↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
9/64

生徒会長の憂鬱

 城嶋明は困惑していた。

 今日の朝に届いた事件のせいである。

(坂東達が大怪我って......誰がやったんだ......?)

 昨日、学校で問題の不良グループが何者かに殴り倒されていたという。

(ケガの程度から相手は相当の"力"の持ち主らしいが、そんな人物が何故こんなことを......?)

 報告によれば、どうやら坂東達は校舎裏で、一撃で倒されたらしい。


 妙な事件である。

 まず、坂東達不良は、自分より弱い者しか狙わないはずだ。

 

 先日、黒木さんから校舎裏で彼らが虐めを行い、生徒に怪我をさせたという報告を受けた。

(翌日に同じ場所で事件が起きるなんて......。迂闊だった)

 以前から坂東達のグループには目をつけてはいたのだが、最近は彼らが悪行を働いたという報告は入っていなかったため油断していた。


 黒木さんからの報告を受けて、坂東達のグループを呼び出し、聞き取りを行うことが決定されたが、生憎彼らは全員欠席していた。


(まさか昨日彼らは学校に来たのか?授業も休んでどうして?)

 愚かにもまた虐めのターゲットを探そうとしていたのだろうか。

 そこまで彼らが危険な奴らだとは、生徒会は認識していなかった。


(坂東達のグループへのマークの甘さは後から悔いよう。問題は今回の事件だ)


 先日の報告では、黒木さんが近づいただけで彼らは逃げ出したという。

 そのような人間が、自分より強い人間と戦うことがあるだろうか。

 

 それに犯人は一撃で彼らを倒したという。

 一撃で全員を倒した、という話からは、別の不良グループとの抗争という線は考え難い。

 不良になるような人間で、それほどの"力"を持つことはあり得ないと考えられるからだ。

 そしてケガの程度は人それぞれ殴られどころの違いはあれど、どれも同程度の"力"によるものらしい。

 ここから単独犯によるものと考えられる。

 まだ謎がある。

 不良達のワイシャツは血まみれであったというのだ。

 これは彼ら自身の血ではなく、おそらく返り血であると考えられている。


 ここから考えられることは......、城嶋は推理する。

(校舎裏で坂東達は何者かを虐めていた。返り血の量から言ってかなり激しく。だがそれに気を取られている間にやってきた別の人間に一撃で倒された)

 こう考えるのが一番しっくりくる。

 

 だが疑問は残る。

 まずは、それほどケガを負った人間がなぜ名乗り出ないのか。

 返り血の量から相当激しい虐めであったのだろう。命の危機を感じるほどのものだったはずだ。

 なのに何故、その被害の報告が出ていない。

 

 もう一つ、こちらの方が大きな問題なのだが、一体犯人は誰なのか、ということだ。

 学校外部の人間であることも考えられるが、それを考えると犯人候補は絞れない。

 一旦内部の人間であるとする。

 そうなると、これほどの"力"を持つ者は......。

(生徒会の誰かか?)

 いや、と城嶋は首を振る。

 彼らがそのような行動を起こすことは考え難い。

 だが"力"の強さから明らかにそのレベルの人間の反抗である。

 残念ではあるが、その可能性も考慮せねばなるまい。

(まずやるべきは生徒会メンバーからの聞き取りか......。嫌な仕事だな......)

 だがやらないわけにはいかない。

 この学校の正義と秩序のためだ。きっと彼らも協力してくれるだろう。




「明くん! 暗い顔してどーしちゃったの!?」

 

 昼食時、萌がクラスに来た。


「悩みがあるなら相談してね。きっと力になれるから」

 

 ホントにありがたい。


「ありがとう、萌。でも大丈夫」

「もしかして、昨日起きた事件のこと?」

 

 お見通しか。


「あぁ」

 

 正直に返事をする。


「あの事件か......。そうね、対応、しっかり考えないとね」

 

 萌も生徒会のメンバーだ。

 放課後、この事件の聞き取りを彼女からもしなければならない。

(萌がそんなことするわけはないけど......)

 疑っているとは思われたくないが、やらねばならないことだ。仕方ない。

 先を考えると、また少し、暗くなる。


「でも今は、昼ご飯を食べよ! ほら。卵焼き一つあげる!」

 

 そう言って萌は自分の弁当箱から卵焼きを一つ、城嶋の弁当の白米の上に乗せた。

 卵焼きは甘く、憂鬱な気分を吹き飛ばしてくれた。


「美味しいよ。いつもありがとな」

「それは言わない約束でしょ!」

 

 萌はそうおどけて言って、笑ってみせた。

(そうだな、暗くなっていても仕方ない。今は、今できることをしよう)


 城嶋は昼食を食べ終わると、まずは目の前、次の授業への準備を始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。