無双
「なっ......どういうことだよ......」
坂東の顔が見る見るうちに青ざめていった。
それもそのはずだ。
先ほどまで身動き一つ取らない、死体のような人間だったのだ。
それが一撃でヤスを倒し、こうして立ち上がっている。
「ヤス! どうしたんだよぉ!」
「レオ兄貴! どうすりゃ良いんスか!」
舎弟達が明らかに動揺している。
当然だ。こんなこと、あるはずがない。
「うぎゃあ!」
また声が挙がる。
見れば、ノリが地面に転がっていた。
(あいつ、俺らの中じゃ2番目に強ぇぇんだぞ......!)
どうなっている......。坂東が迷っている間にもまた一つ悲鳴があがる。
「レオ兄貴! どうすりゃいいんすか! レオあに......うぐっ!!」
アツシが目の前で殴り倒された。
壊滅だ。
(もう俺しか残ってないじゃないか......!)
そして、アツシを倒したそいつは、ゆっくりとこちらに目を向けてきた。
やるしかねぇ。坂東は決意を固めた。
「坂東組の組長としての意地、見せてやんよぉぉぉ!!!」
専用の竹刀を取り出し、構える。
強度はモノホンには敵わないが、リーチなら引けを取らない。
相手の胸目がけて真っすぐと突いた。
しかし竹刀はあっさりと掴まれ、物凄い力で引っ張られる。
坂東とそいつの距離は急速に縮まっていった。
縮まる距離の中、怪力で自分を引っ張る男の顔が目に映る。
そいつは口元に歪んだ笑みを浮かべながら、右腕を振りかぶっていた。
(あぁ......。終わったな)
あごに強い衝撃が走る。
体が重力から解放される。
視界には転がっている舎弟達の姿が映った。
(皆......ワリィ......)
坂東レオの意識はそこで途絶えた。
「クッ......ククク......」
太一から笑い声が漏れた。
「ククク......ハハッ」
遂に、今まで欲しがり続けた物が手に入ったのだ。これが笑わずにいられるものか。
「ハハハハ、ヒャーハッハッハハ!!!」
校舎裏に笑い声が響き渡った。
――"力"を手に入れた。
それではここから始めよう。
世界への、学内階級<<スクールカースト>>への復讐を。




