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第19話 ウンコ、HPを売る。

 あれから、俺は1週間。

 飲めず食えずで考えた。

 

 結果、決断した。

『身体で稼ごう』

 と言っても、男娼になるわけじゃないよ。

 

 当たり屋になって、HPを押し売るんだ。

 

 朝の通勤ラッシュ後のメインストリートにて。

 トロトロと重役出勤中の馬車をターゲットに、俺はダイブした。


「ぐはぁ!」

 

 職証を確認すると、1のダメージ。

 

 俺は地べたをもがきながら叫んだ。

「腕が折れた! 足が折れた! 首が折れた! 金よこせ!」

 迫真の演技だった。

 

 なのにさ。

 

 馬車はスピードを緩めずに、走り去っていった。

 その上、俺は運転手に怒鳴られた。

「ドロップキックするんじゃねえよ!」

 

 うむ。

 ビビって足から飛び込んでしまったのが、マズかったようだ。

 よし。

 今度は頭から馬車にダイブだ。


「ぐばばぁ!」

 

 職証を確認すると、2のダメージ。

 

 俺は地べたをブレイクダンスしながら叫んだ。

「肝臓が! 腎臓が! 肺臓が! 心臓が! 粉々に砕けた!」

 感涙必至の演技だった。

 

 なのにさ。

 

 またしても、馬車はスピードを緩めずに、走り去っていった。

 俺はまた運転手に怒鳴られた。

「フライングクロスチョップするんじゃねえよ!」

 

 うむ。

 ビビって頭を無意識にかばったのが、マズかったようだ。

 ……よし、覚悟を決めたぞ。

 決死の覚悟で、無防備ダイブだ。


「ギョバァアアア!」

 

 職証を確認すると、3のダメージ。

 

 HP2になった俺は、ゾンビみたいにフラフラと立ち上がると、叫んだ。

「脳みそビチャビチャ! 魂グチャグチャ! 金よこせ!」

 

 オスカー級の演技だった。

 馬車は止まった。

 とても豪華な馬車だった。

 

 馬車から、身なりの良いデブが降りてきた。

 デブは言った。

「で、いくら欲しいんだ?」


「HP1あたり、1万Gだ」

 俺はそう言うと、デブに職証を見せた。

「6減ってる。だから、6万Gよこせ」


「わかった」

 デブはそう言った。

 俺はニヤリ、ついに勝利。

 

 でもさ。


 その結果としてね。

 俺は、身ぐるみをはがされちゃった。

 汚れた馬車の修繕費が20万G(=ウンコの負債は14万G)なんだって。

 俺は借金の契約書に、無理矢理に指でハンコさせられちゃった。

 

 ひどいよね。

 

 しかも、契約書の最後にさ。

『地の果てまでも追いかけるぞ』と書いてあるんだ。

 

 ああ、ズキン。ごめんなさい。

 もらった銀貨(30G)、取られちゃった。

 

 はあ、これからどうしよう?

 借金を抱えた全裸のウンコ。

 

 もう詰んでるよね?



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