赤城太一と生徒会
赤城太一は高校2年生である。
原因は定かではないが、クラスで孤立していた。
唯一、同じクラスの小木卓夫とはよくつるむがカースト底辺同士がつるんでいるだけで、そこに友情は無い。
話し相手がいないから暇つぶしとして話すが、学校が終わればそれまでの関係だ。
(なぜ自分はあいつらと違うのか)
視線の先に映る、楽しそうに会話するグループを見ながら、そんなことを考える。
ルックスもそこまで悪い方ではないはずだ。
性格も何が問題か分からない。
しかし、昔から運動では皆に敵わなかった。
それはつまり昔から孤独だったということであろう。
ケンカしても誰にも敵わず、時には虐められたこともあった。
しかしその度にクラスのカースト高位者達が虐めを止めた。
クラスの委員長やその友達グループがいじめっ子集団に注意をすれば、彼らは従う他なかった。抵抗すれば"力"で負けることは目に見えていたからだ。
そうして上に立つ者が"力"を持つ学校は、平和なものではあった。
しかし虐めが収まろうとも、友達が出来ることはなかった。
何故自分には普通の人間にはいる友達が居ないのか。
この問いに明確な解答が与えられることが無いことは太一も分かっていた。
だが、少なくとも自分に"力"があれば、せめていじめっ子達に対抗できるだけの"力"があれば、虐められることはなかったであろう。
それに"力"を持つものは、友達に囲まれて楽しそうにしている。
彼らにあって自分にはないもの、それは"力"くらいしか思いつかない。
"力"が無いから。それが太一が考えた出した結論であった。
普通の人間と同じくらいの"力"が自分にないこと、それがたまらなく悔しかった。
そして、"力"が平等に与えられていないこの世界がたまらなく憎かった。
「イッチ、暇そうにしとるから話しにきてやったで」
気が付くと小木が隣に立っていた。
「別に暇でも問題ないし。別こなくていいから」
「はいはい、ツンデレ乙」
太一はウンザリする。
話してて悪い人間でないことは分かるのだが、口調がネットの影響を受けていて鬱陶しい。そしてイッチなどというアホみたいなあだ名で呼ばれることにも腹が立つ。
太一のイチからとったと言っていたが、センスのかけらも感じない。
そして無駄に馴れ馴れしい。
小木と話していると、こんなやつしか話す相手がいない自分が情けなくなるが、今はそれを嘆いても仕方ない。
太一は小木に視線を移すこともなく問う。
「なんか用あんのかよ」
「速報 カンニング犯の処分が"生徒会"の判断により1週間の罰清掃に決定」
「どうでもいいな」
「一応同じクラスの人間の話なのに冷たいんやね」
太一は夏前に起きたその事件に関する記憶を辿った。
カンニングはありふれているようで、それがバレるのは珍しいことだ。そしてその事件の犯人が同じクラスの人間であるということで、クラスでは一時期話題になってた。
ただ犯人の名前はなんだったか......、太一は思い出せなかった。
だがクラスメイトとはいえ、関わりのない人間だ。
「一々覚えてないだろ。俺に関係ないし」
「それも一理あるけどな」
小木はなにか言いたげであったがそれ以上は言わなかった。
「お~いオタク。悪いけど一階でジュース買ってきてくんない?」
小木をどこかのグループがパシらせようと声をかけてきた。
小木もカースト底辺であるからよくパシりにされているが、嫌な顔せず素直に応じる。
(こいつにはプライドがないかよ......)
人のパシリになるなんて、少なくても太一には出来ないことだ。
「しゃあないな。ほなまたな、イッチ」
そう言って小木は去っていった。
残された太一はカンニング犯の名を思い出そうとしたが、それが叶う前に授業の始まりを告げる鐘が鳴った。
そしてまた、流れ作業のように何もない1日が終わる。
------------------------
生徒会、それは選ばれし生徒のみがつくことが出来る、学校の運営を任せられた機関である。
本来はお飾り的役職であったが、世界の変化に伴い、強い生徒=人と仲良くなれる、優秀な生徒により学校を運営するべきという意見が主流となった。
これには教職員の負担を減らす意味合いも勿論あるが、生徒達の社会勉強という側面もある。
生徒会に入れるような生徒は将来企業や国を引っ張ることが期待されるため、生徒会の仕事を通しその練習をさせようというわけだ。
生徒会は学校の規則の設定や、規則を破った生徒の補導、制裁の決定など、学校内においては絶対的な権力を有する。
このように強大な権力をもつ生徒会であるが、入るためには選挙戦に勝たなければならない。
これは政治家を決める時と同様に、候補者達による1対1の決闘である。
これに勝った8人だけが生徒会に入ることが出来、その中でも1番強い人間が生徒会長を勤める。
現在の生徒会長は城嶋明。
サッカー部のキャプテンを務めており、同時にチームのエースストライカーである。
その右足は”黄金の右足”と呼ばれ、全国レベルの逸材である。
爽やかなルックスと真面目な性格から、生徒からの人望は非常に厚い。
生徒会が生徒を処罰するなどの強権を発動しても許されるのは、生徒会長を始めとした、生徒会員の人気によるところも大きい。
彼らの人の良さがあるからこそ、生徒は定められた規則を守る気になるのだ。
もちろん規律を破るものも稀にいるが、それらの生徒を発見、確保することは、彼らの身体能力を持ってすれば朝飯前である。
政治形態として最良のものは、優秀な独裁者による統治であるとされている。 生徒会、特に会長である城嶋はその理念に従い、日々より良い学校を作るべく奮闘している。




