2度目のテレポート
「ネ………マリーネ!!」
「はいっ!」
誰かによばれて、反射的に返事をする。
「は、はいって…マリーネ面白すぎ!」
アハハハハ! とお腹を抱えて笑い出すのは…
「ベルーっ!」
そう、ベルだった。…もう。
「昨日はあんなにグーグー寝てたくせに」
そう言えば、ベルは「昨日は昨日よ!」なんてムキになる。…ベルの方がよっぽど面白い。
「まあいいや。起こしてくれてありがとね、ベル」
お礼を言うと、
「いーえ!」
と明るく笑った。
「おはようございます!」
2人揃ってしたに降りていくと、そこには見慣れない女の人がいた。
「あら、おはよう。今日はいよいよ出発ね〜」
「あ、そっか…もうこんな時期なのね。母さん」
ふー、と息を吐くその人は、マリモアさんにとても似ている。…もしかして。
「マリモアさん、娘さん?」
ベルも同じことを思ったらしい。私より早くマリモアさんに尋ねていた。
「ええ、そうよ。こちらは娘のミント」
「貴女たちが今年のルーナね。私はミント・マリモアよ。母さんから聞いてるかもしれないけど、アストラ学院の卒業生なの。貴女たちの先生であるクリストンは、私の先輩よ」
やっぱり。この人がマリモアさん…もといハーブさんの娘さんだった。
「マリーネ・インディーコと申します。よろしくお願いします」
「ベル・モルーガです! ミントさんよろしくお願いします」
「ていうか、私も母さんも“マリモア”だし、名前で呼んだら? ね、母さん」
ミントさんが提案する。
「そうね。私の事はハーブと読んで頂戴」
「わかりました!」
「はい!」
たしかにその方がわかりやすい。
「では、ご飯にしましょうか。たくさん食べておかないとね」
「結構馬車乗るからねえ…」
ミントさんはとっても気さくな方で、ご飯中も楽しく食事ができた。
そして、出発の時間。
「2人とも、制服似合ってるね! ま、ダボッとしてるのは1年そこらでちゃんとなるから、心配しなくていいと思うよ」
アストラ学院の制服は、グレーのベストとスカート、クリーム色のシャツ、リボンタイだ。ちなみに、リボンタイの色は学年で違う。私たちの代は空色のリボンタイだ。あと、校章の色は1、2年生が銅で3、4年生が銀、5、6年生が金らしい。校章と、あと“とんがり帽子“も向こうでもらうとか。
そして、そこに黒いローブを羽織る。
_あれ、そういえば…
「あの、どうやって学院まで行くんでしたっけ」
「あー、商店街からテレポートでマナの森までとんで、そっから馬車に乗るの」
「中々メルヘンチックですね…」
そういえば、さっきミントさんがサラッと”結構馬車乗るからねえ…”とか仰っていたような。
「では、マナの森まで飛びますよ。掴まっていてくださいね」
ことの成り行きを黙って見守っていたクリストンさんが言う。
「気をつけてね!」
「頑張るんだよー」
ハーブさん、ミントさんのお見送りの声を聞きながら、2度目のテレポートを待つ。
「メタフォーラ、マナの森!」
来た。あの、独特の浮遊感が。2度目だから、少しはマシかな。
そんなことを思っているうちに、土の匂いがしてきた。