第17話 ウンコ、商売を始める。
俺は3日ほど雲隠れしてから、また職案に行った。
でも、ルルナの威を借りないウンコはさ。
門前払いされちゃった。
仕方がない。
俺は起業することにした。
門番筋の情報によるとさ。
王都の中央広場では毎朝、朝市をやっているらしい。
俺の資本は、ウンコ。
ウンコは肥料で、有用な資源だ。
俺は今、
「野菜! 朝採りの新鮮な野菜はいかがっすか!」
という声に負けないように、
「ウンコ! 朝採りの新鮮なウンコはいかがっすか!」
と絶叫しながら、朝市の片隅で『肥料』を売っている。
1個3Gの爆安価格だ。
だが、売れない。
「ウンコがおすすめする! 最高のウンコですよ!」
キャッチコピー(徹夜で考えた)を叫んでも、売れない。
「今ならタイムサービス! 1個1G! 超破格の底値ですよ!」
値下げしても、売れない。
「なぜだぁ!?」
俺は頭を抱えた。
ああ、腹減った。
もう丸3日、何も食べていない。
ズキンのくれた種。
すぐ食べないで、とっておけばよかった。
いっそ、このウンコをチョコレートと偽って、売ろうかな。
いや……。
ウンコ=チョコレートと自己洗脳して、食べちゃおうかな。
……よし、そうしよう。
このウンコはチョコレートだ。
チョコレートに決まっている。
あの『甘苦い物質』こそが偽物なのだ。
だからさ。
このウンコは食べられる、食べられる、食べられる……。
俺は震える手で、ウンコに手を伸ばした。
そこに、麦わら帽子を被ったジイさんがやって来た。
「ちょっと、いいかのう?」
俺はウンコから、さっと手を引いた。
危なかった。
もう少しで、取り返しのつかない性癖を覚えるところだった。
ジイさんに感謝。
このジイさんは本人いわく、超一流の農家らしい。
ジイさんは、地べたに並べられたウンコを見るや、言った。
「なかなかのウンコじゃの」
ほめられちゃった。
俺はうれしくなって、活き活きと説明した。
「お目が高い。色、形、艶。全てが最高品質ですよ」
ジイさんはうなずいた。
「そのとおりじゃな」
俺はもっとうれしくなって、ピョンピョン飛び跳ねた。
でもさ。
「だがな」
ジイさんはそう前置くと、こう断言した。
「これは肥料ではない!」
「何ですとぉおおお!」
俺はガックリと肩を落とした。
ジイさんいわく。
ウンコはそのままでは肥料として使えない。
微生物の力を使って、完全発酵させなければならないのだ。
じゃないと、逆に作物が枯れたり、寄生虫がついたりする。
「で、どれくらいで、ウンコは完全発酵するんですか?」
俺がそう聞くと、ジイさんは残酷な真実を言った。
「わしの腕をもってしても、1ヶ月はかかるな」
ガビーン。
それじゃ、俺は餓死。
おまけに死体も完全発酵。
究極の肥料のできあがりだ。
仕方ない。
俺はウンコを肥料ではなく、ウンコとして売ることにした。
「ジイさん。俺は、この究極のウンコを大量生産することに成功したんだ」
俺はそう言うと、掛け値なしの底値を提示した。
「100個1Gでどうだ?」
「いらん」
ジイさんはそう即答した。
なぜならさ。
金持ちは、安全性が保証されていない食べ物は食べない。
だからさ。
超一流農家は、安全性が保証されていないウンコは使わない。
信頼のおける生産者から速達されたウンコ。
そんなトレーサビリティー可能なウンコをさ。
温度・水分・空調などに、細心の注意を払いながら発酵させた後。
肥料として使う。
それが、最高級品をつくる農家の常識なのだそうだ。
説明をし終えるや、ジイさんは去っていった。
こう言い残してね。
「ウンコはデリケートなものじゃ、精進せい」
5分後。
俺はウンコと共に、朝市から、たたき出された。
理由は以下の通り。
『キモい。不衛生。商売の邪魔』
本当、ひどいよね。
俺はデリケートなウンコなのに。




