~響side~
前話を読んでからの方が良いと思います。
こちらも動画として上げてますので、良かったら↓
https://www.youtube.com/watch?v=5d2eLPpTvck
あ、別で何故かノリで録ってしまったうp主の生声朗読がありますが
そちらはスルーしてください。
ではどうぞ・・・
僕のご主人は僕を家族として扱ってくれた。それが何よりも嬉しかった。
僕の最初の記憶は箱の中だった。
なんでここにいるんだろう、親は何処に行ったんだろう。
なんで僕は一人なの?ねぇ、なんで?なんで?
そんな考えしか出てこなくて、とてもとても寂しかったのを覚えてる。
箱の外の世界なんて知らないし、出たら死ぬってわかってた。
出なくても死ぬんだろうなとは薄々わかっていたけど、それでも死にたくないと思ったんだ。
だって、僕の生まれた意味が、『ない』ものになってしまうから。
だから必死に叫んだ。弱っていて言葉にならなかったけど、誰かに届いてと思って、心の中で必死に叫んだ。
「僕はここだよ」って「ここにいるんだよ」って
精一杯叫んだ。たとえ直ぐに死ぬ運命だとわかっていても叫ばずにはいられなかった。
そんな僕を神様は見捨ててはいなかった。
叫びが通じたのかはわからないけど、雨の中僕を闇の底から救い上げてくれたのは、ご主人だった。
あの腕の温もりは絶対に忘れない。
僕を拾ってくれたご主人にはとっても感謝してる。
僕を家族として扱って、一緒に居てくれた。
仕事って言うので夜まで居なくなるのは寂しかったけど、その分一緒に遊んでくれたりもした。
僕が注射を打たれた後、一杯鳴いても怒ったりはしなかったよね。
その後にお肉も沢山くれたし、本当にご主人はずっと僕に優しかった。
でもねご主人、一つだけ言いたいことがあったんだよ?
仕事から帰って来たら、毎回僕の体に顔をうずめるあれ
程々にして欲しかったかな。
嫌じゃないんだけど、なんだか凄く、くすぐったかったよ。
そしてある日の夜…
僕は静かに目を覚ましたんだ。ご主人は相変わらずベットで幸せそうな顔で寝ていたけど。
それを見てちょっぴり幸せな気持ちになったんだけど、僕は何かに導かれるように玄関へと向かった。
そして扉を見つめていたら、わかってしまったんだ。
僕はもう長くないんだって。
なんでわかったかなんてのはわからないよ。ただ、そう感じたんだ。
動物の感ってやつなのかな。
悲しいけど、神様が与えてくれた時間の終わりが来たんだって。
幸せな時間の終わり。凄く悲しいけどご主人とのお別れの時なんだって。
朝起きて、僕のことを心配してくれたご主人を無視しちゃってごめんね。
でも少し考えたかったんだ。そして僕が出した答えは……
その日から三日間、僕はご主人に甘えられるだけ甘えたよ。
散歩にもいっぱい連れて行ってもらったし、ご飯も大好物のお肉を作って貰ったり、
本当に幸せな時間だった。
そして、僕の灯が消えてしまうと思った夜、いつもはそんなことしないんだけど、ご主人のベッドに潜り込んだ。
起こしてごめんよ、そして温かい声を掛けてくれてありがと。
最後はご主人の腕の温もりに包まれていきたかったんだ。
僕を拾ってくれた時の様に、あの温かな腕の中で…
おかげで恐怖は無かったんだよ?本当だからね?
僕の命はとても短くて、少ししか傍に居られなかったけど、本当に幸せだった。
僕が死んだ後、沢山泣いてくれたね、それだけ思ってくれて本当に嬉しかった。
生きてて良かったって心から思えたよ。
生きる意味をくれて有難う。
僕は、世界で一番の幸せ者だった。
ご主人の家族で居られて、本当に良かった。
これからも優しいご主人で居てね。
僕はずっとご主人の事待ってるから。
来るのはゆっくりで良いから、僕の事…忘れないでね。
ありがとう、大好きなご主人。
またいつか会おうね。
短いですが以上で終わりです。
お読み頂きありがとうございました。