最強の挑戦者 -1-
本格的な訓練が開始されると、革命部の活動スタイルは大きく変わった。
基本的に週三回、一日おきに決闘場で訓練し、他の日は部室でゆっくりすることとなった。
部室を開けている間に挑戦者が現れた場合の対策をたてる必要が出てきた。
「イッチに挑戦したいヤツおったら部室前の箱に名前と希望の日程書を書いた紙を入れておいてもらおうや」
小木の提案により、訓練で部室を開ける際は、部室前に受付用の箱と応募用紙を置くこととなった。
これにより太一達は気軽に部室外で活動することが可能になった。
それから何度かリア充達との決闘を経て(勿論太一はその全ての勝負に勝利した)、また訓練で少しづつではあるが確かに強くなったところで、その挑戦者は現れた。
「疲れた......」
その日は決闘場で訓練を行う日であった。
いつも通り防御訓練と攻撃訓練を終え、クタクタの状態で太一は部室へと戻る。
「お疲れさまや、まあ中級レベルの訓練にも徐々に対応できるようになっとるし順調やな」
小木が部室に戻り太一に声を掛けた。
「これなら生徒会長打倒もいけそうやな」
「当たり前だろ。勝てると思ってるからこんなことやってんだから」
生徒会長を倒しこの学校の序列や制度を破壊する。
そしてこの憎らしい世界を、学内階級を自分の望む物に作り替える。それが太一の復讐である。
生徒会長を倒す、それは実現が困難な夢ではなく、達成しなければならない課題であった。
その達成する可能性を少しでも高める為にこうして活動しているのだ。
"生徒会長を倒せそう"レベルでは困る。"生徒会長を確実に倒せるレベル"でないといけないのだ。
「太一、挑戦者がいるみたいよ」
黒木は受付箱の中から応募用紙を取り出し太一に渡した。
「最近多いな。まあいいけど」
太一は用紙を受け取り、目を通す。
氏名 佐々木武蔵
希望日時 明日
目的 自分を鍛えるため。
その他 模造刀の使用を許可していただきたい。
一通り読み終わり、太一はため息をついた。
「なんだよこいつ、模造刀使うって決闘のルールから外れてるじゃん......」
太一の目的である生徒会長戦は武器の持ち込みが認められていない。
これまでの戦いもそのルールに従って行われてきたため、まさか武器を持ち込みたいなどと言うものが出てくるとは思ってもいなかった。
「確かに決闘では反則になるわね。それなら今回は断る?」
黒木から尋ねられる。
しかし太一は迷っていた。
これまでの戦いは、当初こそ苦戦していたものの、最近はあまり苦戦せずとも相手を倒せるようになっていた。幾度の戦闘経験から、太一は"力"だけでなく戦い方でもそこらのリア充を圧倒出来るようになっていたのだった。
そのため、多少の武器の持ち込み程度のハンデは付けたほうが会長戦のことを考えれば良いのかもしれない、そう考えた。
「受けた方がええんちゃう? 多分良い経験になると思うで」
小木が応募用紙を見てそう提案した。
「何で? 何か知ってんの?」
「多分この武蔵ニキって中学の頃"剣闘"の大会で全国2位とってるで」
――"剣闘"
これは世界が変化して以降に新しく生まれたスポーツである。
一般的な決闘では武器の持ち込みが禁止されているが、この剣闘では模造刀(ゴム製で安全性は充分に考慮されている)を用いて一対一で勝負する。
模造刀が持ち込み可能なことを除いてはルールは決闘と同じである。
比較的メジャーなスポーツであり、とりわけ日本は世界有数の剣闘王国であるため、競技人口は50万人を優に超えている。
「それは凄いわね。でもこの高校の剣闘部ってそんな強かったかしら? 全国大会いった人がいるならもっと有名でもおかしくないと思うけど、聞いたこと無かったわ」
「そりゃ当然や。今武蔵ニキは剣闘部に入っとらんからな」
「はぁ? 何でだよ」
思わず突っ込んでしまう。
剣闘部で全国2位という恵まれた"力"を持ちながら高校では部活に入っていないなんて理解できなかった。
それに挑んでくる目的には自分を鍛える為とあり、模造刀も使いたいと書いてある。どう考えても剣闘の訓練を望んでいるはずだ。それなのに何故?
「ワイも詳しいことは知らんで。でも元全国2位なんやし負けてもデメリットないみたいやし、良い訓練になるんちゃう?」
小木の言葉はもっともであった。
強敵相手の戦いは今後を見据えれば貴重な経験となるであろう。
それに金品の要求も無い、まさにうってつけの対戦相手に思えた。
「分かった。挑戦を受けよう」
こうして始めての、武器が持ち込まれての戦いが行われることとなった。
ようやくルビが振れるようになったんだ!(*^◯^*)




