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アストラ学院の水魔法使い  作者: ゆきんこ
第2章-王立アストラ学院-
17/22

朝ごはん、コルヴィス寮

少し早めに来たはずなのに、講堂には既にたくさんの人がいた。


「確か一番端だったよね、キグヌスのテーブル」


「ええ。…あ、あそこにいらっしゃるの、ジェイドさんじゃない?」


ハンナの目線の先には、黒髪に黒縁眼鏡の背の高い男の先輩_まさしく、昨日私たちを寮まで連れてきてくださったジェイドさんだ。


「トムのお兄さんもいるね! そういえば二人は仲がいいんだっけ」


「ああ…生物学でジェイドに負けたことがないっていう?」


「生物学………」


生物学、と言えばあの時のリサさんの遠くへ行ってしまっていた目。カメレオンのレオン…


「お腹すいたー! よし、長椅子に座ろ! もうお腹ペコペコで…」


ギュー…その音を鳴らしたのは_


「マリーネ…」


「あ、あはは………いつもご飯も早いから…」


「…マリーネのお腹のためにも早く座ろうか」


私のお腹なのだった…




「わあ…昨日も思ったけど凄い美味しそう!」


ハンナが目を輝かせ、感嘆の声を上げる。

そして、その横ではニヤニヤとしたままのベル。…不気味である。


「よ、お前ら揃ってんなー」


その声に後ろを振り返ると、片手をあげたトーマス_と、大きな口を開けて欠伸をするロバート、そして何故か額を押さえているジャスパー。


「ジャスパー…頭痛いの?」


思わずそう問いかけると、あー、とうめき声。


「え、ちょっと本当に大丈夫なの?」


ハンナも眉間にシワを寄せ…そして、何かに気がついたように、ああ…と呟いた。


「まあ、と、とりあえず座ったら?」


そんな感じで女子組の前に座った男子3人。流れでフランク姉弟とジャスパーが席に残ってくれることになり、私たちは3人の分もまとめて飲み物を入れに向かった。


「あ、ジャスパーだけど、頭痛っつーか…ロバートの蹴りを顔面にくらっちまって…」


「え!?」

「ロバートの?」


あの温和なロバートの、蹴り………? 想像出来ない!


「とは言っても喧嘩とかじゃなくてな、ただ…ロバートの寝起きがすこぶる悪くて」


「あ…」


どこかで似たような話を聞いた気がする。…どこもあるものなのだろう、そんな話は。


「起こそうとしたらジャスパーがケリを食らってクリーンヒット。しかも、アイツ覚えてないときた。…そんで、色々めんどくさいしまだロバート覚醒しきってなかったからなんも言ってないわけ。多分、ハンナはすべてを悟ったと思う」


「へえ~…」


「大変だね、…そっちも」


ぼそりと呟くと、トーマスはこちらを見て同情の視線を送ってきた。まあ、さすがにベルには蹴られなかったけどね。



「皆ミルクでいいかな?」


「良いんじゃね?」


「うん。まあ皆昨日普通に飲んでたから大丈夫だと思う」


アレルギーは確実にないだろう。チーズ入りのサンドイッチも食べていたし。それだとしたら乳製品は全部食べられないはずだ。そう、考えてミルクを入れようとした時だった。


ドンッ、と思い切り誰かにぶつかられた…と思った、のだが。


「すっ、すみませ…っ」

「痛っ! どこ見てんのよ!?」


………いや、貴女ですよね。よそ見してたの。私も思わず反射的に謝ってしまったけれども。


「おいおい。ぶつかってきたのそっちだっただろ」


「そうよ。本来謝るべきなのはそっちでしょ!」


私がフリーズしていると、トーマスとベルが代わりに言い返してくれた。


「何言ってるのかしらあ〜。アリッサにぶつかったのはそっちの黒髪お下げじゃない?」


黒髪お下げ…名前、あるんですけど。


そんなことより、この人、昨日見たな………思い出した。コルヴィスの高飛車な雰囲気の子だ。確か名前は_


「リア、そんな奴に言っても、無駄。理解出来ないんだから」


そうそう、リア・ファネルだ。茶髪ショートでライトブルーの瞳の、なんか私の苦手な雰囲気の人。それから、ファネルよりも落ち着いてるけど毒舌な黒髪ロングにライトグレーの瞳の人は…


「そうね、クロエの言う通りだわ。ごめんなさいねえ、理解出来ないのに捲し立てて?」


「まあ、今回は許してあげる。謝っているしね。…でもあなた達の無礼な態度、忘れないわよ」


クロエ・グレーバーズに、アリッサ・リプソン。アリッサは1年の中でも目立っていたからすぐに分かったのだ。

そして、ファネル、グレーバーズ、リプソンの3人は踵を返して去っていった。


「ぬあー! 何なのアイツら!? 無礼な態度? そっちだろーがーっ!!」


「…あの3人、コルヴィスだろ? 魔法界じゃ有名だ。特にあの金髪のヤツ。リプソン家の一人娘でデロデロに甘やかされて育ったっていうし。あとの2人はリプソン家の分家の娘だったはず。ファネルとグレーバーズ」


冷やかな態度でトーマスは話した。そんなに有名だったのか…あの人。


「あー、リプソン家のヤツか…確かうちのお父様と超仲悪いんだよね。ここの同期でその時から仲悪かったみたいなんだけどさ。お父様のエリートっぷりが面白くないみたいで。まあ、お父様の方がずっと優秀なんだけど!」


ベル…凄い自信だなあ………。きっと家族のことが大好きなんだろう。


「あー、やっぱりお前らも絡まれたかー」


聞き覚えのある声に振り向く…より前に、トーマスが言った。


「兄貴! それにジェイドさん!…っていうかお前らって?」


そう。兄貴、ことトーマスのお兄さんでキグヌスの5年生、アンドリューさんと同じく5年生でヘリオスのジェイドさんだった。


「ジェイドも1年の時コルヴィスの奴に絡まれてたんだよ。…そしたら完璧にぐうの音も出ないレベルで論破しちまってさ………で、」

「おいアンディ。なに4年も前の話を掘り返しているんだ。それより君たち、大丈夫か?」


アンドリューさんの話を容赦なくぶった切って、ジェイドさんさんが声をかけてくれる。


「はい。ベルやトムが言い返してくれたので」


「あれ、マリーネいつの間にオレのことトムって呼ぶように?」


「さ、さあ〜…」


…何となく遠慮してたから、とか、言えない言えない。


「おいおい、ジェイド何オレの話ぶった切っているんだよ!?」


「話が逸れそうだったからだ」


何となくこの2人、コントみたいになっている。…でも、さすがは4年の付き合い。本当に気心が知れている関係なんだなあ………。


「あ、ミルク! ハンナたち待ちくたびれちゃってるよね!」


「あっ」

「あー…」


コルヴィスに絡まれた上、先輩方が現れてすっかり忘れていた!!


「では先輩、私たち、これで失礼します!」


3人揃って頭を下げて、急いでミルクを入れてテーブルに戻った。

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