第25話 ウンコ、姫騎士の超必殺技に唖然とする。
王様どもをクソまみれにした代償は大きかった。
王様の指揮の下、王都第1師団に、
『囚人服が乞食の服に変わるレベル』で、リンチされた後……。
俺は王都から、たたき出された。
俺は今、正門の前で、瀕死のゴキブリみたいにピクピクしている。
そんな間の悪い時に、モンスターが出現した。
真っ黒なサーベルタイガーだ。
門番は門を閉めて、王都の中に引っ込んだ。
瀕死の俺は、1人取り残された。
絶体絶命のピンチ。100%死ぬ。
俺は処女のように、目をつぶった。
初めてだから、優しく食べてね。
って、そんなの嫌だよ。
死ぬならベッドの上でだよ。
助けて! 赤レンジャー!
「とおっ!」
俺の心の叫びが、神様(幼女以外)に届いたのだろうか?
正義のヒロインが、城壁の上から飛び降りて参上した。
「姫騎士ルルナ。姫の如き可憐に、騎士の如き華麗に、成敗致します!」
ルルナは中二病MAXに、そう名乗ると、サーベルタイガーを一刀両断した。
相変わらずのチートぶりだった。
俺はルルナに薬草をもらい、食べた。
「ありがとうございます。ルルナ様」
丁寧な言葉が、心の芯から出てきた。
「いやあ、てへへ、むふぅ」
と照れるルルナは、腰に下げた布袋からパンを取り出すと、言った。
「これを食べなさい」
俺は心から叫んだ。
「おお、聖女ルルナ様!」
「えへへ、ハムもありますよ」
「おお、女神ルルナ様!」
「むふふ、チーズもありますよ」
俺のHPと腹は満たされた。
で、前々から一つさ。
どうしても解せぬ疑問があったので聞いてみた。
「ねえ。ルルナ様。
そんなに強いのに、なぜ、魔王ケルベロスを倒しに行かないんですか?」
そうすれば、世界は平和を取り戻し、ハッピーエンド。
役目を終えた俺は、元いた世界に戻れる。
天から落ちるように帰還した俺はさ。
トーストをくわえた究極の美少女とぶつかる。
見つめ合う俺と美少女。
一瞬にしてフォーリンラブ。
程なく、2人は結婚。
『トゥルー・エターナル・ラブリー・エンド』
これにて、物語は終了。
なのにさ。
ルルナ様は悔しそうに言った。
「魔王ケルベロスは、今の私では、100人がかりでも倒せません」
嘘だろ。
この瞬間。
『トゥルー・エターナル・ラブリー・エンド』へのフラグは消滅した。
「せめて、超必殺技さえ使えれば……」
ルルナ様は悔しそうに、そう言った。
それってさ。
『10年に1度の皆既日食の時しか使えない』
みたいな中二設定なのかな?
いや、まさか。
そんなバカな設定、ライトノベルだけだよね。
でも、ルルナ様ならあり得る。
偉大だけど、バカだから。
と思ったら、
「ぷぷぷ」と笑いが口元からこぼれた。
プライドが高いルルナ様は、真っ赤な顔でプンプンした。
「むぅう。でも使えるんです。今なら使えるんです。そんな気がするんです」
『Fファンタジー7のバハムート零式見せてよ』
と友達に頼む感覚で、俺は言った。
「じゃあ、見せてください」
「わかりました。刮目しなさい。世界が変わりますよ。はあぁあああ、行きます」
ルルナ様が詠うように、呪文を唱え始めた。
「リヴァイアサン・ジークフリート・G線上のアリア・エクスカリバー……」
腹時計で約20分後。
「ミカエル・ウリエル・ガブリエル……」
ルルナ様はまだ呪文を唱えている。
腹時計で約40分後。
「メキド・ゼウス・エクス・マキナ……」
ルルナ様はまだ呪文を唱えている。
腹時計で約60分後。
「ファブニール・ニーズホッグ……。はあああああっ! はああああああっ!」
ルルナ様が気合いの声をあげている。
空気がピリピリするのが、肌に感じられる。
詠唱はついにクライマックスのようだ。
なにが起こるのだろう?
フリ○ザの完全体を初めて見た時のように、俺は胸をワクワクさせた。
だが、ルルナ様の様子がおかしい。
「はああああああっ! ふん! とぉお! きぇえええ!」
しまいにはさ。
「あがぁあああ! ほげぇえええ! ぬがぁあああ!」
と姫騎士にあるまじき擬音を、頭を抱えて絶叫する始末だ。
悶絶の末、ルルナ様はステキな笑顔で言った。
「うん、やっぱり最後のワンフレーズが思い出せません」
普通の人間ならば、ここは、ずっこけるところだ。
だが、俺にはとても、そんなことはできない。
こんなクソ長いフザけた呪文。
絶対に奴が一枚噛んでいる。
「ルルナ様も神に嫌がらせを受けているんですね?」
俺はそう同情した。
「えっ、なんで姫騎士の私が嫌がらせを受けるんですか?」
ルルナ様はキョトンと、そう言った。
「だって、クソ神の嫌がらせで、そんなクソ長い呪文になったんでしょう?」
「いいえ、違いますよ」
ルルナ様は首を振ると、神妙に言った。
「LV50になった時、神様の声が聞こえたんです」
ゴクリと喉を鳴らしながら、俺は聞いた。
「その内容は?」
「今覚えた超必殺技に、好きな名前を付けていいぞって」
「その結果?」
「好きな名前をつけました!」
「ズッコケぇえええ!」
それはもう盛大に、俺はずっこけた。
ルルナ様の職証の魔法及び必殺技覧は、文字化けして、バグっていた。
「なんで、こんな名前を?」
俺がそう聞くと、ルルナ様はほっぺたを膨らませて、つぶやいた。
「だって、カッコいいじゃないですか……」
俺はガックリと肩を落とした。
はあ、そんな理由で……。
世界は平和にならず、俺はウンコとして、この世界に送り込まれたのか。
ルルナ様。
いや、もうルルナでいい。
俺は、こいつの評価を見直そうと思う。
偉大だけど、バカなのではない。
偉大なるバカなのだ。
あ、ちなみにルルナの超必殺技。
使うと、大地が割れるんだって。




