ここでは『ロード、○○○』と言って魔法を発動するのも、全部こっちの言葉でやってるしな。


シロ達は全部日本語でやってたし、やってみるか。


「ロード」


そう言うと足元に魔法陣が展開された。


お、出るじゃん。


じゃあ次はマナを込めるんだな。


恐らくはこれだと思うマナの感覚を足元まで伝わせる。


なんか動いてる感覚があるからこれっぽいな。


マナを込めるってのがイマイチだが、とりあえず足元から吹き出すイメージでマナを動かすと、体からマナが失われていく感覚がある。


火をイメージ、火をイメージ。


ぐへぇ、気持ちわりぃ。


なんかほとんど体内のマナが失われたっぽい。


倒れそうだがやり切るぞ。


俺は夢の魔法使いになったんだから。


クラクラする頭で唱える。


「ファイア…」


すると、ゴオッという音とともにクロの手のひらから人間の頭部くらいのサイズの火球が形成され、すぐに消えた。


先生や周りの子供達も突然の音と火球のサイズにビックリしている。


教えられた魔法陣で彼らが作り出していたのは、ピンポン球程度の小さなものだったのだ。


それがいきなり見たこともないサイズの火球が出てくればビックリもするだろう。


そしてやはりだろうか、俺は意識を失った。

日常を描くのは難しいですね

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