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アストラ学院の水魔法使い  作者: ゆきんこ
第1章-期待と門出-
8/22

アルヒ商店街にて

『マリーネ…やっと…貴女も………____に、…てくれた………!』


_なに、なんて言ってるの?


『忘れちゃったの………? わたしは、貴女を…ずっと………』


_貴方は、誰なの?



「ん………あ、朝か」


なんか、変な夢を見たような。何だったっけ…?


隣では、すうすうと寝息をたてるベル。なんていうか、凄く幸せそうな顔で寝てる。…いい夢見てるんだろうな。


「…って、今日は商店街に持ち物買いに行く日!」


クリストンさんが、寝坊しないようにって言ってたはず…! ベル、昨日はあんなに元気よく返事してたのに………。


「まだ、寝てる…」


起こさなきゃ、だよね。


「ベルー、起きて〜」


ユサユサとベルをゆさぶる。


「んあ…マリーネ、おやすみ〜」

「いや、寝るなよ!」


思わず鋭い突っ込みを入れてしまう。それよりも、早くお寝ぼけベルさんを起こさなければ。


「今日は制服とか買いに行く日じゃなかったっけ?」

「…はっ!!」


…反応はやっ。そしてわかりやすい。そう言えばベルは風魔法のルーナだったっけ。風の様に行動の変化が早い。


「下降りてご飯食べよ。多分クリストンさん待ってる」


「はーい」


なんだか、ベルの頭のうえに音符マークが見える気がするよ。




「じゃあ、買いに行こうか」


「はい!」

「はーい!」


宿の前、無事朝食を終えた私たちはクリストンさんの呼びかけに元気よく返事をした。


「まずは、ローブと制服です。アストラ学院では、標準服の上から黒いマントを羽織るのが決まりなのです」


「ローブ…」


「なんか、カッコイイ!!」


「2人とも、目が輝いてるね。いいわねえ、若いって」


マリモアさんの羨ましがる声を背に、私たちは商店街の奥へと進んだ。


「ここは、アルヒ商店街です。先ほどの宿“エイレーネ”は商店街の入口にあって、目印替わりなのです」


クリストンさんの説明を聞きながら、はぐれない様についていくだけで精一杯。とても、商店街を楽しむ余裕はなかった。


「人…多くない、クリストンさん!」


ベルが息も絶え絶えに訴える。


「もうすぐですから。少しの辛抱です」


「はーい…」


朝の威勢の良さはどこに消えたのやら、ベルはグッタリだ。


「さあ、着きました」


見上げたそこは、“ランプロス”という仕立て屋だった。




「いらっしゃいませ! あ、クリストン! もしかして、この2人はルーナ?」


「その通りです、ミス・ファレン」


クリストンさんと同年代くらいに見えるファレンさんは、亜麻色の髪を横で束ねていて大人っぽくて綺麗な人だった。


「アストラ学院のローブと制服ね、サイズ測るわよ…失礼」


ファレンさんが杖をひと振りすると、まずベルの体が光に包まれる。そして、それを後ろのミシン…を簡略化させたような機械に飛ばした。


「お次は貴女ね」


私の体を光が包む。…なんかくすぐったいような………。そして、やはりそれを隣の同じ機械に飛ばした。


ぽん!


機会の動きが止まり、私たちの目の前に現れたのは…


「うわあ、ローブだ!!」

「凄い…!」


私とベルは同時に叫ぶ。

すると、ファレンさんは私たちの方に向き直り、


「2人とも、何色が好き?」


と聞く。私は迷わず、紺色と答え、ベルはラベンダー色! と言った。


「2人とも、利き腕は右?」


「はい」

「そうです!」


「紺に、ラベンダー。右利き…オッケー。じゃあ、少し時間かかるから先に教科書とか見てな」


「では、また来ますね、ミス・ファレン」


「お願いします」

「お願いしまーす!」


私たちは、仕立て屋を後にした。



「次は教科書です」


次に向かったのは書店。…うちの古書店と違って、大きい。…というか、


「棚、大きくないですか?」


「ああ、ここの本は全て、杖で取り寄せるのですよ」


言うが早いか、クリストンさんはエラ!と唱えて


「呪文学基礎、薬学入門、ゼロから学ぶ魔法界の歴史、新・防衛術-1-、変身術1・改訂版、天文学-星の導きと運命の流れ-…」


シュン、シュン、シュン! 次々と飛んでくる教科書を受け止める。………分厚い!


「う………」


「大丈夫? ベル。」


ベルの顔が過去最高に(出会ってまだ2日だけれど)歪んでいる。


「大丈夫…じゃない………てかマリーネ、なんで貴女はそんなに平気そうなの!」


うらめしげにこちらを見るベルに、


「うちの家、古書店だったから。本を運ぶのなれてるの」


と言うと、心から納得した様子だった。




「クリストンさん………次で仕立て屋の前は最後…ですよね?」


鍋、望遠鏡、ガラス瓶………荷物が重くて手がちぎれそうだ。


「そうですね、最後は…」


クリストンさんの言葉を


「杖!」


というベルの言葉が引き継いだ。



「いらっしゃいませ、杖売りのバーロンです。クリストン、こちらのお2人は新入生ですな?」


「ええ、その通りです」


初老の男性が恭しくおじぎをする。つられて、ベルとマリーネもおじぎをした。


「では、お嬢さん方…先にそこのココアブラウンヘアーのお嬢さん、カウンター中心にあります水晶に手をかざして、念じてください。“我、魔法を使いし者、汝、我を助ける導となれ! エラ、杖よ!”」


焦げ茶のカウンターに置かれた、銀の台座に乗った丸い透明な水晶。それを指さし、バーロンさんは言った。


「我、魔法を使いし者、汝、我を助ける導となれ! エラ、杖よ!」


水晶が薄い紫色の光を放ち、ある1点に飛んだ。


ヒュンッ


箱ごと飛んできた“何か”をベルがキャッチして、バーロンさんが頷くのを確認した後、蓋を開ける。


「うわあ………杖だ!」


感動と喜びで顔をほころばせるベル。その箱の中を覗くと、確かにそこには杖があった。


「檜に、モルガナイトをはめ込んだ杖。…貴女にピッタリですな」


「はい!」


杖の持ち手にちょこんとはめ込まれたモルガナイト_ピンク色の宝石がキラキラと輝いている。


「お次はそちらの黒髪のお嬢さん」


バーロンさんに促され、息を深く吸う。


「我、魔法を使いし者、汝、我を助ける導となれ! エラ、杖よ!」


お腹のそこから力が沸き上がり、洪水が起きたようだ。腕を伝わって、指の先から大量の水が噴射されるような感覚。


眩い光のその色は、鮮やかなマリンブルー。


ヒュンッ


飛んできた箱をしっかりと腕の中に収める。その中身を見ていいかバーロンさんを見ると、頷いた。


「綺麗………」


それ以外に、言葉がなかった。


「白樺に、アクアマリンをはめ込んだ杖じゃ」


こちらは杖の持ち手より少しだけ上、ちょうど、杖を握って隠れないほどの所に宝石がはめ込まれていた。透き通るような、ブルーの宝石だ。


「お2人さん、杖はお気に召しましたか」


バーロンさんの問いかけに、私とベルは「勿論!」と同時に答えた。




少し歩いて、やっと仕立て屋に戻ってきた。…そうだ、制服が見れる!! 杖が衝撃的すぎて頭から吹っ飛んでいた。


からんからん、仕立て屋のドアの釣鐘が鳴った。


「あら、クリストン。…やっぱり新入生は荷物が多いわね」


ファレンさんは3つの袋をカウンターに用意していた。


「ほら、ジャスパーくん、さっき話したルーナのふたりよ」


ファレンさんの目線の先には、茶髪の髪の1人の男の子とミルクティー色の髪を下で1つに束ねた女の人が1人いた。


「クリストン。そちらがルーナの2人ね…ちなみに私はサラ・ルベレット」


女性の方がクリストンさんの方を向いていった。


「はい、ルベレット。そちらはヘリオスの少年ですね」


ヘリオス…という事は、私やベルと同じ? しかも仕立て屋にいるって事は同い年だよね。


「君たちが新入生のルーナ2人なんだよな。僕はジャスパー・アグレイン。よろしく」


「あたしはベル・モルーガよ。よろしくね!」


「マリーネ・インディーコ。よろしくね」


取り敢えず私たちは握手を交わした。


「じゃあ、マリーネ、ベル、ジャスパー。これが制服だよ」


「ありがとうございます!」


3人揃って受け取り、お礼を言う。


「ローブだけど、前紐はさっき聞いた色にしといたよ。で、ローブの胸ポケットは、3人とも右利きだから左が杖用のポケットで、右側が、生徒手帳とか入れるポケットだからね」


「ああ、だから利き腕をお聞きになったのですね」


ジャスパーが納得した様に呟いた。ベルも「おおー」と言っている。


「それでは行きましょうか」


「明日は朝早いわ。宿で休みましょう」


クリストンさんとルベレットさんに促されて、私たちは仕立て屋をあとにした。


























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