6 罪深きヒトたち
「随分、女子が多いわね」
「MIHって、男女比1:4だもん。珍しくはないでしょ」
リムジンに乗って学校へ向かう最中、アークとキャメルは女子生徒の割合が多いことに気が付く。MIH特有の青を基調とした制服を着ているのは、ほとんど女子だ。
「そうかしら?」キャメルは眉をひそめる。「男女比1:4なのはその通りだけど、これじゃまるで女子校みたい」
「元々、女子校に限りなく近い学校でしょ。困ったことに」
「なにに困るのよ」
「男子の友だちができないことだね」
「私という許婚がいても?」
「うん。同性の友だちくらい、欲しいものさ。そういうのがいなければ、正直学校は面白くない」
アークの最近最大の悩みは、『同性の友だちができない』というもの。移動教室前提で授業が組まれており、当然ながら異性の比率のほうが高い。それに、アークは顔立ちが良いほうらしく、やたらと話しかけられる。当然、女子から。そうなれば男子も嫉妬してしまう。負のスパイラルとしか思えない。
「そういうものかしらね。私だって、高校生の先輩しか友だちらしい子はいないわよ」
「それはね、キャメル。君が変わり者だからだよ」
もう驚く次元を超えているからなにも言わなかったが、キャメルはまるで恋人のごとくアークと手を組んでいる。無い胸を当ててきて、それなのに知らん顔。ますます、この世界がどうなってしまったか分からない。
「変わり者とは失礼な。それを言ったら、アークだって大概でしょ」キャメルはスマホで写真を見せてくる。「昔、でもないわよね。男子は女装、女子は男装するイベント覚えてる? 男子はみんな嫌そうな顔しているけど、貴方だけ照れてるじゃない」
「……やめてよ。だって、あの場で僕より可愛い子がいなかったんだもん」
アークの性癖は支離滅裂も良いところとされる。ありがちな男らしさよりも、男なのに女の子みたいだ、と言われると、彼は喜んでしまう。ちょっと業の深い性癖だ。
「まぁ、似合ってたわよ。素材が良いのかしらね。メイクしたら、本物の女の子がいらないくらい」
「そ、そうかな?」
「そうよ。私は身長が低いから、男装似合わなかったけれど、貴方は身長的にもちょうど良いわ」
そうやってアークが顔を赤らめていると、
『お坊ちゃま、お嬢様。まもなくMIH学園校門に到着致します。お忘れ物等ございませんよう、お気をつけください』
運転席からそんな声が聞こえる。アークとキャメルは共にスクールバッグだけ持って、降りられる準備をしておく。
それから1分足らずで、アークたちはMIH学園の巨大な校門へたどり着いた。ふたりは降りて、晴れ渡る空に目を痛くする。
「サングラス持ってくれば良かった」
「そうね。さて、お姉様から貰った腕時計と香水をつけてみようかしら」
キャメルはいかにも高そうな腕時計をはめ、香水を首元につける。
「これでよし。お姉様もセンスが良いわね。いくら弟の幼馴染兼許婚だからって、私の趣味にぴったりだもの」
「そうだね。ウッディ系の良い匂いだ」
「時計も美しいわよ。機械仕掛けで、荘厳さすら感じるわ」
「お姉ちゃん、キャメルのこと好きだからね」
「悪いけれど、同性愛の気はないわよ」
「そういう意味じゃないんだよねぇ……」
キャメルが天然でとぼける中、先ほど感じた〝男子生徒が極端に少ない〟状態は、学園に入ることで余計に強まった気がする。
「ねぇ、キャメル。きょう男子って別の校舎で集合なのかな」
「そんなの、聞いたことないわよ。たまたま休みの子が多いんじゃない──」
刹那、駆け出してアークの身体に突っ込もうとする者が現れる。思いきり走って……というより、魔術を使ってワープのごとく距離を狭めている感じだ。
「わっぷッ!?」
その者──少女は寸前で減速し、アークに抱きついて首元を甘噛みしてくる。
「ま、マリポーサ?」
幼なじみは、不機嫌そうに舌打ちする。




