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第26話 ウンコ、レベルが上がる。

「さあ、LVを上げに行きますよ!」

 唐突にルルナがそう言ったので、俺は理由を聞いた。

 

 LVが上がれば強くなる。

 強くなれば、傭兵とか用心棒とかの仕事がある。

 今、世界はとても物騒だから、戦闘職は完全な売り手市場。

 要約すると、こんな感じのことを、ルルナは説明してくれた。

 

 うむ、バカのくせに理屈が通っている。

 

 よし、俺は強くなるぞ。強くなって――。

「男は全て処刑、女は全て牝奴隷だ! はっはっは!」

「魔王よりも残虐ですね」

 ルルナが汚物を見るような目で見てくるが、気にしない。

 

 俺はお前よりも強くなり、お前を無傷で脱衣KOできる男になるからだ。

「ひゃっはっはっは!」


 レベル上げの場所は、初心者の泉(王都から徒歩3時間ほど)。

 ここはスライムのたまり場だ。

 

 ルルナいわく。

 スライムは世界最弱の魔物。

 臆病で、敵が来るとすぐパニックになるそうだ。

 その経験値は1。

 半分にすると、切り捨て0。

 

 だから、1人で倒さなくてはならない。

 戦闘評価の影響を考えると、途中でアイテムも使っちゃダメなんだって。


「適当に攻撃していれば勝てますからね」

 ルルナはそう言うが、俺は本気で奴らをぶちのめすことにした。

 

 俺は変質者的な笑みを浮かべながら、1匹のスライムに目をつけた。

 今から、この雑魚をボコボコにする

 

 幼児を虐待するくらい、卑劣な行為かもしれない。

 だが、俺はストレス解消がしたかったのだ。


 行くぞ!

 

 ウンコの攻撃。

 スライムの頬に拳がめり込んだ。

 1のダメージ。

 スライムは「ふっ」と不敵に笑った。

 

 スライムの攻撃。

 捨て身の体当たりを食らい、ウンコは吹っ飛ばされた。

 7のダメージ。

 ウンコは動かなくなった。

 

 ドラ○エ風に言うと、たぶんさ。

 こんな感じで戦闘は終わった。

 ああ、ウンコという職業は、世界最弱の魔物よりも弱かったんだ。


 薬草を食って、もう一度チャレンジ。

 結果、また負けちゃった。

 

 スライムの雑魚どもは、

『普段ボコられるストレス』をさ。

 ウンコを集団でボコることで晴らしやがったんだ。

 

 ルルナの力を借りてさ。

 俺は、最初に戦ったスライムと再びタイマンすることになった。


『身の程を知らぬ雑魚め』

 と言わんばかりに、クソスライムはふんぞり返っている。

 

 スライムのHPは8と、ルルナが言っていた。

 最悪の想定。

 

 つまりさ。

 

 ウンコの攻撃1回で。

 スライムに対して、1しかダメージを与えられない場合。

 

 最初の戦いで、1発殴れたことも考慮するとさ。

 俺は一撃も食らわずに、7回攻撃を成功させなければならない。

 

 FC版Fファンタジー3の『暗闇の雲』を倒す時の緊張感で、俺は戦った。

 壮絶な戦いだった。

 最近のヌルRPGのラストバトルなどクソ食らえだ。

 

 結果、紙一重で俺は勝った。

 勝敗を分けたのは、おごりの差だった。


『俺に勝ったんだから、もう誰にも負けるなよ』

 スライムの死に顔が、そう語っているような気がした。


「ウンコはレベルが上がった」

 ポケットの職証から、そう声が聞こえた。

 

 ルルナが言った。

「この後、ステータスアップや必殺技及び魔法習得がアナウンスされます」

 

 俺は期待に胸を躍らせた。


「カッコよさが5下がった」と職証は言った。

「臭さが5上がった」と職証は言った。

 

 それきり、職証は沈黙した。


「えっ、それだけ?」

 俺は耳を疑った。

 ステータス(カッコよさ)が下がっているじゃねえか。

 

 それにさ。


『臭さが5上がった』って、逆説的に言えば、

『匂いが5下がった』ってことだよね。

 

 だが、俺は前向きなので、

『ウンコ=大器晩成型の職業』なんだと思うことにした。

 こんなことで、俺の心を折れると思うなよ。

 神め!

 

 それから、スライムと死闘を繰り広げること3回。

 レベルが上がった。

 カッコよさが5下がり、臭さが5上がった。


 さらに、スライムと死闘を繰り広げること5回。

 レベルが上がった。

 カッコよさが5下がり、臭さが5上がった。


 今度こそはと、スライムと死闘を繰り広げること10回。

 レベルが上がった。

 カッコよさが5下がり、臭さが5上がった。


 これで最後だと、スライムと死闘を繰り広げること30回。

 レベルが上がった。

 カッコよさが5下がり、臭さが5上がった。


 巻物に書いてある、今の俺のステータス。

 LV6 HP8/8 

 力1 身の守り1 素早さ5 魔力1

 カッコよさ『マイナス30』 臭さ『130』。

 

 俺は、ウンコとしての正統進化を果たしていた。

 

 俺はこの現実を受け止められず、目をこすりながら、職証を見た。

『HPと力と身の守りと素早さと魔力』の項目が光っているのを発見した。


「これはどういう意味?」と俺は聞いた。

 

 ルルナは憐れみに満ちた顔で、答えた。

「成長限界ですね。これ以上は伸びません」

 

 ファイアー○ムブレムか! 

 と叫ぶ気力すら失うほどに、俺の心はポッキリと折れた。

 

 もう、何も考えられない。

 ゾンビのような足つきで、俺は歩き出していた。


「どこに行くんですか?」

 ルルナがそう言ったが、俺は答えない。

 

 もうどうでもいい。

 もうどうでもいいんだ。

 



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