幼き挑戦者 -1-
「あ、あの、赤城先輩はいらっしゃいますでしょうか!」
革命部が発足して2人目の挑戦者は、太一が以前買いだめした本を読み終わり、暇を持て余していた放課後に現れた。
来訪者に気付いた黒木が対応しようとするが、その姿を見て困惑しているようであった。
「丁度いい時に来てくれたわね。赤城君も今暇だから、いつでも戦えるけど......。あなたが戦うの?」
黒木が疑問を持つのも無理はない。
その挑戦者は、高校生とは思えないほど幼い顔立ちをした、小さな少女であったためだ。
小木はロリ......やと......、などと呟きながら、呆然と立ち尽くしていた。
「は、はい。私は赤城先輩と戦いに来ました。1年の小野くるみって言います。よろしくです」
小野くるみと名乗った少女はちょっぴり慌てながらもそう自己紹介した。
「俺が赤城だけど、本当に良いの? 結構痛いと思うよ?」
太一にも少女を痛めつける趣味は無い。
目の前の少女と戦う気は起きず、親切心からそう警告したが、くるみは悲愴な面持ちで口を開いた。
「わたし......どうしてもお金が必要なんです......。お金がないと、お母さんが......」
彼女は自らの身の上を語り始めた。
小野くるみは長女として両親のもとに生まれた。
親は始めての子供である彼女を大層可愛がった。
くるみが欲しがるものは何でも買い与え、何一つ不自由ない、幸せな日々を送っていた。
しかしそんな日常も、くるみが5歳の時のある事件によって唐突に終わる。
父親の死である。
仕事へと向かう道中に、車に轢かれそうになっている子供を助けて自分が車轢かれたということであった。
突然すぎる父の死に、くるみは泣くことも出来なかったという。
「あの時は......、これが夢かなんかじゃないかなって......思っていて......」
そう言いながら、くるみは涙をこぼし始めた。
黒木は見ていられなくなったのか、くるみに声を掛ける。
「思い出したくなかったら、無理しなくていいわ。」
しかし、くるみは大丈夫ですと言って説明を続けた。
父の法事が済むと、助けられた子供とその親が、お礼にとくるみ達の元へやってきた。
その子供は、5歳位の女の子であった。
「お父さん、この娘がくるみと重なっちゃったのかも知れないね」
母はそう言って泣き崩れた。
その母の姿を見て、私のせいだとくるみは罪悪感を持つようになった。
父が亡くなってからは、母は働き始め、なかなか家にいないようになった
くるみは寂しかったが、仕事から帰ってきて疲れた表情の母の顔を見ると、そんなことは口には出せなかった。
そんな日々が続き、くるみは高校に進学した。
バイトも始め、少しでも家計の足しにと考えていたが、幼い顔立ちと体型が影響してか、どこも雇ってはくれなかった。
「こんな小さな子を働かせてるのかって問題になると面倒だし、悪いねぇ」
結局バイトも決まらず、普通の高校生活を送っていたが、不幸はまた訪れた。
母が倒れたのだ。
父が亡くなって以来、ずっと一人で娘を養ってきたのだ。
仕事と家事の両立に、肉体が限界を迎えたらしい。
くるみが病院に行くと、母は弱弱しい声で、
「ごめんね、くるみ......。心配かけちゃって。すぐに治すからね......」
とくるみを気遣った。
しかしその気遣いが、くるみの心を傷つけた。
「お母さん......、いつも私の心配ばかりで、自分のほうが大変な状況なのに......」
くるみはそう言うと、泣いて赤くなった瞳で太一を見つめながらこう結んだ。
「私、お母さんを助けたい。その為にお金が必要なんです。だから......、赤城先輩、私と勝負してください!」
小木は話を聞き終わると、涙を流しながら太一に提案した。
「くるみちゃん大変やったなぁ......。イッチもうお金あげればええんちゃう? ワイもちょっとは出すで」
勝手なことを言ってくれるものだ。
くるみの話には同情するが、太一にはそこまでする義理は無いはずだ。
「小木君。それはダメよ。くるみちゃん、大変だとは思うけど、それなら赤城君と決闘するということで良いわね? 赤城君もいいかしら?」
はい、くるみが頷く。
(戦い辛いよな、こういうの)
太一は迷いながらも決闘の申し出を受けた。
こうして4人は決闘場へと向かった。




