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ふっと、春

作者: 綾川 五月丸

 日本列島をピンク色に染め上げる春の使者は、どうやら人々をどうしようもなく陽気にさせる力を持っているらしい。公園内には、見渡す限り息苦しいほどに咲き誇る桜を愛でようと、花見に詰め掛けた人たちでいっぱいだ。地面が見えなくなるほどあちこちに敷き詰められたブルーシートの上で、彼らはまるで果てしない桃源郷を漂流しているようにも見える。

「やっぱり春は桜だなぁ」

 なんとか空いたスペースを確保してゴザを広げていると、彼は柔らかな陽射しに目を細めながらのんびりと言った。

「もうちょっと、静かだったら良かったのにね」

 派手なロックを響き渡らせながら踊り狂う大学生らしきグループを横目に私が呟くと

「仕方ないよ。こんなにきれいなんだから」

 花びらを頭に積もらせてそう言った彼の視線を追って空を見上げれば、そこには思わず息を飲むような光景が広がっていた。澄み切った青空に薄く漂う雲と強烈なピンクの鮮やかなコントラスト。その圧倒的な美しさに吸い込まれたように一瞬周囲の喧騒も遠のいていた。ふと我に返って彼の方を見れば、私の心の動きを見透かしたかのようにいたずらっぽく微笑んでいる。

 たしかに、春はやっぱり桜、なのかもしれない。


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