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Smile Japan企画の投稿です。
私の他の作品とは、一線も二線も隔しております。
いつもの路線を期待してたのに、がっかり・・・とかしないで下さいね。
笑えるものを考えてると、何故か「落語」を書いておりました。
自分でも何故???
「ほらほら、あそこバカな狸が昼寝してるぞ。」
「だな、あんなに間抜けな顔して、そんなヤツにはやっぱりやるしかないよな?」
「な?」
狐の兄弟の赤樫と青桐は木立に紛れ、花の咲き乱れる原の只中で寝ている一匹の子狸を見つけ、眺めておりました。
ここは人の世界とは違う、妖怪の住む異界であります。
ただの狐や、ただの狸ではなく、妖術を扱うエリート達は、人の世界ではなく、異界に暮らし、日々その技を鍛えて暮らしております。
「どうしようか?」
「どうしようか?」
何の注意も無く、ただ無防備に眠る狸は、修練に励む子狐の腕試しにはもってこいの玩具です。
「赤樫、最近習った変化の術を使おうか?」
「そうだね、人に化けて脅かそうか?」
二匹は隠しにから葉っぱを出すと、頭に載せ・・・ドロン。
どこからともなく現れた煙が晴れると、そこにはどこかおかしな人のようなものが立っていました。
しかしそれは致し方ありません。幼い二匹はまだ人を見た事がないのです。
幼い二人どころか、人の世界は物騒だと言って、久しく外の世界に出た狐はおりません。出た事があるのは、長老やそれに並ぶ、古狐達しかおりません。
それでも昔からの慣わしで、人の世界を学び、人を化かす術を学んでいるのであります。それ故、授業に使われる教材は、いつとも知れぬ時代に描かれた、出来の悪い人の絵を延々と使い続け、ニ匹もその絵を忠実に模しており、実は優秀な子達のようであります。
つるんとした顔の、古めかしい着物を纏った姿に化けた二匹は、こっそりと狸に近付きましたが、もうすぐ辿り着くという所で足元が崩れ、すとーんと落ちてしまいました。
何が起きたものかよ、丸い空を見上げながら目をぱちくりさせておりますと、何匹かの狸の顔が丸い空を侵食しております。
狸達は穴の中の二匹を見下ろして、愚かな子狐だと嘲り、したたかに笑い、いずれその声は段々と離れて行きました。
ニ匹の子狐は葉っぱを握り締めて悔しがり、狸達への復讐を誓うと、一匹が梯子に化けて穴から抜けました。
***
さて、それからが大変です。
泥だらけの二匹を訝しんだ仲間が訳を問い質しますと、自分達の事のように憤りました。その話は学校の教師にも伝わり、教師達もその話に腹を据えかねました。
「大多数で幼い子狐を落とし入れようとは、卑怯な奴らだ。」
「断固抗議すべきだ!」
「いやいや生ぬるい、狸どもをやり込めようではないか。」
おかしな話になってきました。
人伝・・・いえ、狐から狐に話が伝わる中で、いくらか尾ひれが付いてしまったようです。
狐は狸に宣戦布告し、訳の分からぬ狸は事情を知る者を探しますが、名乗り出る者はいません。
あまりの事態に子狸達は、驚き、怯え、知らぬ存ぜぬで徹す事にしたようです。
狸達は、降りかかった火の粉を放っておく訳にもいきません。
いつ狐達が仕掛けてくるとも分かりません。
狸の中の聡い者が、ある提案を致しました。
「戦は無益です。技を競う事を提案しては如何でしょう? 公正を期すために、天狗様にでも間に入って頂き、優劣をつけて頂けば良いのではないでしょうか?」
その案は多くの賛同を得て、正式な使者を立てて狐の側に伝えられる事になりました。
***
狸の使者を迎えた狐は、実はホッと胸を撫で下ろしました。
一時の激情の勢いで狸に宣戦布告をしたものの、冷静になるだけの時間が過ぎれば、赤い顔は青く冷め、改めて件の兄弟に話を聞けば、元は子供の遊びです。
どう撤回したものか、教師達は連日頭を悩ませました。
そもそも仲など良くない間柄、狸に頭を下げたくなどありません。
良い案が出るはずも無く、繰言の続く話し合いの最中にもたらされた狸の提案は、手放しで受け入れられました。
狐と狸はそれぞれに使者を立て、一緒に天狗の元に遣わす事になりました。
片方だけでは不利になり、別に出せば互いを陥れようと画策するだろうと、互いに信用なりません。さすがの仲の悪さです。
さて、満場一致で受け入れられた案ですが、皆、自分が使者に選ばれるのは快しとは思いません。
狐と狸が毎日顔をつき合わせて数日を過ごさねばならないのです。当然成り手が無く、皆が譲り合う形となりました。
結局、狐側では責任を取る形で二匹の親が選ばれ、狸の側は少し違って、天狗に会ってみたいという、好奇心の強い若者が最終的に名乗り出ました。