革命部活動報告 赤城太一訓練計画 ー2ー
ちなみにプロローグで出てきた遠野は勉強がめっちゃ出来る秀才系リア充です。
試験問題の傾向から対策をたてるのがめっちゃ上手いです。
太一もそこそこ苦戦しました。
決闘場に着くと、小木は防御訓練用と言っていた機材のセッティングをしていた。
「来たかイッチ。それじゃあとりあえずそこらへんに立っといて」
太一が来たことに気付くと、小木は機材の向かい側に十分な距離を取って立つよう指示した。
太一が指示に従い言われた場所に立つと小木から次の指示が飛んだ。
「そんじゃイッチ、構えるんや。これからイッチをこのマシーンを使って攻撃するから、しっかり躱すなりガードするなりするんやで。」
言われた通り構えを取ると、それを確認した小木が手元のボタンを押した。
ビュッという低い音と共に、白い物が接近してきた。
(これ当たったら痛い!)
太一は体を半回転させ何とか躱す。体のすぐ近くを通り抜けたことを肌が感じた。
バン、という音と共に白い物体は後ろの壁にぶつかった。
よく見ると、それは野球で使われるボールであった。
どうやらこの機材、ベースはピッチングマシーンのようだ。
(こいつ何処でこんなもの手に入れたんだよ......)
「何よそ見しとるんやイッチ。実戦でそんな暇はないで」
小木の声で前を向くとすでに白球が発射されていた。
(避けきれない!)
太一の右足に球が直撃する。
鈍い衝撃が走った。
「小木、これ結構痛いんだけど」
太一は小木に抗議する。
「何当たり前のこと言ってるんや。訓練なんやからそら痛いのは当たり前やろ」
「そりゃそうだけどもっと安全な方法はないのかよ」
小木はため息をつき、呆れたような顔で太一に言う。
「イッチ、人間ってのはな、痛み無くして成長することは出来ないんや。辛さや苦しみを前にして、始めて人は変われるんやで」
小木はそこまで話し終えると、ニッコリと笑い太一に非情な宣告をした。
「だから痛いと思うけど頑張るんやで。ほら構えな、どんどんいくで~」
小木は再びボタンを押した。
次々と太一の元に白球が飛んでくる。
回避のモーションを大きくしすぎると、次に飛んでくる球を避けきれない。
手で防ぐのはは有効な手段ではあるが、連続して行うと痛みがひどいことになる。
必要最低限の動きで攻撃を躱し、回避後に体制を素早く立て直し、次の攻撃にすぐ備える。
それがこの訓練では求められた。
何度もボールがぶつかり、なかなかのダメージを受けたものの徐々に太一はコツを掴み始めた。
繰り返される攻撃から回避モーションの最適化を行い、余裕を産み出す。
確かに実戦に通じそうである。
数々の失敗と試行錯誤の末、遂に太一は三球連続での回避に成功した。
「どんなもんだ!」
喜びのあまりつい叫び声をあげてしまう。
「おめでとう太一」
「やるやんイッチ」
二人からも感心され、太一の気分は最高潮であった。
しかし、喜ぶ太一をみて小木はニヤリと笑い、またしても太一を絶望へと叩き落した。
「ほな次からは緩急つけて、変化球も織り交ぜてくで」
無慈悲な特訓はまだ続いた。
「一旦休憩を入れましょう」
数十分にわたる訓練の末、ついに黒木がストップをかけた。
「せやな。イッチバテバテやし、このまま続けても意味なさそうやな」
小木の声と共に、ようやく太一は訓練から解放された。
変化球と緩急が解禁されて以降の訓練は地獄であった。
まずはスローボールの後の速球。回避のタイミングが掴めず、無様に直撃した。
そして変化球。避けきったと思ったボールが変化し、結局当たってしまう。
ガードしようと思っても予測した軌道から逸れていく。
太一は変化球の回転を見極めることは出来ないので、自分の元に変化しても当たらないように回避の動きを大きくし
た。
しかしそれは罠だった。
回避動作が大きくなれば体制を立て直すために必要な時間が長くなる。
つまり隙が大きくなるということだ。
小木はその隙を見逃さず、的確に直球を入れてくる。
体制を立て直しきれない太一はことごとくその直球に捕まった。
ダメージと疲労が蓄積すると動きが鈍る。訓練の終盤には、ほとんどの球が直撃した。
それによりダメージが更に蓄積し、また球が当たる。負のスパイラルが完成していた。
「お疲れ太一。これ使って」
疲労で横になる太一に黒木が濡れタオルとスポーツドリンクを持ってきた。
太一はそれらを受け取るものの、疲れ果てそれらを使う気力も無かった。
「......疲れた」
大の字で天を仰ぐ。秋らしい綺麗な青空だ。
「......仕方ないわね」
横で黒木が呟くのが聞こえた。
同時に、額に何か冷たい物が乗せられる。
「汗拭いてあげるから、動かないでね」
そう言うと黒木は太一の顔を濡れタオルで優しく拭き始めた。
(やべぇ......これ気持ちいい.......)
訓練で熱くなった体に濡れタオルはとても心地よかった。
しばしの間、太一はその快楽に身を委ねた。
「イッチ随分羨ましいシチュエーションやな~。そこ変わって欲しいわホンマ」
小木の一言でウトウトしていた意識が覚醒した。
見ると、小木はニヤニヤしながらこちらを眺めていた。
「何見てんだよ。こっち見るなよ」
太一はそう言って起き上がった。
だいぶ疲れは回復していた。
(やっぱ"力"って凄いな......)
改めてそのことを確認していると小木から真面目な声で指示が飛んできた。
「よっしゃ、イッチも疲れとれたみたいやね。なら次の訓練いくで」
太一はスポーツドリンクを一口飲み次の攻撃訓練に備えた。




