体育祭
「選手宣誓!私たちは!」
「力の限り戦い!」
「全力を尽くすことをここに誓います!」
ゆい、ひかり、ひかるの三人が選手宣誓を終え、生徒会チームの席へと戻る。
今は四葉学園最大のイベント、体育祭!
一昨年の、生徒会七人(正確に言えば五人)の身体力の高さに見かねて先生達が戦い方を紅白対抗ではなく、
生徒会(七人)VS全校生徒(不特定多数)
としたのだ。
一見無茶に見えるこのカードも、今期の生徒会は去年。優々と勝利して見せたのだ。
十二個の種目中、十二個勝利したのだ。余裕で。
という事で、全校生徒対生徒会七人という無茶振りカードは今年も再現されたのだった。
『一番最初の種目は、リレー!出る人は入場口へ移動してください』
放送部の人たちが元気に司会を担当している。
「行きますか」
「全部出るなんて気が引けるんだけどね~」
「とか言いつつ、全部本気出すんだろ?」
ひかるは髪の毛をポニーテールにまとめているひかりに向かって言った。
「えぇ!選手宣誓で「力の限り」って言ったじゃない」
「「「「「「はぁ」」」」」」
「何よ、その呆れた声は!」
「「「「「「いや、別に」」」」」」
「絶対、馬鹿にしたぁ!」
そして、淡々と何が起きるわけでもなく、体育祭は進められ・・・。
『さぁ!最後の得点種目!綱引きです!出場したい人は入場口へ!』
得点種目最後の綱引き。今回は、出場する人ではなくしたい人なのだ。
ふつうなら、こんな化け物じみた生徒会チームに挑もうなんて人は居ないのだが、全校生徒チームは数が多い。
毎年勝てるかも!という期待を込めて、全校生徒チームと全校生徒チームの親たちで挑んでいるのだ。
「さ、今年も瞬殺してやるわ!」
生徒会チームも(ひかりだけ)意気揚々と入場していく。
「はぁ~。今年も無駄な体育祭がやっと終わるのか」
「普通に俺たちを振り分けた方がいいのにな」
『位置について!よーい!スタート!』
ドーン
『今年も生徒会チームの勝ちー!』
「今年も瞬殺かよ」
「有言実行だな」
そして、かなり面白くない体育祭の午前の部が終了した。
『お昼休みでーす。皆さん昼食をとりましょう』
「午前の部やっと終わったか」
「長かったな」
「次は演技だよ!気合入れていこ!」
「お前の体力は無尽蔵か」
実際ひかりはずっとテンションが高く、一番頑張っているはずなのにずっとテンションがたかい。
「この、午後の部を楽しみにしてたんだよ!去年まで舞ってた先輩が卒業したからねー。今年こそあれを私が舞うんだよ!体力も無尽蔵になるよー」
だれが見ても浮かれている。
この四葉学園の女子なら確実にあこがれるもの。それは、体育祭の舞。何よりも綺麗な「天女の羽衣」を着て、生徒から選ばれた人が体育祭の午後の部の初めに舞う。
「じゃ、着替えてくるねー」
ゆいとともに生徒会室に消えるひかり。
「どうなるか楽しみだな」
ノンビリ昼食を取りながら、ひかりが着替え終わるのを待った。
「どう?」
ひかるの前で一回転してみせるひかり。
「馬子にも衣装だなって、痛!やめろよ!」
「だれが馬子か!」
ひかるが頭を抱えてうずくまる。
「ひかりちゃんきれいだな」
「天女の羽衣だしな」
「それは、「天女の羽衣」を褒めているのよね?」
「「あぁ」」
「それは、それできずつくなぁ・・・」
うぅ・・といいながら、運動場の真ん中へ走っていった。
「よろしくー!」
ひかるたちに向けて手を振る。
「りょうかーい」
楽器を取り出して、振りかえす。
『さぁ!そろそろ午後の部をはじめますよー。午後の部最初のプログラムは、毎年恒例生徒から選ばれた女子による、捧げの舞でーす!』
ひかりは、運動場でかた膝をついて、俯いていた。放送が流れ終えると叫んでいるわけでもないのに運動場全てに聞こえるよく透る声で言った。
「戦いの女神よ!私たちは、誠心誠意つくし戦い抜いてきました!これから踊ります舞はあなた様に捧げさせていただきます!」
言い終えるとすっくと立ち上がった。
どこかでポロンとハープの音がした。
それが合図かのように、ひかりは舞う。
蝶のようにヒラヒラと、女神のごとく美しい。
サラサラの金色の髪が、動くたびに煌き、風になびく。天女の羽衣がひかりの美しさをより際立たせる。
(去年まではこんなに綺麗じゃなかったよね・・・)
《シッ!》
小声で喋った子は周りの子に注意されてしまった。
見る者全てが見入ってしまう。見ほれてしまう。ずっと見ていたくなるほど綺麗だ。
楽器の音も綺麗で舞をより綺麗に見える。この音もずっときいていたくなるほどだ。
曲が終わりに近づく。
《あぁ!》
あれほど綺麗な舞が終わってしまうことを心から残念がった。
リィンと音がして、ひかりが肩で息をしながらその場に立ち止まる。
「ありがとうございました」
ぺこりとお辞儀した。
すると、わっと歓声が沸いた。
「すごーい!」
「きれいだったー!」
などなど。ひかりを褒める言葉ばかりが出てきていた。
「ふん。まぁまぁですわね。私の方が綺麗ですわ!」
などと、寝言を起きて言う馬鹿は自称学園一の美貌を持つ都城だ。
まぁ、周りから「何言ってんだコイツ」という目で見られただけに終わった。
「来年も楽しみにしててねー!」
そういってひかりは生徒会室のある時計塔に消えた。
『それでは、学年別の演技を始めたいと思います』
初めは一年。次は二年と、後に行くほど学年が上になっていく。
『最後は、六年生です』
「あれ?ひかりは?」
ゆいが組体のはちまきを巻きながら聞いた。
「時計塔に行ってから帰ってきてないな・・・」
「まさか・・・・」
「六年せーい!全員ならびなさーい!」
走りながらひかるはゆいに聞く。
「まさかって?」
「たぶん、時計塔の屋上でサボってると思う。うえから高みの見物でもしてるんじゃないかな?」
「あいつ・・・」
そのころ屋上で。
「去年同じ高さからみたからなぁ。上から見るとどうなんだろ」
ウキウキしながらひかりが寝そべって下を見ていた。




