第52話 真ナイトフィーバー。
シクシク、シクシク……
ダンスホールの外のゴミ捨て場で、
ウジウジするウンコ。
もう、何もかもどうでもいい。
女なんて、クソ食らえ。
だけど、ホモになるのは嫌だ。
だから、男もクソ食らえ。
俺は出家して、坊主になる。
俗世間との交渉を絶つんだ。
俺が付き合うのは神様だけだ。
と思ったけど、や~めた。
だって、この世界の神様は幼女だもんね。
あいつ、超ムカつく。
今、あの糞幼女、
天空から聞こえよがしに、大爆笑してやがる。
「ぎゃはははははは! 腹痛え!」
あんなんでも、一応神だからさ。
「か、神様。助けて」と俺。
「嫌じゃ。面白いから」と神。
「神様は誰よりも優しい存在ですよね」
「違う。神とは、ただ偉大なだけの存在だ」
はあ、俺の救いはどこにあるのだろう?
もう、死んで楽になりたい。
でも、俺は『なかなか死ねない』んだよね。
腹時計で約30分後。
「そろそろ寝る時間だから、じゃあな」
この言葉を最後に、幼女の声は聞こえなくなった。
それから程なく、ルルナがやって来て、
「食べてください」
と言って、薬草を差し出してきたが、
俺は拒否した。
「静かに死なせてくれ」
ルルナは俺の口に、強引に薬草を突っ込んだ。
俺は必死に抵抗した。
でもさ、悲しいことに、今の俺はさ。
さもしくてさ。
口に入った食べ物は、
条件反射で飲み込んでしまう体質なんだよね。
HPが回復したんだけど、俺はさ。
精神力がゼロなので、立ち上がれない。
「な、なぜ、この俺様がモテないんだ……」
ウンコが心底意外そうに、そう言うと、
「仕方ないですよ。超カッコ悪いんですから」
ルルナは至極当然そうに、そう言った。
「カッコ悪くなんかないやい!
俺の顔をよく見ろ!」
二重まぶたで切れ長の涼やかな目。
スーパーモデル級の小顔。
髪の毛だって、サラサラでフサフサなんだ。
ルルナは俺の顔をのぞき込むと、
不思議そうに言った。
「本当です、よく見ると、
異様に整った顔をしています」
超イケメン人は最後のコスモを燃やし尽くし、
訴える。
「だろ、だから俺は超カッコいいだろ?」
「いいえ、超カッコ悪いです。
見るだけで不快になります」
「なぜだぁ?
俺にもわかるよう、正しい理屈で教えてくれ!」
「ウン公さんのカッコ悪さは
理屈じゃ無いんですけど、う~ん」
ルルナは難しい顔をして考え込んだあと、言った。
「一言で言うなら、
ウン公さんのカッコ良さは
『ゼロ以下』なんですよね」
俺はハッとして、職証を開いた。
そこには、答えが書いてあった。
『カッコよさ -245』
理屈じゃないカッコ悪さの正体は、
これだったのか。
絶望的な数字だ。
だって、がんばれば、がんばる程。
レベルを上げれば、上げる程。
俺のカッコ良さは下がっていくのだから。
はい、オスとしての人生終了。
ウンコは、絶対に子孫を残せません。
この理不尽な現実に、俺は男泣きをした。
「んぐぇ、んぐぁ、んぎゃああああああっ!」
「醜悪すぎて、見ていられませんね。はあ」
ルルナはため息をつくと、俺の手を取った。
「立ってください。
かわいそうだから、私が一緒に踊ってあげます」
マジで?
そう言いそうになったが、
ウンコにもプライドがある。
ウンコは硬派に言った。
「嫌だ。お前はもう色んな奴と踊った、
中古はお断りだ」
ルルナは再びため息をついた。
「はあ、
私はああいうチャラい場所は嫌いですから、
誰とも踊ってませんよ」
「本当?」
「本当です」
「なら、ルルナ。
イケメンの俺様が特別に踊ってやるよ」
「そのドヤ顔。なんかムカつきますね。
でも、それでこそ、ウン公さんです」
ダンスホールから漏れ出る音楽に合わせて、
俺とルルナは踊った。
肌を触れ合わせてみて、わかったんだけどさ。
俺が今日食べた薬草は、
ルルナが女の子に託したものだった。
ルルナの全身から、
薬草から香ったのと同じ、超良い匂いがする。
「ありがとうな。薬草」とウンコ。
「私は貴方の監視役ですから」とルルナ。
「あと、ごめんな。胸揉んだり、キスしたりして」
「もういいですよ。それよりも、私は……」
ルルナは頬を真っ赤にした。
「魅力的ですか?」
「そりゃ、理屈で言えば、魅力的だよ。
お前モテモテだったんじゃん」
ルルナは頬をぷくっと膨らませた。
「違います。理屈じゃなく魅力的ですか、
って聞いてるんです」
俺は照れ臭かったから、
「まあ、そう言えなくもないな」
とボソっと言った。
ルルナは乙女っぽく、
「あ、ありがとうございます」
と恥じらいながら言った。
か、カワイ過ぎる。
超良いものをみせてもらった。
でもさ。
もっと嬉しいことがあったんだ。
それはね、この後にすぐ。
俺は集団リンチされたんだ。
男女の雑魚集団にね。
あいつらは、ルルナと踊る俺に嫉妬してさ。
こんな愚行をしたんだよ。
ぷぷぷ、愚か者どもめ。
でも、嫉妬されるのは、モテ男の特権。
やっぱり、俺は超イケメン人。
今夜の主役。
ウンコナイトフィーバーだぁ!




