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生徒会長の決断

 いよいよクライマックスが始まります。

 これから主人公の前に数々の苦難が立ちふさがりますが、どうか最後まで読んでいただけたらと思います。

 それでは本編開始!



 城嶋明は今日も仕事が山積みであった。

(最近サッカー部に方に顔を出せて無いな......)

 もうすぐ秋が終わり、冬が来る。サッカーのシーズンが終わってしまうため、その前にしっかり練習をしておきたいところであるが、現在の生徒会に溜まっている仕事を考えると、まだしばらくはそれが叶いそうにない。

 

 坂東レオの一味に関する事件と、そして何より赤城太一の生徒会長への立候補。

 この二つの事件に対する対処は、生徒会でも全力で対応策を考えているが中々話は進まなかった。

 それも無理もない。これまでの前例がない事件が二つも続いているのである。

 まずは坂東レオの一味について。

 当初は赤城太一に対するものと、その前日に起きた虐めの2件を中心に調べていたが、彼らが起こした事件はそれだけでは無かった。

 もっと多数の虐めが、彼らの手によって行われてきたことが明らかになってきた。

(まさか彼らがそこまでの悪党だったとは......)

 また、噂によればオカルト研究会の部員、白石美樹の不登校にも関与しているということである。自分たちが気づいていなかっただけで、予想よりもずっと事態は深刻だった。


 そして、赤城太一の生徒会長への立候補。

 放送があった当初は、何かの悪戯かと思ったほどに唐突であったそれは、どうやら本気であるようだった。


「太一君か~。そんなことやる人には見えなかったけどな。でも確かにここのところ教室にはきてないわね」


 赤城太一と同じクラスである萌に話を聞いたところ、彼女もあの放送には衝撃を受けていたようだ。


「でも考えてみると坂東君達の事件があった翌日からちょっと様子が変だったかも。体育でサッカーをやることがあったんだけど、今までに比べて格段に上手くなってたけど、なんかオタクにめっちゃキレてたみたいだしね」


 同じサッカー部の和泉にもその一件について聞いてみたところ、得点を決めるなどの活躍をしていたが、マークに対して露骨にイライラしてみせたり、周りに怒鳴ったりであまり良い態度ではないようだった。


「試合が終わったらオタクに絡むし、人が変わったみたいだったな。」


 赤城太一はそれ以前は静かで大人しい、悪く言えば存在感が薄い人間であったというが、坂東達との一件からあの放送があるまでの期間は、高圧的な印象を与える態度であったらしい。

 やはり坂東達との事件をきっかけに赤城太一の身に何かが起きたと考えるのが自然であろう。

 坂東達のケガの具合から考えれば、その時に彼が尋常ではないほどの"力"を手にしたと思われる。

(何故そんなタイミングで、あれほど強大な"力"を手にしたんだ?)

 "力"は人との繋がりによって手に入れるものである。

 虐められている状況であれほど強大な絆を手に入れるとはどうしても思えなかったが、その点は今考えても結論は出ない。

(問題はこれからどうするかだ)

 赤城太一による宣戦布告以来、彼へ挑戦する者が度々現れ、その決闘の様子は全校生に公開されている。その為、決闘の観戦が生徒の間では娯楽となっていた。

 校内でもいまや赤城太一の決闘は大人気であり、対戦相手が公開されると、その勝敗を巡って賭け事も行われているらしい。

(これ自体も中々の問題なんだが......)

 ともかくも、赤城太一達の活動は、案外校内では好意的に受け止められていた。


 しかし、このまま放っておくわけにもいかない。

 

 彼らが使用している部室はオカルト研究会に与えられたものであり、それ以外の目的で使われることは原則禁止されている。現在は実質オカルト研究会は休部状態であり、誰も使っていない訳であるが、その部室の今後の使用用途については現在生徒会で話し合いが行われており、近日中にその用途を決める予定である。その為、このまま彼らの不正な利用に目をつぶり続けることは出来ない。


 そして何より、彼の目的は現在自分が就いている生徒会長の座である。

 何時かは確実に彼と直接戦い、決着を付けねばならない。

(生徒会長なんてこんな面倒な役を何でやりたがるんだか......)

 実際生徒会長の仕事は重い責任を背負い、長時間拘束されて生徒に奉仕するようなものだ。自分の部活に出る時間さえ取れないような大変なものであり、やりがいが無くてはやっていけないキツイ仕事であるため、それをやりたがる赤城太一の心情は分からなかった。

 

 だが、立候補があった以上は選挙戦を行うのが筋だ。

 赤城太一が生徒会長としてやっていけるかには不安が残るが、この世界は"力"があるものが上に立つシステムになっている。

 彼が自分より"力"が本当に上なのであれば会長の座を譲る、それがルールだ。そのルールに従う他ないだろう。

 後はいつ選挙戦を行うかそこが問題だ。

(先延ばしにしてもどうにもならないしな)

 赤城太一はこれまで小倉や遠野など、数多くの者を倒している。最近はあの佐々木すらも倒したらしい。

 そんな相手と戦うとなると、覚悟を決めて臨まねばなるまい。

 だが、だからといってこのまま放っておくわけにもいかない。

 今こそが、覚悟を決めるべき時だ。

(やるしかないか......)


 城嶋明は決意を固めた。

 生徒会の人間にも自分の決意と日程を知らせた。

 

 赤城太一に宛てて一通の紙を書く。

 それは生徒会長戦に受けて立つこと、そしてそれを今週の金曜日に行うことを伝えるものだ。


(さて......)

 その紙を旧オカルト研究会前の箱に入れ、城嶋明は生徒会室へと引き返す。

(赤城太一、君が手に入れた"力"を見せてもらおうじゃないか)

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