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第1話 ウンコ、職業を手に入れる。

 お約束通り、俺は異世界に転生できた。

 

 ここは絶対に異世界だ。

 ここを一言で言うなら、天空宮殿。

 こんなもの、現実には存在しない。

 

 ああ、超絶哀れな俺をさ。

 超越存在(神を超える)が救ってくれたんだ。

 

 当然だよな。

 

 ある朝。

 起きると、両親が夜逃げしていた。

 

 俺は、10億円の借金の保証人になっていた。

 俺の臓器は全部(心臓も含めて)売約済み。

 その代金は全額前払いで、両親が受け取り済み。

 

 国籍も、既にタイ人に売却されていてさ。

 

 はあ。

 

 現在、俺が在籍していた超一流進学校には、

『そのタイ人のお坊ちゃま』が通っている。

 

 運野公太という俺の名前でな。

 

 そのニュー運野公太。

 マジ超人気者でさ。

『空を自由に飛びたいな』とお願いされると、

『ハイ、ジカヨー・ジェットキぃ!』と叫ぶんだってよ。

 

 現実、本日のHR直後。

 Fー22・ラプターが、グラウンドに着陸したそうだ。

 

 だから、俺は言われちゃった。

「あんた誰? キモいんですけど」BY元彼女。

「おまえ誰? 偽物は帰れよ」BY元親友。

「警察呼びますよ」BY元担任。

 

 みんなニコニコ顔で、札束を持っていました。

 俺はお別れの挨拶をするために、3時限目の教室に来ただけだったのにね。

 

 ひどいよな。普通は絶対狂うよな。

 国籍ないから、アルバイトもできねえんだぜ。

 

 もういいや。

 

 俺はこの異世界で生きていくことに決めた。

 現実世界に戻るなんて、まっぴらゴメンだからな。

 

 よし。

 

 これからはこの異世界で、元気よくモテモテ無双生活を送るぞ。

 俺は、終の住み処となった天空宮殿を探索した。

 

 一番奥に玉座があった。

 そこには、幼女が座っていた。

 ギリシャ神話の女神みたいに、白い布を身にまとっている幼女だ。

 

 俺は言った。

「消えろ」

 俺は幼女に興味はない。

 

 俺が望むのはさ。

 ボン・キュ・ボンの大人のワルツだ。

 

 幼女は言った。

「神に消えろとは。なんと無礼な奴じゃ」

 俺は言い返した。

「神は俺だ。ここは俺のための異世界だからな」

 

 俺はここでハーレムをつくる。

 小学1年の授業参観の時、みんなの前で、

『おとなになったら、ハーレムをつくりたいです』

 と己の夢を宣言した俺ならば、きっと作れる。


「ここはお前のための異世界ではないぞ。バ~カ」

 幼女がそう言った。

 すんごくムカつく口調と態度だった。

 

 俺は教育的指導を行うことにした。ゲンコツだ。

「神に勝てると思ってるのか?」

 幼女はそう言うが、神は俺なのだ。

「ああ、異世界でなら、転生者である俺は最強だ」

 俺はそう言って、ファイティングポーズを取った。

 

 結果、俺はボコられた。

 まあ、常識的に考えて。

 瞬間移動しながら、炎を吐く自称神に勝てるわけがない。

 でも、あれ? 

 こういうピンチの時こそ、お約束のチートじゃないの?

 

 俺は、右腕に焼き印を押された。

 奴隷の証らしい。

 俺は、幼女の奴隷になっちゃった。

 

 もう、現世に戻ってさ。

 ダンボールハウスを作って、ふて寝したい。


「元の世界に帰りたいか?」と幼女が言った。

「はい。神様」と俺は恭しく言った。

 

 幼女が呪文を唱えた。

 俺の目の前に、アパートの玄関ドアが出現した。

 開かれたドアの向こうには、俺の部屋(元)が広がっている。

 

 大家さんが、釘バットを試し打ちする得物を探しているけどさ。 

 ここよりはマシだ。

 

 俺はダッシュし、ドア目がけて、ダイビングヘッドした。

 

 だが、目の前で、むなしくドアは消え去った。

 俺は思いきり、顔面を床に打って悶絶した。

 

 幼女は言った。

「帰る方法はただ一つ。魔王を全て倒し、この世界を救うことじゃ」


「嫌だ」

 俺はそう即答した。

 

 死ぬかもしれないからね。


「なら、私の奴隷として永久にここで暮らすか?」

「はい、それでいいです」

 

 幼女は怒筋を立てて、呪文を唱えた。

 アイアンメイデンが出現した。

「エンドレスで、死ぬよりも辛い目にあわせ続けてやる」

 

 俺は言った。というか言わされた。

「謹んでお引き受け致します」

 

 こうして、俺は魔王を倒すことになった。

 とは言っても、俺はただの人間。

 

 しかも無職。

 魔王を倒す能力などあるはずがない。

 

 無力な俺に、神様(幼女)が職業をくれることになった。

 

 ここが俺のための異世界ではないことはさ。

 神様が拷問をもって、丁寧に教えてくれました。


「ここはお前のための異世界ではないよな?」という質問に、

「いいえ、ここは俺のための異世界です」と答えるとね。

 座らせられた椅子に、100万ボルトの電流が流れるんだ。

 

 もう信じるしかないだろう。

 クソ野郎。


「職業はお前の生死に関わる問題だ。だから慎重に考えろ」

 神様がそう言った。

 俺は真剣に考えた。命がかかっているのだ。

 落ちぶれても、俺は元上流階級。


「うん、この俺に相応しい職業は……」

 もったいつけて、『勇者だ』と言うつもりだった。

 

 なのにさ。

 

 神の野郎は即決で言った。

「ウンコだな」

 俺は即、抗議をした。

「なぜだぁ!?」


「だって、ウンコの俺に相応しい職業は……。やっぱウンコだろ」

「『うん、この俺に』って言ったんだよ! その後に勇者って言うつもりだったんだ!」

 

 クソ神は鼻をほじり始めた。

「ああ、勇者か。ここに来た奴は、どいつもこいつもそう言うな」

「魔王を倒せるのは勇者だけだろ!」

「だが、勇者はもう1000人は死んでるぞ」

「マジで?」


「そうだ。だから、ウンコにしとけって」

「嫌だ!」


「大丈夫、人間の姿は保てるぞ」

「それでも嫌だ!」

「だが断る!」

 

 というわけで、俺はさ。

 異世界にて。

 職業『ウンコ』と相成りました。

 ウンコの証として、職業証明書なる巻物を1本もらいました。

 

 それとさ。

 

 ウンコは武器を装備できないそうです。

 神様は、他にもこう言っていました。

 

 この異世界の名前はラグナロッカー。

 文明は中世ヨーロッパ風。

 日本語が通じる。

 

 そして、魔法と必殺技が使えるそうです。

 

 魔法(必殺技)を使うには、

『呪文(魔法名か必殺技名)』を唱えるだけでいいそうです。

 

 神様の説明はそれだけでした。

 面倒くさいから、だいぶ省略したそうです。

 俺の命がかかっているのにですよ。

 

 俺は決心しました。

 強くなって、あのクソ幼女をコテンパンにしてやるとね。




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