第18話 ウンコ、物乞いに身をやつす。
最後の手段だ。
俺は『物乞い』に身をやつすことに決めた。
ウンコ以下の存在になるのは、非常に屈辱的だ。
でも、俺は思うんだ。
物乞いの方がさ。
ずっといい暮らしができるんじゃね。
それに、物乞いを経由した方がさ。
スムーズにキャリアアップができる気がするんだ。
地球ではさ。
『ホームレス』から『会社の社長』になった人が、たくさんいる。
物乞いになった瞬間から、俺の出世街道が始まるはずなんだ。
目指せ、財閥の会長!
ただ今、真っ昼間。
王都のメインストリートに座り込んで、俺は慈悲を乞うている。
「誰か! 哀れなウンコにお恵みを!」
でも、全然上手くいかない。
はあ、腹減ったな。
同業者たちは、美味そうにパンを食っているのに。
俺は優しそうな貴婦人に声をかけてみた。
この人は、さっき同業者に銀貨を渡していた。
俺は同業者の真似をすることにした。
憐れみを誘うように、弱々しく手を伸ばしてみた。
でもさ。
機敏な動きで避けられちゃった。
貴婦人は冷酷に告げた。
「触れるな! ウンコ! 汚らわしい!」
ひどいよね。俺はキレちゃった。
「このビッチめ! ウンコの呪いを食らえ!」
俺はウンコを投げつけた。
見事、ビッチにクリーンヒット。
貴婦人は、忌腐人になって逃げ出しちゃった。
ざまあみろ。
その呪い(臭い)は、3日はとれないぞ。
ひゃはは、スーっとした。
でもさ。
状況が悪くなった。
人の流れが変わって、全ての通行人が、
『俺の手前』で路地に入って、
『俺の向こう側』の路地から出てくるようになったんだ。
誰も、俺の前を通らねえ。
このままじゃ商売上がったりだ。
というわけで、俺はさ。
『移動式物乞い』に進化し、
『ティッシュを配る人』みたいに、アグレッシブに慈悲を乞うた。
でもさ。
俺が何回慈悲を乞うても、皆それぞれ、酷い言葉を吐くんだ。
『ウンコ、汚い、近寄るな!』
あ、この例文はね。
オブラートでグルグルに包んであるんだからね。
忠実に教えたら、あまりにもグロすぎてさ。
『ピー。ピピピピ。ピー』
とエロゲー規制団体からの修正が入っちゃうんだからね。
こうして、ウンコは、名誉を著しく傷つけられました。
当然、ぶち切れてさ。
俺を罵倒した奴全員に、ウンコの呪いをかけてやった。
その結果……。
状況は最悪になった。
『移動式ウンコ砲台』を恐れて、メインストリートから通行人が消えたんだ。
いるのは、物乞いだけ。
宝石屋も銀行も高級レストランも、全店シャッターを閉めちゃった。
まさに、世界の終わりとハード物乞い・ワンダーランド。
結局、パン1つ食べれずに、陽が暮れてしまった。
途方に暮れて、俺は座り込んだ。
もう腹が減りすぎて、動きたくない。
そこに、姫騎士ルルナが現れた。
「姫騎士の情けです」
ルルナはそう言って、俺に金貨を1枚くれた。
金貨は1枚100Gだ。
「これじゃ足りません」
俺が正直にそう言うと、
「なんて強欲なウンコでしょう!」
ルルナはそう怒って、金貨を取り上げてしまった。
ルルナにすがりつきながら、俺は必死に訴えた。
「姫騎士道その233。姫騎士は物乞いに優しくするんですよね?」
「そうです」
ルルナはうなずくと、肩をすくめて、言った。
「仕方ありませんね。で、いくら必要なんですか?」
俺はまた正直に答えた。
「9999Gです」
でも、ルルナは信じてくれなかった。
「は? 豪邸でも買うつもりですか?」
それでも、俺は正直を貫いた。
「いいえ、パンを1個買うつもりです」
「姫騎士道その30。姫騎士は嘘を絶対に許さない!」
ルルナは激怒し、去って行った。
本当にパン1個9999Gなのにね、俺だけ。
はあ、ひも無しバンジージャンプでもしようかな。
俺が絶望していると、天使が降臨した。
物乞い様たちだ。
物乞い様たちは、俺にパンを恵んでくれた。
その尊き行いで、俺は理解した。
物乞いは、ウンコよりも、ずっと高貴な職業だ。
バカにしてごめんなさい。
俺は宣言した。
「俺も皆さんのような立派な物乞いになれるように、がんばります!」
さらに頭を下げた。
「どうか、ご指導ご鞭撻の程を!」
物乞いリーダーは、誇り高き表情で言った。
「ウンコにゃ無理だ。諦めな」
じゃあ、どうすりゃいいんだよ?
クソ野郎。




