Vor:少年
『ドシン』
私は地面らしいところに落ちた。
「いっ……………たぁぁ〜」
地面に着くまで終始叫んでいたので声がかれガラガラになっていた。
っていうか、なんか…かっこいい声になった気がする…
「いたいよぉ…」
と言っても答える人はいない。
…むなしい。
「ここは…どこ??」
地面は芝生で上を見れば緑の若葉が風で揺れていた。
そんなでもなかったが久しぶりの太陽!!
まぶしっ!!
私は顔の前に手をかざし目に日陰をつくった。
…って……あれ???
服変わってない??
制服じゃない。
なにこの服は!!!
真っ黒なシャツ。
胸の辺りに白い十字架のプリントがあり、袖口は広がっていて手がちゃんと出せない。
まぁ、それは好きだけど。
下には真っ黒なズボンをはいていて右足ピンクと紫のリボンが巻いてあった。
汚したらすぐに白くなってしまいそうな格好をしていた。
ボクこういうのだめなんだよねぇ…
ん??
『ボク』??
まぁ、いいか。
大して問題ない。
問題なのは…
ここはどこなのか
ということと
何で服が違うのか…
あ!そうだ!!
あの鉄の臭いのするものは??
ボクは袖を捲り触ったほうの手を見てみる。
……何もついてない。
ボク、触ったよね??
あれ??
臭いもしないし…
何で?!
ヤッバイ…
不安になってきた…
誰もいない草原。
通るのは頬を撫でる風だけ。
ボク、やっぱり死んじゃったのかな??
あぁ〜…
ちくしょう
風が気持ちいいぞコラ。
ボクは草原に寝転んで瞼を閉じた。
木漏れ日が顔にあたり暖かかった。
「何をしているんですか?」
……え??
瞼を開けるとそこには白髪の人がたっていた。
逆光で顔は見えない。
ボクは上半身を起こし彼をみた。
白髪にしては若い容姿。
服は正装をしていて、値段がとても高そうだ。
しかし、明らかにおかしい物があった。
それは、天に伸びる二本の長く白いウサギの耳。
………ハイ??
「僕は何をしているんですか、と聞いています。答えて下さい。」
「え…いや、その。」
いきなり、早口で言われ、ボクはくちごもる。
「はぁ…何で僕を追いかけて来ないんですか?」
優しい口調になった。
「え?」
「ずっと、貴女の前で走っていたでしょう??」
走ってたって…
「え!!」
「気付いてなかったんですか?」
「うん!」
そういうと彼は頭を少し抱えた。
「じゃあ、何で追いかけたんですか??」
「えっと…何か追いかけなきゃいけないって気がして…一言で言えば…勘??」
「勘!!?」
「う、うん。」
「貴女、勘だけで走ってたんですか?バカじゃないですか?」
怒ってる!
怒ってるよぉ〜!!
「もし、貴女の勘が外れてたらどうしてたんですか?」
「どうしてたって言われても……」
そんなこと言われても…
ボク…
わかんないし…
それに…
「う、う…」
ダメだ、目が霞む…
「ヒック…」
「ちょ、ちょっと!?泣かないで下さいよ!!」
そんなこと言ったって…
勝手に涙が…
白いウサギの耳をした彼は目の前でおろおろと慌てていた。