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アストラ学院の水魔法使い  作者: ゆきんこ
第2章-王立アストラ学院-
12/22

キグヌスのルーナ

トップバッターはジャスパー。私の斜め後ろで肩を揺らしたのが見えた。


「僕トップバッターかよ…」


ポツリとそうつぶやいて、壇上に上がる。


「さあ、杖で1回軽く触れて」


ボンッ


ジャスパーが杖で触れると、杖の木と似たような木で出来ている箒が現れた。


おおー、と歓声が上がる。


「今度は2回」


コンコン、と軽く杖で触れる。すると、杖の先から炎が飛び出し、それが水晶を包み込む。…そしてそれが晴れると、透明だった水晶がピュアホワイトに変化していた。


「うおおおお!!」


「ヘリオスを取ったぞ!」


歓声を上げたのは、向かって右側の長テーブルの寮。


「おめでとうございます、貴方はキグヌス寮です。…そして、素晴らしい炎魔法の才能をお持ちですね」


ローレンス先生が指を鳴らすと黒いとんがり帽子が現れた。


「こちらがとんがり帽子です」


巻かれたベルトの色は、爽やかな空色だ。


次に先生が制服のベストの胸ポケットのところに杖を当てると、銅の校章が現れた。


「最後に、とても大事なものです」


そう言って先生が水晶に杖を当ててブツブツ唱えると、どこからともなく銅でできた鍵が現れた。中心にはなにか宝石が光っている。


「これは後に配られる生徒手帳と、寮への扉を開くための重要なものです。そして同時に、ここの生徒の身分証明書の様なものでもあります。…大切にするのですよ」


「…はい!」


壇上から降りたジャスパーは、先ほど歓声を上げたキグヌス寮の長テーブルに付いた。


その何人か後に呼ばれたハンナ、ロバート・フランクはどちらもキグヌス寮で、ジャスパーとハイタッチをしていた。その何人か後のリア・ファネルは茶髪のショートヘアの美人だったが少々気が強そうだ。コルヴィスに決まった時も“当然ね”って感じだった。(向って1番左のコルヴィスのテーブルからは大歓声が上がっていた)

その次のダニエル・ゲンズブールはアクイラ寮。最後に深々とお辞儀をして、真面目そうだった。アクイラの右から2番目のテーブルからは拍手が巻き起こった。

ジャスミン・ハリセイはパヴォ寮。…気のせいだろうか、どこよりもパヴォ寮が光を放って見える。華やかだし、美男美女も揃ってるし………


なんてことを考えている間に、私の番が来た。


「マリーネ・インディーコ!」


深呼吸を繰り返し、心臓を落ち着けつつ壇上に上る。


「緊張しなくても大丈夫です。魔力を見ているだけですから。さあ、杖を」


コン、と杖を当てる。すると、杖と同じ木で出来た箒が飛び出した。


「次は、2回」


再び深呼吸する。そしてそっと2回、杖で水晶に触れた。


ザザザザアアッ、とものすごい勢いで水が溢れだし、何の前触れもなく消え去る。…そこには、ピュアホワイトに色を変えた水晶が。


「よっしゃあああ!!!」


「ルーナだぞ!」


私の所属する寮_キグヌス寮から大歓声が巻き起こる。


「貴女はキグヌス寮です。強い魔力ですね。強力な水魔法の使い手になるでしょう。使い方を誤らなければ素晴らしい魔法使いになりますよ」


「あ、ありがとうございます!!」


そして、ジャスパーの時と同じ空色のリボン(どうやら女子はリボン、男子はベルトの様だ)がついたとんがり帽子を受け取り、校章をつけてもらう。六芒星がデザインされていた。


そして、先生が水晶に杖を当てて唱え始めた。…あの“鍵”を取り出した。


鍵には校章と同じ六芒星がのデザインで、真ん中にはパールが埋め込まれている。


「鍵です。大切にしてくださいね。…さあ、キグヌスのテーブルへ行きなさい」


「ありがとうございました!」


ローレンス先生に一礼して、キグヌス寮のテーブルに小走りで向かった。


「マリーネも同じだったわね!」


「良かった。知らない人ばっかの寮だと心細かったから…」


「これで残るはトムとベルだけか」


女子2人で喜んでいると、ジャスパーがポツリとそう言った。


「ここまで来れば皆一緒がいいよねえ」


のんびりとした口調でロバートも言う。


「でもあの2人…悪運強そうだし。大丈夫じゃない?」


真顔でハンナがそんなことを言うものだから、思わず吹き出してしまった。


「イザベル・モルーガ!」


そんなことを話しているうちに、ベルの番が来た。


箒を出した後、ベルが2回水晶に触れる。すると、ベルとローレンス先生の周りをミルク色の風が包み込んだ。


「さすがは風精霊のルーナね…」


そんな声が、唐突に聞こえてきた。思わず振り向くと、その声を発した人ら人物とバッチリ目が合った。


「あら、貴女は確か…マリーネね。水精霊のルーナの」


プラチナブロンドの髪をハーフアップにしておでこも出しているこの人は…気品あふれる雰囲気だ。


「え、なぜ、私がルーナだと?」


「見ていればわかるわ。ルーナやヘリオスは寮分けの水晶のテスト_クリスタルテストの時属性魔法の威力がケタ違いなのよ…ヘリオスと言えば、そこの茶髪の彼は炎の精霊のヘリオスね」


「気が付かなかったです…あの、所で貴女は………?」


そう私が尋ねると、その人はまあ、と驚いた。


「私ったら自己紹介がまだだったわね。…私はハウラ・ネージュ。3年生よ。名乗るのが遅くなったこと、許してね?」


「い、いえいえっ!」


先輩_ハウラさんに謝られてしまったものだから、首をブンブン振って大丈夫だとアピールする。


「うふふ、ありがとう。…ああ、言い忘れていたけれど、私もこう見えてルーナなのよ。」


「え…っ?」


私が驚いていると、ハウラさんの肩に真っ白でふわふわな髪の精霊が乗った。


「彼女はキオーシア。雪の精霊よ」


じゃあ、つまりハウラさんは………


「…雪の精霊のルーナ」


そう私がつぶやくと、ハウラさんは手のひらから小さな雪の結晶を作り出した。


「魔法使いは基本的に、杖なしで魔法を使うのは不可能なの。でも、ルーナやヘリオスは自分を守護してくれている精霊の力を借りて、その精霊の属性の魔法なら杖なしで使えるのよ」


「へえ………」


「詳しい事はまた、クリスさん_6年生で氷の精霊のヘリオスの人が説明して下さると思うから」


ほら、彼女_ベルが来たわよ。と言いながら、ハウラさんは別の集団のところへ引っ込んでいった。













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