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革命部活動報告 不在


「小木君、今日もいないのね」


 小木が部室に訪れなくなってから二日目、黒木がポツリと呟いた。


「彼が居ないと随分静かなものね」


 太一もその意見には同意であった。

 小木がいない部室は、太一と黒木のどちらが話すわけでもなく、静かに時が流れていた。



「まあこういうのも良いんじゃない?あいついつもうるさいし」

「そうね」


 そう言って黒木は本に視線を戻した。

 太一も読みかけのバトル漫画に目を戻す。

 そして再び部室は静寂に包まれる。

 ページを捲る音が、やけに大きく聞こえた。


(一人居ないだけでこんなに静かになるものなんだな)

 太一はいつもと違う部の雰囲気に驚いていた。

 小木がいるときは静かな時間が恋しくなるほどに、賑やかな部室であった。

 しかしそれは小木だけが話していたわけではない。

 太一も、そして黒木も話していた。太一と黒木の二人で会話することも勿論あった。

 それなのに今は黒木との会話は全くと言っていいほど行われない。

 先程のように、話すとしても2、3言だけだ。それ以上会話は続かず、すぐにまた静寂に包まれる。

 

 そして会話もなくただ黙々と目の前の本を読むというのは、太一には少々退屈であった。

(おかしいな......前までは本を読んでいれば時間は過ぎていたのに......)

 革命部が始まった当初は、買ったばかりであった本を読めば一日の活動は終わっていた。

 しかし、徐々に本を読むだけでは満足出来なくなってきた。他の何か、会話なり小木の馬鹿げた行動なり、何らかの刺激を欲


するようになっていた。

 

 太一は本から目を離し、時計を見る。

 先程の会話から三十分程しか経過していなかった。

 (全然時間経ってねぇじゃん......)

 買い置きのお菓子に手をつける。何度も食べてきた味だ。直ぐに飽きた。

 黒木の方に視線を移す。いつものように、真剣な眼差しでオカルト本を読んでいた。

 しかしその瞳からは、どこか悲しさが感じられた。

 ついじっと見つめていると、見られていることに黒木が気づき、目を合わせてきた。


「どうしたの?」

「いや別に、何でも」


 また会話はあっさりと終わる。

 太一はまともに読んでもいない本に視線を戻す。

 集中して読もうとするも、どうしてもすぐに飽きてしまう。

(バトル物の本ばっかりなのが駄目なのか......)

 もっと別のジャンルの本を買えば暇を潰せるかもしれない。そんなことを考えている内に、太一の意識は薄れていった。

 





「太一、起きて。そろそろ下校時刻よ」


 黒木の声で太一は目を開ける。

 どうやら読書の最中に寝てしまっていたようだ。

 肩には太一が部室に置いていた防寒用のコートがかけられていた。


「コーヒー淹れたから、飲み終わったら帰りましょう」


 黒木はコーヒーを二カップ持って太一の隣に座った。

 太一はカップを受け取ると、少量のコーヒーを口に流し込んだ。

 苦い。しかし、熱くて美味しい。

 二人は特に何を話すというわけでもなく、静かにコーヒーを飲んだ。

 太一コーヒーを飲み終えると、彼女に別れを告げる。


「それじゃあまた明日」

「ええ、また明日」


 そのまま一人、太一は家路へ就いた。


(今日は何も無く終わったな......)

 寝ていたこともあってか、いつもより一日がずっと薄く、あっけないものに感じた。






「完成したで...イッチの訓練用のハイテクマシーンや......」


 その翌日、小木は何やら大きな機材を二つ従えて部室へ帰ってきた。


「小木君、大丈夫? 目の下に凄いクマ出来てるし、物凄く疲れているようだけど」


 黒木が小木を心配して声を掛ける。

 しかしそれ以上に、太一には小木の持ってきた2つの機材に興味を惹かれた。


「そんでお前が持ってきたのは何なんだよ?」


「よくぞ聞いてくれたなイッチ!」


 小木の顔からは疲労が見て取れたが、自分の発明を発表する姿はどこか楽しげであった。


「この二つはそれぞれ攻撃訓練用と防御訓練用に分かれてるんや。いや~ホンマ作るの大変だったで」

「まぁ百聞は一見に如かずや。とりあえず決闘場行って試してみようや」


 そう言うと小木は一足先に決闘場へと向かった。

 太一も黒木と共に小木を追いかけ、部室を後にした。


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