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第13話 ウンコ、採用試験を受ける。

 万事休す。

 でも、俺は諦めない。

 俺は考えた。

 こういう時、物語の主人公なら、どういう行動を取るのかを。

 

 結果、俺は悟った。

 熱血だ。

 熱血で頑張れば、きっと誰かが助けてくれる。

 それが物語の理なのだ。

 

 熱血の象徴は、土下座である。

 俺は王都中を、土下座して回った。

 

 肉屋では、腐った肉を投げられた。

 魚屋では、腐った魚を投げられた。

 

 レストランでは、腐った残飯を投げられた。

 ホストクラブでは、腐ったワインを投げられた。

 

 不運なことに、そのワインは超高価な貴腐ワインでさ。

 俺は黒服の怖い人たちに囲まれた。

 リンチされそうになった。

 命からがら、逃げ出した。

 間違ったのはアイツらなのにな。

 

 それでもさ。

 

 俺は諦めなかった。

 こんな仕打ちは想定済みだからだ。

 熱血主人公には、逆境がつきものだ。

 虐げられて当然。

 

 それが物語の常識。

 そうでなければ、おもしろくないのだ。

 

 だから今さ。

 

 当然の帰結として、俺は採用試験を受けている。

 俺の熱血を認めてくれる人が、ついに現れたのだ。

 

 そのお方は、ソフトクリーム屋の兄貴。

 兄貴はとてもビックなお人で、夢はこうだ。

『究極のソフトクリームを作って、世界を平和にする』

 最高のナイスガイだろう。

 

 客たち(兄貴の元舎弟)いわく。

 兄貴は、伝説の元ヤンキー。

 

 ヤンキーの世界では、知性よりも、『根性』がものを言う。

 俺は、根性を認めてもらうためにさ。


「俺も兄貴と一緒に夢を追いたいんです!」

 そう叫びながら、土下座を続けたんだ。

 

 土下座開始から、24時間後。

 兄貴は、俺の手をとって、言った。

「共にビッグになろうぜ」

 

 この瞬間、俺は心に決めた。

 このお方に、一生ついていくとね。

 兄貴と共に歩むためにさ。

 俺は絶対に、この採用試験に合格しなくてはならない。

 

 採用試験は実技試験だった。

 その内容は、ソフトクリームを巻くこと。

 

 チャンスは1回のみ。

 兄貴はセンスのない奴は採用しないのだ。

 俺は全神経を集中させて、ソフトクリームを巻いた。

 

 だが、ピサの斜塔みたいに傾いてしまった。


「不合格だ」と兄貴は言った。

 床が焦げるくらい、頭をこすりつけて、俺は土下座を繰り返した。

「慈悲を! 慈悲を! 慈悲を! 慈悲を! 慈悲を!」

 

 慈悲深い兄貴は、もう1度チャンスをくれた。

 兄貴は優しく言った。

「うまく巻けるかが問題じゃねえ。見せて欲しいのはセンスだ」

 

 兄貴のお言葉に従い、俺はセンスを見せた。

 コーンの上に、見事なとぐろを巻くことに成功したのだ。

 コーンの上にそびえる、ピラミッドのように重厚なウンコ。

 まさに、『ウンコの芸術』と呼べる作品だった。

 もう、どんな結果になろうと、悔いはない。

 

 えっ? 結果?

 もちろん不合格だったよ。

 兄貴マジ切れ。

 

 俺は逃げ出した。

 必死に死ぬ気で、ダッシュした。

 

 だってさ。

 

 あいつ、ジャイ母よりヤベえ。

 信じられるか?

 あの脳筋、小指一本で馬車を持ち上げるんだぜ。




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