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アストラ学院の水魔法使い  作者: ゆきんこ
第2章-王立アストラ学院-
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呪文学の教室-2-

ゆっくりと扉が開き、先生が入ってくる。教室のあちこちから唾を飲む音が聞こえてきそうな、そんな緊張感が漂う。

落ち着いた雰囲気、表情。…やはり、入学前の先生の印象と変わらない。


「…? 皆さん、どうかしましたか?」


案の定クリストン先生は不信感を抱いたようだった。………とは言っても、まさか初授業の先生に『貴方鬼ですか』などと聞けるわけがなく、沈黙が訪れる。


「あの」


そんな中、勇敢にも手を挙げたのは真ん中に陣取っていたジャスパーだった。


「何ですか、ミスター・アグレイン?」


「はい。なぜ入口の所で呪文を唱えなければならないのですか?」


やばい答えが返ってきたらどうしよう_そんな思いが皆を包む。ジャスパー本人もかなり不安そうだった。


「おや、解除できてませんでしたか…申し訳ございません」


皆の頭上に『???』とはてなマークが見えた気がする。ベルなんて、そこに追加で湯気が見える。頭が沸騰してるようだ…


「ここの教室では、2回目以降の授業の時は出題される呪文を唱えて入らなければならないのです。1年生の初授業だったので解除しておいたはずなのですが…どうやらし損ねたようです。すみませんね」


…とりあえず、正真正銘の“鬼教師”ではないことが分かった。周りからもふう、と安堵の息が聞こえる。


「そういう訳ですから、次回から教室に入る時呪文を唱えなければなりません。ここは呪文学の教室ですからね。日や学年ごとに違いますから、自分たちで考えるようにしてください」


そう言ってから少し間を置いて、クリストン先生は話し出した。


「では、呪文学の概要を説明しましょう。…まず、私は呪文学教師のジェームズ・クリストンです。呪文学は6年間ずっと学ぶ教科ですから、私が移動するか貴方たちが退学にでもならなければ、卒業までお会いすることになりますね」


呪文学は_ということは、途中でやらなくなる教科もあるのだろうか。ふと、そんなことが頭をよぎる。


「各寮の先輩や先生から聞いているでしょうが、呪文学は教科書と杖があれば基本的に大丈夫です。主に“基礎学科”と呼ばれますからね。呪文学は全ての魔法技能の基礎的な役割を担っているのです」


生徒たちはぼんやりと聞いたり真剣に耳を傾けたり、色々だ。


「では、魔法使いの基本とも言える呪文を学んでいきましょう。…どなたか、基礎呪文について知っている人は?」


左隣ですっと手が上がった。ハンナだ。


「ミス・フランク、どうぞ」


クリストン先生に指されたハンナは、少し緊張気味に口を開いた。


「基礎呪文とは、呪文の中でも良く使い、あらゆる魔法の軸になる呪文のことです」


外れていたらどうしよう…と、そんなハンナの声が聞こえてきそうな表情だった。


「素晴らしい。その通りですよ。ミス・フランク、よく予習をしたようですね」


クリストン先生に褒められて、ハンナは熟したトマトのように真っ赤になった。


「ハンナ、凄いね」


「呪文学、沢山呪文があったから、教科書読んだんだ」


リーダーシップがあり、その上勉強家。どうやら私は、相当心強いルームメイトを持ったようだ。


「基礎呪文の定義は曖昧ですが…皆さんも最も使うことになるであろう呪文は、メタフォーラ_転送の魔法ですね。遠くの場所にものを届けたり、自分自身を移動させる魔法です」


そう言いながら、先生は黒板に“メタフォーラ”と書いた。


「あともう一つは、エラ_呼び寄せる呪文です。箒を呼ぶときにも使ったでしょう」


すると今度は、“エラ”と書いた。


「この2つの呪文は、自分の能力の成長が一番顕著に表れます。メタフォーラならより遠くに転送出来たり、エラならより遠くから、たくさん、呼び寄せられたり…ですね」


その後も先生は、呪文を唱えずに魔法を発動させる“無言呪文”のことや、呪文同士を組み合わせて使う方法もあることなどを教えてくださった。


「では、初回の授業はここまで。実践は次からにします。杖と教科書を忘れないでくださいね」


キーンコーンカーンコーン…


「はい、では解散です。ありがとうございました」


「ありがとうございました」


号令も済み、私たち8人の集団もぞろぞろと続く1年生の群れについて教室を出た。

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