第30話 ウンコ、スーパー無双タイム。
魔王に食われた俺は、胃にて胃液で溶かされた。
俺は夏場のアイスみたいにグチョグチョに溶けたんだけどさ。
別に血も出なかったし、痛くもなかった。
続けて俺はさ。
十二指腸でさらに溶かされ、ドロドロになった。
液体になった俺はさ。
小腸で栄養を吸収され、大腸で水分を吸収された。
半固体になった俺はさ。
直腸で形を整えられ、再び人型のウンコに戻り……。
俺は素っ裸にて、肛門から排出された。
再び大地に産み落とされた時、俺は悟りを開いていた。
俺が悟った真理は、一言で言うと、こうだ。
『ウンコはウンコに回帰する』
説明しよう。
生物は死ぬと、他の生物に食われ、ウンコになる。
ウンコは微生物に分解され、大地に還る。
そして、植物に吸収され、新たな種の一部となる。
種は育ち、花を咲かし、実をならす。
実は、人や動物や鳥や虫などに食われ、次の世代の一部となる。
それら子供たちもまた、育ち、老いて、死んで、食われ……。
また、ウンコに戻るのだ。
『ウンコ→生物→ウンコ』が織りなす無限のサイクル。
この終わりのない旅路のどこかで……。
人は再び人に戻ることができるかもしれない。
これが、輪廻転生の真実。
俺は元の世界に転生できたら、宗教を開くんだ。
まあ、それはさておいて。
なぜか、魔王ケルベロスが悶え苦しんでいる。
喉と腹を押さえて、転げ回りながら、大絶叫。
白目をむきながら、ゲロを吐いていて、マジに苦しそうだ。
なぜだ?
元エリート高校生が持つ、ウンコ色の脳細胞が回転し始めた。
ええと、確か犬の嗅覚は……。
人間の約100万倍だった。
そんで奴は、人間の大きさのウンコを食ったから……。
まあ、食中毒になるわな。
ああ、なんと哀れな。
魔王ケルベロスに向けて、俺は合掌した。
程なく、魔王ケルベロスは死んだ。
俺は、魔王ケルベロスを倒しちゃった。
「ウンコはレベルが一気に上がった」
魔王のゲロから、そう声が聞こえた。
魔王のゲロから、俺は職証をつかみ取ると、読んでみた。
今の俺のステータス。
名前 ウン公
LV 45 職業 ウンコ
性別 男 年齢 16
HP 8/8
力1 身の守り1 素早さ5 魔力1
カッコよさ『マイナス220』 臭さ『320』。
はあ。
臭さ320って、もう化学兵器レベルだろ。
ルルナの力でさえ、255だったんだぞ。
魔王の配下の狼魔族たちが、武器を構えて、俺をにらみつけている。
主君の無念を晴らすつもりのようだ。
「「「ワオオオオオオオオン!」」」
3万人の狼魔族たちが、俺に向けて殺到してきた。
バカめ。
俺はウンコを1つ召喚した。
その瞬間。
俺の半径100メートル以内にいた、狼魔族全員が卒倒し、死んだ。
その死に様は、ピクピクでゲロゲロで、実に哀れだった。
臭さ320のウンコ臭を、人間比100万倍の嗅覚で嗅ぐ。
その苦しみ、筆舌に尽くしがたき。
俺の無双タイムが始まった。
俺は両手にウンコを持って、大草原を縦横無尽に疾駆した。
ドミノを倒すように、死んでいく狼魔族たち。
即死できずに、這うように逃げる奴らには、ウンコをぶつけてトドメをさした。
そいつらの死に顔が物語るオーバーキル。
俺TUEEEEEEEEE!
ヒャッホー!
「なんて邪悪な……」
1人の狼魔族がフラフラと立ち上がって、そう言った。
立派な鎧を着ている。
どうやら、身分の高い者のようだ。
「俺は、狼族一の勇者フェンリル将軍だ! 貴様、名を名乗れぃ!」
そう言われたので、俺は名乗った。
「我の名は、黒獅子王ジークフリート」
本当はウン公だけどね。
「黒獅子王ジークフリートか……。ふっ、面白い」
うわ、本当に信じちゃった。
「我の最後の相手に申し分ない。いざ尋常に勝負!」
フェンリル将軍が剣を構えて、悲壮な顔で突進してきた。
でもさ。
見るからに虫の息なので怖くない。
俺は、将軍の立派な鎧にウンコを投げつけた。
「ふっ、そんなもの、狼族に伝わる伝説の鎧の前では……。ぐはぁああああっ!」
こうして、フェンリル将軍は死んだ。
バカめ。
ウンコの前では、伝説の鎧など、なんの意味もなさない。
かくしてさ。
魔王ケルベロスと、その眷属である狼魔族たち(約3万人)は全滅した。
最後の1人が死んだ時。
ふんどし代わりに、腰に巻いていた職証から、声が聞こえてきた。
「ウンコのレベルが上がった」
お約束通り。
カッコよさが5下がり、臭さが5上がる。
だが、今回はそれだけでは終わらなかった。
「誤植がありましたので、修正しました」
「LV50になったので、隠れスキルを閲覧可能になりました」
とりあえず、俺は職証を見てみた。
『臭さ』の項目が、
『ウンコの臭さ』になっていた。
隠れスキルの項目には、
『なかなか死ねない』と書いてあった。
なかなか死ねない……、か。
なんか色々と納得できた気がする。
でもさ。
これって、呪いだよね。




