革命部活動報告 赤城太一訓練計画 -1-
黒木との買い物から数日、なかなか挑戦者が現れない日が続いた。
バトル物の漫画を多く買ったため、太一と小木が読む本に困る、ということは無くなった。
しかし、挑戦者が居ない日々は、穏やかではあるが退屈なものだ。
(早く誰か来ねぇかなぁ......)
リア充達との戦闘経験、それは生徒会長を倒すためには欠かすことのできない物である。
先日の買い物では不良達と戦ったが、あれは集団戦であるため、決闘とは少々勝手が違った。
そのため、早く決闘形式の、一対一での戦いをしたかった。
「太一、暇そうにしているわね。先日買った本は読み終わってしまったの?」
黒木から声を掛けられる。先日の一件以来、下の名前で呼ばれるようになった。
名前を呼ばれる度、小木か興味ありげな目で見てくるが、太一はずっと無視している。
「まだ読み終わってない。だけど確かに暇だな。最近まともに決闘してないから試合勘が鈍りそうだ」
「イッチも言うようになったンゴね~。もう立派なソルジャーやね」
小木が口を挿んでくる。
茶化されているような気がして、少し腹が立った。
「確かにここのところあまり決闘が出来ていないわね。どうにかしたいけれど私達では訓練相手にもならないし、困ったわね」
黒木が頭を抱える。
以前の必殺技の開発の際、小木と黒木を相手にして訓練してみたものの、全く相手にならなかった。
挑戦者がいないときどう訓練するか、それは以前からの課題である。
「う~ん、こりゃイッチをどう訓練すればええか、考えた方が良さそうやね」
小木は太一の気持ちを読み取ったのか、的を得た発言をした。
「これまで対戦してきた相手に頼むとかどうかしら?」
黒木が提案する。
これまで対戦してきた相手は小倉、くるみ、そしてくるみと対戦した数日後に戦った遠野の3人である。
くるみ以外の2人ならば頼み込めば相手をしてくれそうではあるが......。
「小倉も遠野もあんまり頼りたくないんだよな。他のことまで色々と口出ししてきそうだし」
二人とも面倒見は良さそうであり、現に小倉からは"特殊能力<<ギフト>>"について説明してもらったわけであるが、これ以上何か頼むとこの部活動のことまで口出されそうであった。
「ならくるみちゃんに頼めばええやん」
「いやあいつは...」
太一はくるみに苦手意識を持っていた。
勝負が終わった後はノーサイドとは言うが、出会ったときから情報戦を仕掛けてくる人間に頼みたくは無かったし、仮に頼んでも聞いてはくれないであろう。
「くるみちゃんは太一から金を巻き上げられなかったわけだし、別の金策で忙しいんじゃないかしら」
どうやら黒木はくるみの話を信じているようだ。
「でもそうなると困るわね。どうやら誰も頼める相手はいなそうね」
そう言って黒木は再び頭を抱えた。
太一も何か策が無いかと考える。
しかし、太一の人脈にはまともに戦えるリア充なんて居ないし、そもそも居たらこのような活動をしていない。
かと言って訓練しないという選択肢を取ることは極力避けたい。
詰んでいた。
太一も頭を抱える。
賞金や挑発的な煽り文句を用意したため、挑戦者は山ほど溢れ、対戦相手には困らないと思っていた。
それがまさかここまで人が来ないとは......。
「二人共随分とお悩みのようやな。ここはワイが一肌脱ぐとこやね」
なにやら小木が自信に満ちた顔で言ってきた。
どうせ下らない提案だと太一はスルーしようとするが、黒木がその言葉に食いついた。
「何か策があるの? 小木君」
「ちょっとした考えがあるんやが、今すぐに出来ることではないんや。少し時間をくれんか?」
「どうせ大したことじゃないんだろ。そんなに引っ張るなよ。」
太一は小木が考えていることを言うように急かすが、小木は口を割らなかった。
「正直成功するか分からんからな。焦らんとゆっくり待っててーや」
そう言うと小木はほな、また......と言って部室から外へ出た。
「小木君、どこへ行くの?」
黒木が尋ねる。
「ちょっと準備せなあかんものがあるからな。まぁ楽しみにしててや」
そう言って小木は去っていった。
――その日から数日間、小木は部室に姿を見せなくなった。




