第60話 物乞い少年2。
チ○コを封印されたウンコ。
泣きながら、道を歩く。
ウンコになってから、
小便は出なくなったけどさ。
大便も手から出せばいいんだけどさ。
やっぱり、チ○コの自由は必要だよね。
自由権の根底にある常識だよね。
この人権侵害。
元の世界に戻ったら、
絶対に国連に訴えてやる。
シクシク。
俺たちは道具屋に入った。
そこで、薬草を大量に買った。
賞味期限の切れたのを、1キロ1Gでね。
なんかもうさ。
干からびて、変色して、臭くて、不味そう。
「賞味期限なら、多少過ぎても大丈夫」
アゼレアがそう言うけど、俺は絶対に食わないぞ。
ウンコは薬草にはうるさいのだ。
買った薬草は、
リュックサック(ウンコが背負う)に
詰め込まれた。
次はパン屋に入る。
買うものは当然、焼きたてのパンだ。
ウンコはウキウキ。
していたのにさ。
アゼレアのケチは当然のように、店員に言った。
「1週間分のパンを、2人分頼む」
もちろん、この2人とは、
ルルナとアゼレアのことだよ。
ひどくない。
ウンコにだって、燃料は必要なんだよ。
まあ、ウンコそのものがさ。
バイオエタノールっていう燃料なんだけどね
パン屋を出てすぐ。
「この薄汚ない泥棒め!
衛兵に突きだしてやる!」
パン屋の店主がそう叫びながら、外に出てきた。
店主は怪力っぽいデブで、
右手で泥棒の首根っこをつかんでいる。
泥棒はもがきながら、叫んでいる。
「放せ! 放せ! 俺が捕まったら妹がぁ!」
泥棒の顔には見覚えがあった。
物乞い少年だ。
石像病の妹がいるあの少年だ。
ウンコでさえ、同情してしまう哀れな奴だ。
店主のデブはゴミを見るような目で、
物乞い少年に罵倒した。
「泥棒なんてする奴は人間のクズだ!
恥を知れ! 死刑になれ!」
ぷっちーん。
ウンコはキレたよ。
食べないと死ぬから、パンを盗むんだ。
お前にわかるか?
パンを食べたくても、食べられない苦しみが。
パンを買いたくても、買うお金がないみじめさが。
パンが必要でも、手に入れる手段のない絶望が。
ふざけやがって!
「クソ食らえ!」
俺はデブ店主にウンコを投げつけた。
見事、顔面に命中。
クリティカルヒットだ。
デブ店主は物乞い少年から放り出して、叫んだ。
「クソウンコがぁあああ!」
デブ店主がマジギレモードで、猛突進してくる。
まあ、当然だ。
パンを万引きされるより、
ウンコを顔面に投げられる方が、
絶対にムカつくもんね。
一撃離脱を図るウンコは、脱兎の如く駆け出した。
デブ店主はデブだから、超鈍足だった。
ぷぷぷ。
たぶん、あのデブ。
力は200だけど、素早さは1。
素早さ5のウンコは、余裕で逃げ切りに成功。
路地裏で息を整える。
そこへ、物乞い少年が現れた。
「ありがとな、ウンコ」
「気にするな、物乞い少年」
「俺の名前は物乞い少年じゃないぞ」
「俺の名前だって、ウンコじゃないやい!」
というわけで、
今更ながら、お互いに自己紹介をした。
少年の名前はヘンデルだった。
ふーん。だったら、
「ちなみに、妹はグレーテル?」
「なんで、わかったんだ?」
「ふふふ、ウンコは博識なのだ。
そんなことより……」
俺はヘンデルに聞いた。
「なんで万引きなんか?
ルルナが村人に
よろしく言っておいたはずだろ?」
ヘンデルは荒んだ目で、
「あんなの口だけだよ……」
と答えると、そっぽを向いた。
ヘンデルのうなじが見えた。
うなじの一部が灰色に変色していた。
まさか……
俺はヘンデルの両肩をつかんで叫んだ。
「おい、お前まで石像病になっちゃったのか!?」
ヘンデルは他人事のように答えた。
「ああ、そうらしいね」
「安静にしてないとダメじゃないか!」
「でも、俺が動かないと……
薬もパンも手に入らない!」
ヘンデルの瞳から大粒の涙がこぼれ出した。
かける言葉が見つからなかった。
俺はウンコだ。
薬はおろか、
パン1個買う力も持ち合わせていない。
「見つけました!」
路地裏に、ルルナがやって来た。
プンプン怒っている。
「まったく、なんてことを……
これだから、ウン公さんは――」
ルルナのお説教の言葉を遮るように、
俺は土下座して叫んだ。
「頼みがある!」
俺は事情を話し終えると、要求した。
「大至急ズキンに向けて手紙を書いてくれ!」
目的は当然。
ヘンデルとグレーテルのためだ。
石像病の2人に
お金と看護人を送ってもらうためだ、
ルルナは優しげな顔で、了承してくれた。
「やっぱり、ウン公さんは優しい人ですね」
ルルナはそうつぶやくと、
風のように駆け去っていった。
「やっと、見つけたぞ! ウンコ!」
入れ替わるように、アゼレアがやって来た。
殺意をみなぎらせている。
半殺しになる覚悟はできているが、
俺は一応、事情を説明する。
「そうか」
そう神妙に言うと、
アゼレアは意外な言葉を吐いた。
「なら、国営の病院に入院させてやる」
ウンコは耳を疑った。
「嘘? マジ?」
「お金の心配もいらないぞ」
アゼレアはヘンデルに天使のように微笑みかけた。
アゼレアは本当は良いヤツだった。
よし、決めた。
ウンコはアゼレアと結婚するぞ。
だって、ウンコは父親公認の婚約者だもんね。
こいつとなら、ウンコでも幸せになれる!
と思ったんだけどね……
気持ち悪いくらい優しげな笑顔で、
アゼレアは言った。
「お金は、
このウンコのお兄ちゃんが払ってくれるからね」
アゼレアはウンコに顔を向けた。
ヘンデルからは見えない角度にある、
その笑顔は……
殺伐としていて、凶悪だった。
アゼレアはウンコにだけ聞こえるように、
ささやいた。
「利子は1日10割だ。死んでも払えよ。ウンコ」
ドケチ魔女め。




