11 最近のオカズは?
「ならさ、キャメルお姉ちゃんも呼ぼうぜ。こう見えても私、キャメルお姉ちゃんと会ったこともないんだ」
「え」
「なに硬直しているんだい。喧嘩でもしたのか?」
「あ、いや。キャメルは今授業だよ?」
「授業が終わった後、お父様の家へ来てもらえば良いだろ。お姉ちゃん、何時くらいに終わるの?」
「きょうは午前だけだと思う」
「よろしい。すでに車用意してあるから、家行くぞ」
校門へと、アークとルーシは向かっていく。そこには銀色のセダンが停まっていて、ガラスの向こうから見える運転手の男はカタギには見えない。
「乗れよ。時間は有限だぞ」
「う、うん」
車の中特有の匂いと、タバコ消しかなにかの匂いがアークの鼻を苦しめる。ルーシが隣に座り、運転手がアークへ話しかけてくる。
「お嬢様、このガキは?」
「私のダチだ。ナメた口利くなよ」
「分かりました。お名前は?」
「アークです」
「アーク……アーク・アンゲル=ロイヤル?」
「そうですね」
「こりゃ、絶対事故らないように運転する必要がありますな」
「事故る前提なのか?」ルーシが鼻を鳴らす。
「お嬢様はトラックカーに潰されても死なないでしょうが、アーク様はそうもいかないでしょう」
「言えているな。さて、クールと私の家まで頼むよ」
「承知いたしました」
いかにも反社会的──目つきが異様でタトゥーだらけの青年は、ハンドルを握り直す。
「ふぁーあ。最近眠れないんだよな。睡眠不足は美容の天敵だし、睡眠薬がほしいぜ」
「ルーシくらいの年齢で眠れないことって、あるんだ」
「私とて、悩みのひとつや100個持っているものさ。ま、詳しい話は家で言う」
そこで会話を途切れさせ、ルーシはなんとか眠ってみようと目をつむるのだった。
*
「結局眠れなかったな。あー、困った」
「……ルーシ、言いたくないけどさ」
「なら、言わなきゃ良いじゃねェか」
「君、寝相悪すぎない?」
「私、寝られていたのか?」
「少しね。なんで僕に抱きついてくるのさ」
シートベルトをしているはずなのに、ルーシに退屈な拘束は通用しないらしい。彼女は何度もアークに抱きつき、その甘い匂いがする頭頂部をアークの鼻へ押し付けてきた。
「それは済まなかった。けど、10歳のツルペタ幼女様に抱きつかれたなんて、一生のズリネタじゃねェか」
「僕はロリコンじゃない」ムスッと口を尖らせる。
「その締まらない顔でロリコンじゃない、は無理あるぜ。どうせ携帯には、児童ポルノがたくさん──」
「見てみる?」
「あァ?」
「あらぬ疑いをかけられるくらいなら、見せたほうが早い」
「潔いヤツだな……」
と言いながら、ルーシはロックを解除したアークのスマホのブラウザを見る。
「……なんだ、女子大生ものが多いな。ちょっと年上ものでズッているのか。アジア系の女の子だらけだし、イチャラブものが好きだと。へー」
「独唱しないでよ……」
「いや、少しくらい尖った性癖ねェの? SMとか、ス**ロとか」
「そもそもあまり自分を慰めないもん」
「モテる男は***が乾く暇もねェってか」
「彼女、できたことないよ」
「は? なら、セ*レがいるってことかい?」
「いたことない」
「……オマエ、本当に中学生?」訝るような顔でこちらを見てくる。「エロイことは悪じゃないぞ。ましてや思春期のガキなんて、1日3回は発射しているものだろう。最後にズッたのは?」
「分かんない」
「その口ぶりだと、ウソをついているわけではないか……」
アークも大概変人だ。周りが濃すぎるだけで、アークに一切の問題がないわけではなかったりする。




