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アストラ学院の水魔法使い  作者: ゆきんこ
第2章-王立アストラ学院-
20/22

呪文学の教室

グラウンドから各寮生たちは各々の寮へと続く扉や階段へと向かっていた。


「ねえハンナー、次なんだっけ?」


間延びした声でベルがハンナに問う。…ちなみに彼女は私とロビンに宥められたり励まされたりした後、復活していた。


「次は呪文学よ。…っていうかベル、時間割書いてないの?」


ハンナの指摘はごもっともであった。確か、今日の朝各部屋に1枚時間割が配られて、それを生徒手帳の後ろにメモしたはずである。


「手帳部屋に置いてきちゃった…」


「アホかお前」


頭をかくベルに、辛辣に突っ込むトム。


「ちょっ、アホは無いでしょアホはあ〜っ!!」


いつからこの2人、こんなに小競り合いをするほど打ち解けたのだろうか…。


「元気だなあいつら」


「…むしろうるさいくらいよ」


「あ、あはは」


そんな2人を遠巻きに見つつ、ロビン、ジャスパー、ハンナ、私の4人は呪文学教師のクリストン先生について話していた。






呪文学の教室は、中央塔の2階にある。…と、6年生から渡されたメモに書いてあった。

2階までの階段を登りきりキョロキョロしていると、奥の方に1年生の集団が見えた。


「あれ、呪文学の教室よね?」


「そうだな。プレートかかってるし」


「何やってるんだろう…」


ガヤガヤしている塊の1番後ろに、銀色のお下げを揺らしながらぴょんぴょん跳ねている子がいる。…確か、キグヌスの子だ。


「あの子にきいてみたらどうかな?」


「そうだな。考えるよりも聞け、だ!」


そんな訳で例の銀色のお下げの子に声をかける。


「ねえ、貴女…キグヌスだよね?」


「えっ…は、はい!」


思った以上にビクリと肩を揺らす彼女に、私は驚くとともに申し訳なくなる。


「ごめん…驚かせちゃった? ねえ、あそこで今何やってるかわかる?」


「ううん、大丈夫。ごめんね、びっくりしちゃって…。えっとね、私も分からなくて。何か、呪文がうんぬんとか言ってるけど…」


「そっか…、ありがとう! ねえ、私、マリーネっていうの。貴女は?」


「私? 私は、リリー。リリー・マードックよ」


リリー…? 聞き覚えがあるなあ。


「寮の部屋って何号室?」


「305」


「やっぱり! 私、隣! 306号室なんだ」


「そうなの? 近かったのに気が付かなかったね…」


大人しそうな子だし、ベルとかと違ってはしゃぎそうもないし…だから接点なかったのかな。


「あの、良かったらマリーネって呼んでくれる?」


「良いの?…分かった。じゃあ、私もリリーで良いよ」


「ありがとう! よろしく、リリー!」


「うん、よろしくね」


リリーと2人で話していると、後ろから声が聞こえてきた。


「マリーネ、まだ〜?」

「リリー、どう?」


…同時に。


「ベル!」

「あ、アリス」


呼ばれた側も呼んだ側も、同じ方向に向かって話しかけたことに気がつき、驚く。


リリーの目線の先を反射的に辿ると、そこにはミルクティー色の髪をツインテールにした可愛らしい雰囲気の1年生がいた。


「ごめん、キグヌスの子がいたから話しちゃって…」


「え、キグヌス? そっちの子も?」


「も、って、貴女たちもキグヌスだったの!」


「あ、うん、アリス、えっと………」


ベル、私、リリー、アリス? の会話がゴチャゴチャしてきて男子が少し気まづそうに離れ始めた頃、ハンナが咳払いをした。


「えーっと、埒が明かないから話やめて! マリーネ、そっちの子は?」


ハンナのリーダーシップに恐れ入りつつ、リリーの紹介をする。


「で、えっと…リリーのお友だち、なのよね?」


続いてハンナはアリス? の方を見て問う。


「ええ。わたしはアリス。リリーとはルームメイトよ。…あと1人、メアリーって子もいるけれど」


アリス、リリー、メアリー…やっぱり、305の子たちか。


「で、そちらは?」


「私はマリーネ。306号室なの。そっちのハンナ、ベルとはルームメイトよ」


「ワタシはハンナ。ロバートとは双子よ。あと、ごめんなさい。勝手に仕切り出して…」


「あたしはベル! よろしくね!」


何とか状況が揃ってきた…。ハンナには今後もお世話になりそうだなあ………


「いいえ、大丈夫よハンナ。寧ろ助かったもの」


「うん、アリスの言う通りだと思う」


「ハンナ、ありがとう!」


皆に感謝され、紅くなるハンナ。…今日はハンナの色々な顔が見られそうだな。


「おーい、教室あいたぞー?」


ジャスパーの声にそちらを振り向けば、1年生が皆教室へ入っていくところだった。


「結局何だったのかしらね?」


ハンナの疑問に、トムが答える。どうやら、教室に入るために呪文を唱えなければいけなかったらしい。


「……え、1年生にいきなり呪文唱えよとかクリストン先生実は鬼?」


クリストン先生には入学前にお世話になっていた私とベル。顔を見あわせて、確認し合う。


「違う、よね?」


「違う、といいなあ…」


そんな不安を抱きつつ、教室に入る。…席は自由らしい。


「前の方しか空いてないね」


皆思うことは同じなのだろうか。呪文学の先生=鬼、という等式が成り立とうとしている。


「しょうがない、どこに座っても同じだろ!」


ジャスパーが大胆にもど真ん中を陣取る。続いて、そのサイドにトムとロビン。


「私たちは…その後ろかな」


3人席で3列。幸いにも真ん中の列の2列目は空いていたのでそこに、私とベル、ハンナが座り、リリーとアリスはその右の列に座った。ちなみに、一番前の右の列、左の列は既に埋まっていた。…いずれも一緒に授業を受けるパヴォ寮の子たちだった。さすがは目立つことが好きな生徒が集まるだけあるな…と思った。


キーンコーンカーンコーン…


チャイムとともにクリストン先生が入ってきた。

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