第1章「加納の力」ガイドブック 2
第1章は私にとって意外な展開となりました。プロットを考えていないのか、と皆様に言われそうですが、私は小説を書く場合、あまりプロットを詳細に作りこみません。着地点だけを決めておく感じですね。
これは、始めのうちは難しいです。序章では、まだ各キャラクターが作りこめていないことが多いからですね。よく、作家の方が「勝手にキャラクターが動き出すことがある」と、言いますが、まさにそれが起こる瞬間があります。そして、それが頻繁に起こるようになると始めから行動を決めてしまうのは、よくありがちな平坦なストーリーになってしまうというリスクも発生します。
第1章では、私が昔、芝居の練習をしていた時にさんざんやらされたエチュード、いわゆる即興演技という手法を取り入れています。
即興は台本がないので、苦手な方が多いのですが、私は適当なことを言ってその場をごまかす(……?)のが得意だったので、エチュードでは着地どころか、飛翔したまま予想もしない方向で終わる、といったことが多かったです。
でも、これがまた芝居のメンバーには大ウケでした。演出の意図がからまないので、基本は出たとこ勝負な感じです。最初はみんな勝手なことを言いますが、それをどうやって収束させるか、というそれぞれの能力が問われてきます。また、そのアイデアをいかに面白く仕立てあげるかも大事でしょう。
以前から加納と明歌の出会いに関しては、イメージがかたまっていたので、1章はそれで終わる予定でした。ところが、2章は明人の話になるので、やはり1章最後の時点である程度、明歌が歌わなくなった理由を小出しにしておく方が2章に入りやすい、と思いました。
そこで、誠を活躍させることにしました。誠と隼優はこの先、特別な絆を築いていきます。隼優にとって、親友と呼べるのは明人しかいませんが、誠は明歌の将来に渡って、重要な存在になっていきます。そして、隼優にとっても誠が協力してくれることで、人生を見つめ直すきっかけをもてるようになります。
ここで第1章の裏話ですが、皆さんは加納がコーヒーメーカーをちゃんとセットしなかったということが信じられないかもしれませんが、これは実際にうちの家族が度々やらかしていました。いまいち、セットの位置がよくわからない仕組みなんですよね。最新のコーヒーメーカーはこんなことないと思うんですけど。
また、馬が鬱になるわけないだろっと思われたかもしれないのですが、これも私が実際、神田明神という都内の神社で、あかりちゃんという馬を見たとき「こりゃ、どう見ても鬱だ……」と感じたのがきっかけです。その後、あかりちゃんという馬は脱走を企てるのですが、それがまぁ御茶ノ水なのに、西部劇のようだった、と伝えられています。
それ以外にも第1話は随所に、私自身が日常生活で感じたことが散りばめられています。元々、エッセイとして書こうと思っていたエピソードですから、まぁ当然なんですけどね。
さて、1章ではちらっと登場した明人くんですが、2章ではもうほぼ主役か?というぐらい明人劇場になっています。と、いうのも私自身がやはり明人くんが好きだ~というのもあります。いや、みんな好きだけど、特に明人はこの回で出番が激減してしまうので、なるべく登場させておこう、という親心?みたいなものもあり。
今のところ、男の子ばかり出てきていますが、次章以降は明歌たちと関わりが大きい女子も登場させる予定です。なぜ今まで出てこなかったかというと、やはり主役の明歌が対人恐怖症だったから、というのもあります。私自身もそうだったのですが、無意識に問題が多すぎると、なかなか真の親友はできません。自分を偽って生きている人の周囲は同じような人が集まってきてしまうものなんですね。そういう意味では隼優も明人も若干精神的な偏りはあります。それは、加納との出会いによって軽減されていくでしょう。
それが、どういう偏りなのか?と、いうことは読み進んでいただければ、たぶんおわかりいただけるかと思います。私はこの話を書いていることで、普段気づけなかった自分の問題に気づくことがあります。意識についての日々の学びが少し役にたっているのかもしれません。
では、また第2章でもガイドブックを書きますので、ぜひお寄りください!