第2話 ウンコ、大地に立つ。
俺は、神の転送魔法で、下界へと瞬間移動した。
大草原のど真ん中だった。
朝日に輝く地平線が見える。
村は見えない。
モンスターがうようよしている。
神の野郎、俺に死ねってか?
俺は、いわゆる『布の服』を着ていた。
RPG最弱の防具だ。
ポケットには、ボールペン大の巻物(職業証明書)があった。
俺はそれを広げた。
名前 ウン公
LV 1 職業 ウンコ
性別 男 年齢 16
HP 8/8 MP0/0
力1 身の守り1 素早さ5 魔力1
カッコよさ0 臭さ100。
……俺YOEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE!
まあ、超弱いステータスなのは、これから強くなればいいからさ。
甘んじて、受けとめてもいいよ。
でもな。
『カッコよさ』が0って、ひどくねえ?
『臭さ』が100って、何なんだよ?
使える魔法は、『ウンコ』だけだし。
やっぱ、神のクソ野郎。
俺に死ねって、言っているらしい。
俺はとりあえず、モンスターのいない場所を目指すことにした。
でもさ。
数秒も経たずに、あえなく、エンカウント。
ゾウみたいに大きなカバに目をつけられてしまった。
カバなのに、一角獣みたいな角がある。
カバなのに、サーベルタイガーみたいな牙がある。
カバなのに、口から血がしたたっている。
どうやら肉食らしい。
俺は考えた。
カバって実は、タイマンだとライオンより強い。
つまり戦ったら死ぬ。
カバって実は、時速40キロ以上で走れる。
ウサ○ン・ボルトの時速は38キロくらいだ。
つまり、逃げても死ぬ。
死んだふりって、実は、クマには通用しないんだって。
なら、カバにも通用しないだろう。
俺は戦うことにした。
それが、一番後悔しない死に方だと思ったからだ。
それに、『ウンコ』が最強の職業って可能性も、まだあるのだ。
炎をまとうウンコ。
切れ味鋭いウンコ。
爆発するウンコ。
そういうのが出てくることを祈って、俺は呪文を唱えた。
「ウンコ」
俺の右の掌に、10円玉程の大きさの穴がポッカリ開いた。
そんで、その穴からさ。
『歯磨きチューブ』みたいに、ウンコがモリモリ出てきてさ。
とぐろを巻いていったんだ。
程なく、俺の掌の上に、見事な『巻きグソ』が出現した。
巻きグソはホカホカだった。
なかなかの切れ味で出てきた。
とりあえず、俺はカバにそれを投げつけた。
ウンコは、カバの顔面に当たり、飛び散った。
カバは激怒した。
俺は逃げ出した。