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~私side~

動画としてうpしている朗読をこちらにそのまま載せました↓

https://www.youtube.com/watch?v=tg87Wta-QD8

読むだけなら結構直ぐですし。

ささくれだった心が癒されますように・・・。


ではどうぞ。

私は犬と一緒に暮らしてる。

猫も好きだけど、やっぱり犬の方が好き。

動物は飼育するとか飼うっていうけど、その言い方はあんまり好きじゃない。

飼うっていう言葉はさ、養うっていう意味だと思うけど、結局は自分より下に扱ってると思うんだ。


かと言って、動物なんだから同列に扱う方がおかしいと言う人もいると思う。

でもね、私は一緒に暮らしてるんだから、上も下もないと思うの。

動物たちだって一つの命なわけだし。

だから尊く扱わないと可愛そうだと思う。


なんて、こう言うとなんだか可笑しな子だと思われるかもね。

生命いのちとはなんだろうって言う哲学の話になっちゃうから、今はそんなことはおいといて。


私と犬の話ね。

一緒に暮らしてる犬、犬種は忠犬ハチ公でお馴染みの秋田犬

『名前はひびきって言うの。

日本で生まれた犬なんだから、日本っぽい名前が良いなと思って名付けたんだ。

ちゃんと『響』にした意味もあるんだよ?


人生ならぬ犬生いぬせいを通して、誰かの心に響く様な存在になって欲しいと思ったんだ。

その誰かって言うのは勿論私の事なんだけどね。


まぁ響との生活はもう終わってしまったんだけど……




響に出会ったのは突然だった。

私は大手の会社でコールセンターの仕事をしているんだけど、その仕事の帰り道。


天気予報では一日通して晴れだって言ってたのに、夕方から曇って来て夜には雨が降ってきた。

傘を持って来てなかった私は走って家に向かってたんだけど、その途中で響と出会った。


家に向かう途中の小さな橋の下で、鳴き声は聞こえなかったんだけど、

なんだか橋の下をみなきゃって突然思ってね。なんでそう思ったのかは今でも不思議。


そして橋の下を見たら、まだ子犬だった響が捨てられてたの。

悲しい事に動物を捨てる人ってまだまだ沢山居るんだよね…

私が小さい時にもたまにあったよ、その時は家が動物駄目だったから諦めたけど、悲しかったな。



でも今は大丈夫だと思って、響を家に連れて帰った。

お世話の仕方なんて全く分からなかったからネットで調べて、

自分なりに精一杯、あんまり上手じゃなかったけど一生懸命頑張った。


雨で気温が下がってた所為せいかわからないけど、響はとても弱ってたの。

子犬のまま捨てられてたから、栄養もちゃんと取れてなかっただろうし、寂しかっただろうね。

応急手当じゃないけど、なるべく部屋を暖かくして、お腹に優しい物を作ってあげたり。


休みの日には病院に連れて行った。

極度の衰弱だって診断された。

私があそこで見つけなかったら死んでただろうって。

それを聞いて凄くホッとした。響を見つけて良かったって。

一つの命を救えたことに感謝したよ。

お医者様は、安静にして栄養のある物を少しづつ与えたら良くなるって、

そして、体調が良くなったらまたおいでって言ってくれた。

来たら予防注射とかもしてくれるんだって。

だから今は響が元気になるまでは私が一緒に居てあげるね。



それから響との生活が始まった。


最初はやっぱり慣れない事ばっかりだったけど、私なりに考えて行動したよ。

響もそれがわかってくれたのか、最初は怯えてばかりだったけど、今では凄く懐いてくれた。


良くなってからはお医者様の所に行って、響は嫌がってたけど響の為なんだって言って注射してもらった。

嫌がる響に無理やりするのは心が痛んだけど、それでもしとかなきゃって思うから。

少しでも長く一緒に居たかった。



注射をした後、数日は機嫌悪かったんだけど、私の得意料理のローストビーフを毎日作ってあげたら、みるみる機嫌がよくなって思わず笑ったな。

笑ったら響に吠えられたけど。あ、ローストビーフの味付けは勿論犬用にしてあるからね。


…今思うと響との生活はどれも楽しかったな。

私は仕事で昼間居られなかったけど、夜には一緒に散歩もするし、休みの日には外で一緒に遊んだりもしたっけ。

響が居たあの時間はとってもかけがえのない物だったんだなって…


そして響と一緒に何年も暮らしたある日の事。


いつも通りに、私が起きたら一緒に起きて来る筈の響が来なかった。

響の寝床は私のベッドの直ぐ傍にあるんだけど、そこにも居なかった。


私は不安になって響を探した、そしたら玄関扉に向かって座っている響を見つけたの。


「どうしたの響?」


そう声をかけるも返事はなかった。


「ご飯作るから一緒に食べよ?」


と言うと耳が少しピクッと動いたけど、体は動かなかった。


「ご飯作って待ってるからね」


このままじゃ、絶対動かないと分思った私は、取りあえずご飯を作ることにした。


響どうしたんだろう?と思いながらもご飯を作って、改めて響を呼ぶ。

すると、何事もなかったかのように響は私の所に来て、ごはんー、といつも通りにねだってきた。

私の思い過ごしかな?と思ってその時は気にしなかったけど…


次の日から響は私に凄く甘えてくるようになった。

何処に行くにも着いて来て、響が子犬だったころを思い出して懐かしさを感じながら、

その甘えに答えていっぱい撫でてやったり、沢山遊んだり、写真も撮れるだけ撮った。


そんな響の甘えた日々が三日程続いたある夜。


響は、夜中に私のベッドに潜り込んできた。


「ん、んぅ?どうしたの?」


「クゥ~ン」


「そう、じゃあ久しぶりに一緒に寝よっか」


「ワン!」


眠い目を擦り、睡魔と戦いつつ少しだけ響と会話した後、私は響を抱いて一緒に眠った。



―――――次の日の朝、響は起きてはこなかった。


私が呼びかけても鳴く事もなく、揺すっても起きなかった。

ただ、響の表情は凄く安らかだった。

自分の最後が近いってわかってたから最後にあんなに甘えて来たのかなって、今は思ってる。




ねぇ響、私は良い主人だったかな?


私と居られて幸せだった?仕事で疲れて帰った時に響に強く当たっちゃった事もあったけど、それでも私に愛想尽かすこともなく傍にいてくれたね。

本当にありがとう。私は響に出会えてとても幸せだったよ。別れは突然だったけど、それでも最後に幸せな顔を見せてくれてありがとう。


大好きだよ響。



私は響のお墓の前で別れの挨拶をした。


またねって言葉を最後に残して。

次の話は響sideになります。

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