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第22話 ウンコ、銀行強盗する。

「無駄な抵抗はやめて、大人しく投降しなさい!」

 お決まりの台詞を、ルルナがメガホン片手に叫んだ。

 俺は今、1人の女性行員を人質にして、銀行に立てこもっている。

 場所は、あのデブが頭取をつとめる、メイシーズ銀行だ。

 

 俺は今朝、このメイシーズ銀行に対して、銀行強盗を決行した。

 銀行に入るや、俺はウンコをバラマキながら、叫んだ。

「俺は銀行強盗だ。抵抗すると、ウンコを食わすぞ!」

 

 銀行員も客も皆、我を忘れて逃げ出した。

 金庫のカギを持っている支店長も含めてね。

 

 というわけで、俺はさ。

 この逃げ遅れた女性行員を人質にして、身代金を要求するつもりだ。

 人質の女性行員は、ウンコを突きつけられ、顔面蒼白だ。

 

 でもさ。


『かわいそうに。ごめんね』

 なんて思う余裕は、今の俺には塵ほどもない。

 

 だってさ。

 

 銀行の外では、衛兵特殊部隊の精鋭たちが弓を構えている。

 気をつけないと。

 人質から離れた瞬間に、蜂の巣だ。

 

 まあ、既に俺はさ。

 

 周りの群衆(野次馬)どもから、

「「「卑劣なウンコ、くたばれやぁあああ!」」」

 と言葉の弾丸で、とっくの昔に、蜂の巣にされているんだけどね。

 

 ルルナが叫んだ。

「貴方は完全に包囲されています! 投降しないと、突撃しますよ!」

 

 これるもんなら来てみろ!

 入り口には、ウンコバリケードを設置した。

 その手前には、ウンコ地雷を大量にまいてある。

 

 丸出しの尻を叩きながら、俺は挑発した。

「や~い、や~い、お前の乳首、で~べそ!」

 

 ルルナは顔を真っ赤にして、激怒した。

「なんて、卑猥な。姫騎士道その133。姫騎士は卑猥を絶対に許しません!」

 

 バカ騎士は特殊部隊に命令した。

「突撃しなさい!」


「嫌です! 汚いから!」

 特殊部隊隊長は上官の命令を拒否した。

 

 俺は高笑いした。

「はっはっは。それ見たことか!」

 でも、なんか悲しい。

 

 ルルナは、こほんと咳払いをすると叫んだ。

「ご両親が悲しんでいますよ!」

 

 引きこもりが親を罵る時以上の迫力で、俺は叫んだ。

「うるせえぇえええ!」


「恋人も悲しんでいますよ!」

「うるせぇええええ!」


「帰る故郷も悲しんでいますよ!」

「うるせぇええええ!」

 

 ルルナのアホバカ野郎。

 

 両親はさ。

 俺に借金(10億円)を押しつけて、夜逃げしたよ。

 

 恋人だった女はさ。

 10年付き合った俺を、「あんた、誰?」呼ばわりだよ。

 

 それにさ。

 

 俺は国籍を売られたから、日本の法律だと、もはや不法滞在者なんだよ。

 もう、心がグッサグサ。

 ゲシュタルト崩壊しそうだよ。

 

 気の弱い奴なら、即、登校拒否だぞ。

 

 俺はルルナに要求した。

「金だ。早く金を用意しろ! 1094万8905Gだ!」

 

 ルルナは、しばし絶句した後、

「……そんな大金、国でも買うつもりですか!」と叫んだ。

 

 俺は、ガリレオのように真実を訴えた。

「俺は1年間、3食パンを食いたいだけなんだ!」

 

 9999G×3食×365日=1094万8905G

 実に、理にかなった計算だ。

 

 なのにさ。

 

 あのバカは全然信じてくれなかった。

「姫騎士道その30。姫騎士は嘘を絶対に許さない。突撃です!」

 

 ルルナは突撃した。

 後に続く者はいなかった。


『抜き足・差し足・忍び足』

 を駆使し、ルルナは約30分かけて、ウンコ地雷原を突破した。

 

 だが、ウンコバリケードの前で、あえなくゲロを吐いてしまう。

「お、おえぇええ……、な、なんて臭悪な防御魔法」

 

 俺は大爆笑した。

「ひゃっはっはっは! 早く金を用意しろ! さもないと……」

 

 女性行員の命が危ないぞ。

 さっきから、ゲロ吐きまくって、脱水状態だ。

 既に、彼女の意識はない。

 

 どうしよう? 

 女性を殺しちゃったら、笑い事じゃ済まされないよ。

 

 ここで、颯爽とデブが登場した。

 彼こそメイシーズ財閥の長、グラン・メイシーズだ。

 

 デブは、よく通る声で、叫んだ。

「彼女を解放しなさい!」

 

 デブは、手に持ったトランクを、俺に見せるように高く掲げた。

「金は、この中にダイヤで用意してある」

 

 ウンコバリケード越しに俺は、トランクを受け取った。

 中を見ると、本当にダイヤが入っている。

 それに、30G分の銀貨も入っている。


「その銀貨は昨日、私自ら、肥だめを探して見つけたものだ。

 本当に、すまなかったな。このとおりだ」

 信じられないことに、デブは頭を深々と下げた。


「ルルナ君から全てを聞いた。

 ズキンという心優しき少女のことをな。

 その銀貨は、尊く美しい物だ。

 それを、肥だめに捨てるなど……。

 私はなんと卑劣な真似を……、シクシク」

 

 デブの瞳から、一筋の涙が流れた。

 このデブ。

 意外と良いヤツなのかも知れない。


「これを食べなさい」

 そう言って、俺にパンをくれたしね。

 

 ウインナー入りのパンだった。

 超美味かった。


「おかわり」と俺は言った。

「ひゃははは!」とデブは腹を抱えて、大爆笑し始めた。

 

 ひとしきり笑い終えると、デブは言った。

「パンには猛毒を入れておいた。あと30秒でお前は死ぬ」

 

 俺はパニックになった。

 そんな俺に、デブは酷い言葉を吐き続けた。

 

 その詳細は省略する。

 あまりにも外道でさ。

 良い子の皆には聞かせられない内容だったからだ。

 

 気づけば、毒を盛られてから、とっくに30秒以上が過ぎていた。

 だが、別になんともなかった。

 ウンコに毒は効かないようだった。

 

 デブは困惑した。

「なぜだ……、なぜ死なない?」

 俺はニヤリと笑うと、ウンコを構えた。

 

 デブは驚愕の表情で、命乞いを始めた。

「話せばわかる。話せばわかる」

 

 絶対に許さない。

 あまりの外道さに、先ほど省略した言葉の一部なんだけどさ。

 

 お前はズキンのことを、醜い奴隷と言った。

 ズキンの両親が残した銀貨を、ウンコのように汚い金だと言った。

 

 俺に渡した銀貨は、ズキンがくれた古びた物ではなく……。

 ピカピカの新品だった!


「クソ食らえ!」

 俺はウンコを、デブの顔面にぶちまけた。


「ぎゃあああああああああ!」

 デブはのたうち回りながら、そう叫んだ。

 

 ふっふっふ。

 正義(俺)は勝ち、デブは成敗される。

 

 これが勧善懲悪。

 永久不変の、世界の理なのだ。

 

 こうしてウンコはさ。

 極悪デブを倒した英雄として、大衆に受け入れられたのだった。

 ハッピーエンド。


 ってわけにはいかないよね。

 

 デブはさ。

 財閥の長だけあって、メンタル激強でさ。

 気絶する前に、こう叫んだんだ。

「ウンコを殺せ! 殺して殺して殺しまくれ! 

 奴の首を取った者には、ダイヤと金庫の金、その全てをくれてやるぅ!」

 

 このデブの言葉。

 効果は抜群だった。

 

 周囲の群衆と特殊部隊が、津波のように押し寄せてきたんだ。

 瞳が『¥マーク』と化した群衆と特殊部隊。

 奴らはもはや、人間ではない。

 金欲に狂った『金の亡者』だ。

 

 だがな。

 

 こちらには『鉄壁のウンコ要塞』がある。

「はっはっは、ウンコ地雷、越えられるものなら、越えてみよ!」

 

 だがさ。

 

 金の亡者たちは、ウンコを踏みつぶしながら、地雷原を猛然と突き進んでいく。

 

 落ち着け、落ち着くんだ、俺。

 まだこちらには、ウンコバリケードがあるんだ。


「これは、靴ではガードできないぞ! 

 素肌で、ウンコに触れる覚悟。貴様らにはあるかぁあああ!」

 

 ありました。

 金の亡者たちは、次々とウンコバリケードにダイブしていく。

 

 こうして、『鉄壁のウンコ要塞』は陥落。

 程なく俺は、金の亡者どもに捕まった。

 

 懸賞金を手に入れる条件は、

『DEAD OR ALIVE』ではなく、

『DEAD ONLY』だからさ。

 

 俺は徹底的にリンチされた。

 絶え間なく押し寄せる、激痛の奔流の中で、俺は思った。

 

 金の力は、世界の理すら変えてしまう。

 金が全て。

 それが、永久不変の『宇宙の理』なのだ。

 

 ルルナが止めてくれなかったら、俺は間違いなく殺されていた。

 クソ、クソ、クソ野郎。



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