7 タバコ(?)を咥えた銀髪幼女ちゃん
「会いたかったよー! アークちゃん! 相変わらず可愛い! 相変わらず細い! 相変わらずエロイ!!」
マリポーサ・ラックスは、きのう会ったばかりなのに、数カ月ぶりに再開したのか? という雰囲気だ。
この世界、いやアンゲルスでは珍しくない猫との〝獣娘〟で、髪の毛は黒と金が入り混じっている。口元にはピアスがつけられているが、しっかり穴を開けたわけではない。イヤリングを口ピアスにしているような感じか。ネコ耳はピンと立っていて、ご機嫌そうに喉まで鳴らしている。
「そう。僕の記憶が正しければ、確かきのう会ったはずだけどね」
「時間なんてナンセンス! 私がそう思ったときが、そのときなのだー!」
「なんのことやら」
天真爛漫で裏表のない獣娘。そう言えば聞こえは良いが、人間という連中は裏側を勘ぐる生き物でもある。キャメルの眉間に露骨なほどシワが寄っているのを見れば、アークとてここはふたりを引き離すべきだと感じてしまう。
「キャメルちゃんも会いたかったー! キャメルちゃんも可愛いよー! ギューってしてあげる!!」
「やめなさいよ。ちょ、ホントに──!!」
あ、これ苛立ちで発火するな、と察したアークは、即座にマリポーサからキャメルを引き離す。
「キャメル、同級生を燃やしたらまずいよ。停学で済まないかも」
「……ちッ、そうね。心の底から、そのモジャモジャした髪の毛燃やしたかったけど」
「え、キャメルちゃん私を燃やそうと──」
「マリー、落ち着こうか。君が泣いたら話もこじれる。ほら、マタタビあげるから」
「やったー!!」
マタタビの入っているクッキーを、こんなときのため用意しておいて良かった。アークはそれをマリポーサに手渡し、彼女は無我夢中でクッキーをしゃぶる。
「ん、んじゃあ、マリー。授業被ったら会おうね」
「んにゅー。んにゃ~」
瞳孔がまんまるに広がり、クッキーをむしゃぶりつきながら、マリーは自分だけの世界へ入っていく。なんでも、猫との獣娘がマタタビを使うと、依存性のない凶悪な麻薬になるらしい。猫類の獣娘がマタタビを使っているときは、どんな危険薬物よりも快感を得られるとか。
「……放っておいて良いの?」
「マリポーサは特例入学だから、よほどやらかさない限り停学処分にもならない。というわけで、授業へ行こう」
キャメルは、アスファルトの上に寝転がってクッキーを吸うマリポーサを一瞥し、少し怪訝に感じたようだ。
「……一応自分のことが好きな子に対して、あの態度? アークって結構冷たい子なのかも」
まぁ、マタタビにしゃぶられているマリポーサの相手ができないのも事実。キャメルはアークから疑念に思われる前に彼へついていくのだった。
*
メイド・イン・ヘブン学園、通称MIH学園は、毎日少なからずの入学者がいる。クラス制でないから、大抵は授業が被って気が付く。それに、夏休み直前に入学してくる子はなかなかいない。いるとしたら、それはすでに実力が証明されている。授業などなくても、実力は飛び抜けているような生徒だ。
その日、アークとキャメルは1限目以外授業が被らなかった。いや、一般教養を中心に受ける〝平凡〟なアークと、魔術学ばかり受けて性教育も受けていないような〝天才〟キャメルとでは、むしろ授業が被ることのほうが珍しかったりする。
そのため、キャメルは魔術学のひとつ薬草授業へ移り、アークは2限目に国内歴史を受けることとなる。
「転校生を紹介します。入って……あぁ、すごいねェ。タバコをくわえていますよ」
銀髪・碧眼・人形や妖精のごとく整った顔立ち・キャメルとそう変わらない低身長。
そして、子どもっぽい雰囲気から分かるのは、彼女が飛び級生だということだ。




