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第27話 ウンコ、男泣く。

 ウンコだから、働くことができない。

 ウンコだから、強くなることもできない。

 ウンコだから、人の慈悲にすがることすらできない。

 ああ、のたれ死ぬ前に……。

 もう1度だけ、ズキンに会いたいよ……。


 気がつくと、俺は村の入り口にいた。

 入り口には、鉛の斧を持ったオッサンと、ジャイ母がいた。


『入ったら殺す』と2人の目が語っていた。

 他に行く場所もないので、俺は立ち尽くした。

 

 夜になると、オッサンとジャイ母はいなくなった。

 

 入れ替わるようにズキンがやって来た。

 俺は消え入りそうな声で言った。

「俺は頑張ったんだ……」


「しゃがんで」

 ズキンがそう言ったので、俺はしゃがんだ。

 

 ズキンが俺の頭をなでてくれた。

「よしよし、がんばったね。本当に、えらいよ」

 涙が止めどなく、あふれてきた。

 

 それから俺は、汚い言葉をたくさん吐いた。

 全てが憎かった。

 

 もし、俺に力があるのならば、全てを滅ぼしてやるのに。

『醜くて、情けなくて、男らしくない』

 そんな最々々低な俺の頭を、ズキンは優しく、なで続けてくれた。


「ごめん」

 平静を取り戻すと、俺はそう言った。


「いいんだよ。辛い時は泣いてもいいんだよ。泣いたらお腹空くでしょ、食べて」

 ズキンはヒマワリに似た種をくれたが、

「いらない」と俺は断った。

 ガリガリのズキンの食べ物を奪ってまで、俺は生きたいとは思わない。

 

 そんなことよりもさ。 


「なあ、ズキン」

「なに、お兄ちゃん?」

「明日の夜もまた会えるかな?」

 

 最低かもしれないが、俺は独りで死ぬのは嫌だった。

 誰かに看取って欲しかった。

 ズキンのそばで死にたかった。

 

 だが、それは叶わぬ願いだった。

「ごめんね……。明日、私、食べられちゃうんだ」

 

 ズキンの話ではさ。

 約1ヶ月前、ナーガ国は、魔王ケルベロスと屈辱的な講和条約を結んだ。

 領土3分の2の割譲及び、1月に1人、生け贄を差し出す。

 この2つが講和の条件だった。

 

 生け贄は生きたまま食われる。

 筆舌に尽くしがたい苦しみのはずだ。

 

 なのに、というか、だから、なのだろうか?

 

 王族のバカどもは、貴族たちに生け贄の責務を押しつけた。

 貴族のバカどもは、民草たちに生け贄の責務を押しつけた。

 都民のバカどもは、村人たちに生け贄の責務を押しつけた。

 村人のバカどもも、『下へ下へ』と生け贄の責務を押しつけていった。

 

 結果、最も身分の低いズキンが、生け贄に選ばれたのだった。


「一緒に逃げよう!」

 と俺は言ったのにさ。


「ダメだよ。私が逃げたら、私の次に身分の低い人が、生け贄になっちゃう」

 ズキンは泣きながら、震えながら、微笑んでいた。

 

 こんな優しい子に、これほどの仕打ち。

 この世界に神はいない。と思った。

 

 ならば……。

 

 ウンコの俺にも、まだやるべきことはある。



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