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03


「み、皆さん無事ですか!?」


 先生のリズムに似合わない切羽詰まった声。ずれた老眼鏡を片手で直しながら、教壇から半ばずり落ちるようにへたり込んでいたおじいちゃん先生は素早い動きを見せた。

 教室の現状を確認すると、怪我している生徒がいないか視線を巡らせる。真琴同様に多少の切り傷を負った者は居るが、それでも絆創膏レベルの負傷者のみ。一瞬安堵の表情を見せた先生は、すぐに顔を引き締めて廊下へ消えた。他のクラスの状況を確認しに行ったのだろう。


「な、なんだったんだろうね…」


 呆然と呟くクラスメイト。一人が溢したことで、堰を切ったように皆が話し始めた。


「やばくね?」

「窓割れた時死ぬかと思った」

「ってか、割れた時もう揺れてなくね?」

「……じゃあ、なんで割れたわけ?」


 疑問が浮かぶ。不安が募る。

 得体のしれない恐怖感が、強く根付く。


 足音が、した。

 よく考えれば、おじいちゃん先生のリズムではない足音が。

 だけどそんなこと考える余裕も無くて。

 やけに弾んだ、その場にそぐわない足音は何の躊躇いも無く教室に踏み入った。


「ちったぁ、やり過ぎたかァ?」


 黒いズボンに、黒いパーカー。黒い髪の毛に、黒い瞳。

 フードを深く被った男――声音から判断して間違いない――は、唯一見える口元だけでその異常さを十分に生徒たちにわからせた。


「おーおー、警戒されてんなァ、こりゃ」


 足音が、響く。

 おじいちゃん先生は、いつも、謙虚に忍んで歩いてた。


「まァ、悪ィんだけどよォ?」


 男の手が、不自然に背中に回っていると、今、気が付いた。


「黙って言うこと聞いてくれや」



 銃口が真っ直ぐに、向けられる。


 その引き金に男の手が掛けられた時、物語は動き出す。


 

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