1 許婚兼幼なじみでシングルベッドの狭さを知る
「んん? ケーラ、ここお兄ちゃんのベッドだよ──え、なんでキャメル?」
寝ぼけた目をこすり、アーク・アンゲル=ロイヤルは口をあんぐり開ける。シングルベッドに誰かが入り込んできた。小学生の弟がなにか理由があって入ってきたと思ったが、それは見当違いだったらしい。アークのシングルベッド、ふたりで寝るには狭すぎるベッドには、幼なじみの少女がいた。
「……なんで股間をまさぐるのさ。キャメル」
そんな幼なじみキャメル・レイノルズは、アークの股をペタペタ触ってくる。というか、握ってくる始末。アークは辟易としながらも、どうもキャメルは夢遊病のごとく無自覚にこんなことをしていると知る。寝息を立て、なにかを成し遂げたときのような笑みをこぼしている。
「キャメル、起きて。不法侵入で捕まりたいの?」
なおも反応なし。アークは首を傾け、やがて別室へ向かうべく起き上がろうとした。
しかし、キャメルが袖を掴んでくる。この幼なじみの目的は? 謎は深まるばかりだ。
「はぁ」
スマホで時間を確認する。時刻はまだ深夜3時。起きるには、少し早い。それに、眠たい。
だから別室で寝ようと思っているわけだが、キャメルの握力がそれを許さない。無理に引っ張れば、キャメルはベッドから落ちてしまう。
「仕方ない。起きてるヒトに助けてもらおう」
アークの家は兎にも角にも広いので、同じ屋根の下へいるのにスマホで連絡を取ることも珍しくない。オンラインになっている=起きている使用人に電話をかける。
『どうされました? お坊ちゃま』
「どうしたもこうしたも、キャメルが隣にいるんだよ」
小声で使用人に伝える。
『良かったではありませんか』
「は?」
『アークお坊ちゃまとキャメル様は許婚ですから。まぁ、中学2年生でそういった関係はどうかと思いますが、きっと旦那様もお喜びになりますよ』
「いやいや、許婚でも限度があるでしょ……というか、キャメルを中に入れたのって」
『そうですよ。私たちです』
「……僕、貴方たちのことをクビにできるんだけど」
『お坊ちゃまのように優しい方が、私たちを解雇するわけないでしょう』
「あぁ、そう……」口を尖らせる。
『それと、近くに避妊用の器具は取り揃えております。シングルベッドの狭さを知るのも、良い勉強になるでしょう』
「……助けに来るつもりはないと?」
『はい』
なぜこんな発想に至るのか、知れるのなら知ってみたい。まぁ、知ったところで現状を変えることはできないが。
電話を切り、アークはキャメルに導かれるかのように、再びベッドへ座り直す。
静かな夜が、アークの心拍数を余計に加速させていく。
(キャメルって、顔は良いんだよね。最近友だちに言われるまで自覚なかったけど、確かにこうして近くで見ると、結構整ってる)
小さい顔、薄い唇、(閉じているから分からないが)キリッとした大きな目、鼻筋も通っている。顔立ちだけなら、美少女といっても差し支えない。
(でも、身長がねぇ……。中2時点で140センチくらいだと、もう伸びないだろうな)
アークとてヒトのことを言える身長でないが、それでも中2時点で140センチくらいは低身長の部類に入る。身体の線も細く、体型から女性的な魅力はあまり感じ取れない。
(さて、後5時間くらい経たないとキャメルも起きない。うーん。寝不足で学校行くの、嫌だな)
アークはスマホを見て、寝る前に送られてきたメッセージに返信し時間を潰すも、まず返事には期待できない。深夜3時なんて、みんな寝ているからだ。
そうして、アークが溜め息をつくと、
「んん……。あら、なんでアークが?」
「こっちのセリフだよ、キャメル」
眠り慣れていないベッドだからか、キャメルが目を覚ました。アークは呆れ気味に事実を伝えようとするも、
「んーん!?」
キャメルの行動に迷いはなかった。彼女は即座にアークへ抱きつき、彼にキスしたのだった。




