第75話 VSゴッドミミック。
絶対的強者である神ミミックは言った。
「無駄な抵抗はせぬことだな」
絶対的弱者であるウンコは言った。
「わ、わかりました。
できるだけ痛くないように、お願いします」
ウンコは横になって、目をつぶった。
だが、いくら経っても、一向に食われない。
俺は目を開けた。
神ミミックが言った。
「ねえ、一応聞いておくけど、
お前は人間だよね?」
俺は答えた。
「一応、人間です。でも職業はウンコです」
「マジ……? だから、そんなに臭いの?」
「マジです。だから、こんなに臭いのです」
「クサヤとか、シュールストレミングとかの
間違いじゃないの?」
「違います」
「で、お前は食べられるの?」
「今までの経験から考えると、一応可能です」
「ってことは、お前。食べられた経験があるの?」
「はい」
「ウンコを食べた、その勇者の名前は?」
「魔王ケルベロスです」
「で、その勇気ある魔王はどうなった?」
「ウンコの臭いと、食中毒で死にました」
「マジ……、で、その死に様は?」
「白目むいて、ゲロ吐きながら、
悶え苦しんだ末、死にました」
「嘘……、奴は、
HPだけで言えば、我よりも上なのに……」
「そうなんですか」
「まさに、股間に書いてある通り、
『最臭兵器』だな」
「恐れ入ります」
「よし、我はお前を食わず、ただ殺すだけにする」
「私は死ねるだけで、
満足なので、それでも一向に構いません」
「その志、潔し。
特別にできるだけ痛くないように、殺してやる」
「ありがとうございます。で、どうやって?」
「最大HPジャストのダメージで
殺すということだ」
「寛大な御慈悲、痛み入ります」
「で、お前の最大HPはいくつ?」
「8です。ですが、
『なかなか死ねない』
というスキルを持っています」
「マジ……我、そのスキルの持ち主の殺し方、
わからないんだけど」
「私も、自殺の方法がわかりません」
「まあ、地道に攻撃すれば、いつか死ぬよな」
「はい、そうですね。お願いします」
「ちょっと、なめてみるぞ」
「はい、どうぞ」
神ミミックはそおっと、俺をなめた。
神ミミックは即座にゲロを吐いて、悶絶した。
「無理! 絶対無理!
こんなの食ったら、神でも死ぬ!」
「なら、魔法とかで、遠隔攻撃はどうですか?」
「我、最強だけど、
『かみつく』以外の攻撃方法を持ってない」
「それは大変だ」
「どうしよう?
このままじゃ、我、この部屋から出られない」
「なぜですか?」
「ムカつく幼女と、借金のかたに、
そういう契約をしているからだ」
「幼女って、まさか……、神のことですか?」
「ああ、そうだ」
そう言うと、神ミミックは契約内容を話し始めた。
紹介するね。
その1。
神ミミックは、ダンジョンのラスボスをする。
その2。
神ミミックは、
ラスボスなので逃げてはいけない。
侵入者を最低1人は倒すまで、
部屋の扉は厳重に封印される。
その3。
神ミミックを倒した勇者一行が出た場合。
彼らが望む物を1つだけ、
自腹でプレゼントしなければならない。
その4
神ミミックは、契約不履行をした場合、
借金が10倍になる。
加えて、利子も10倍になる。
その5。
もしも、職務中に死んでも、見舞金は出ない。
そして、遺族が連帯保証人として、
全借金を背負う。
「ひどいだろ?」
と神ミミックは言った。
「鬼畜極まりないですね。特に、その4と5が」
とウンコも同意した。
「我は今、妻を2人と双子を2組養ってる」
「それは大変ですね」
「しかも、来年は4人同時に大学受験だ」
「それは大変だ!」
「ああ、元金は300Gだったのに。
今じゃ我の借金、1億Gを超えてる」
「凄まじい暴利です! 人道に反しています!」
「はあ、あの幼女、死なねえかな」
「そうですね。
この世に存在しうる究極の苦しみの果てに、
死んで欲しいです」
「やっぱ、お前もさ。あの幼女を憎んでるのか?」
「当然です。だって、
勝手に職業をウンコにされちゃったんですよ」
「そっか。お前も大変だな」
「大変なんてもんじゃありませんよ。
ステータスが最低で、その上……」
「その上?」
「使える魔法がこれだけなんです。ウンコ」
俺はウンコを召還した。
神ミミックはゲロを吐きながら、
のたうち苦しみ始めた。
「おげぇえええ!
ぐ、臭えぇえええ! ぐはぁあああ!」
「大丈夫ですか?」
「大丈夫じゃねえ!
我の嗅覚は、犬くらい鋭敏なんだ!」
「あわあわ、それは大変だ!」
「早く、そのウンコを消せ!」
「無理ですよ」
「なら、食べろ! じゃないと、殺すぞ!」
「どっちも無理だと思います」
「おべゅ、ごのままじゃ死ぬぅ……
あぐぁ、もう仕方がない……」
「そうですね、もう仕方がないですね」
絶対的な強者である神ミミックは土下座した。
「まいった。降参する!」
絶対的な弱者であるウンコも土下座した。
「ありがとうございます!
ご恩は一生忘れません!」
こうして、極めて平和的な話し合いにて。
ウンコは、神ミミックを倒してしまったのだった。




