第56話 安らぎレイク
旋風の丘を南に進むとそこは…安らぎレイクだ…
~安らぎレイク~
安やぎレイクの水面は…名の通り静かだった…
風も穏やかで…旋風の丘の荒々しい風が嘘のように消えている…
まあそれもそうだ…場所別だし
そんな安らぎレイクの湖畔を歩きながら…ハクはふと足を止めた
ハク「……なあシズク」
シズク「…はい?」
水色のぴっちりスーツを輝かせながらシズクが振り返る。
ハク「あのな…さっきのジュベのことだ…モエに言うべきかどうか…正直迷ってる」
安らぎレイクの湖を見つめたまま…ハクは低く呟いた…
あの黄緑色のツインテール…
光彩異色症の瞳…
突然のキス…
どれもこれもモエに無関係とは全く思えない…
シズクは少し考え込むように…顎に指を当てて…考える
シズク「うーん……」
そして…困ったように微笑んだ…
シズク「どちらが正解なんでしょうね」
ハク「まあ…だよな…それに下手に言えばモエを不安にさせるし…モエに黙ってれば後で面倒なことになるかもしれない…」
少し沈黙の後…ハクは考えを述べた…
ハク「……今は黙っておいた方がいいかもな…少なくとも正体も目的も分からねえと来たものだ…」
シズク「それが無難かもしれませんね…(それにあの娘キス…しましたね…)」
シズクが前方を指差して話題にしてみた…
シズク「確か……この先がサンブ城ですよね?」
ハク「ああそうだな」
ハクも視線を上げた…安らぎレイクを抜けた先…
遠くに見えるサンブ城壁の輪郭がうつる…
ハク「サンブ城だけじゃなくて…その手前にちゃんとサンブ城城下街もある」
シズクはその言葉を聞いた瞬間に
シズク「城下街……!!」
シズクの目が興味深そうに輝く…
シズクの目が、きらりと光った。
シズク「市場とか…商店とか屋台とか……ありますよね?」
ハク「まあ普通にあるな…」
シズク「じゃあ…雑貨屋も?」
ハク「もちろんあるに決まっているだろ」
シズク「じゃあ甘味などの甘い物は?」
ハク「あるに決まってるだろ…」
シズク「……行きましょう!!」
シズクは即答した
ハク「ちょ…ちょっと待て…付き人だの侍女だの言っていたその割には…ずいぶんとテンションが高いじゃないじゃねえか…」
シズク「だって!!色んな異世界を渡ってきましたけど…城下街をゆっくり見る機会ってのは…意外と少ないんですよ?」
ハク「……まあ…それもそうか」
ハクは歩きながら…胸の奥で小さくつぶやく…
ハク「……(サンブ城だな…それにこの旅も…また一波乱ありそうだな…)」
そしてハクは口を開く…
ハク「さっき…お前色んな異世界を渡ってきましたと言ったが…」
シズク「ジョーダンですよ」
ハク「冗談か…」
シズク「それに…ハクさんが異世界だの魔法陣だのって…当たり前みたいに話すから…私ついノリで言っちゃいました」
ハク「ノリねぇ…」
シズク「そもそも私、他の異世界に行ったことなんてないですし。ずっとこのラフィルドルフで生きてきましたよ?」
ハク「……まあそうだよな…てっきりジュリナみたいに…あちこち渡ってきたタイプかと思ってた」
シズク「それに私なんて…ただの水属性の魔法に適正があるだけです」
シズクは微笑んで更に続ける…
シズク「たまたま一人で砂漠を歩いて…たまたまぴっちりキャッスルに迷い込んで…たまたま皆さんに出会っただけで」
ハク「たまたまにしちゃ…出来すぎだな」
ハクは苦笑した
ハク「それに…普通は砂漠で死ぬ」
シズク「ですよね…でも……」
ハク「ん…?」
シズク「別の異世界に行ったことはなくても…今の生活は、私にとっては十分すぎるくらい別世界です…」
そう言ってハクを見て続ける…
シズク「ぴっちりキャッスルに住んで…愛用のぴっちりスーツを着て…魔王軍や遺跡や奈落峠なんてものに関わって……正直、人生が一気に跳ねました」
ハク「言い方が雑だな…」
シズク「雑って…まあそうですけど…」
ハク「確かにな。それに俺と関わると平穏は消える」
シズク「それ…誇っていいんですか?」
ハク「半分な誇っていいのは…」
サンブ城が見えてきた…
シズク「……ハクさん」
ハク「どうした?」
シズク「もし…もしもですよ…?これから本当に異世界に行くことになったら…」
ハク「うん…それで?」
シズク「私ついていっても…いいですか?」
ハク「…いいけど…危険だぞ?みんなで向かうにしろ…」
シズク「そんなの知ってます」
ハク「それにだ…帰れなくなるかもしれねえ」
シズク「それでもです」
ハク「…おいおい…まあその時は…その時考えないとな…」
シズク「ふふ、逃げましたね」
ハク「あのな…大人の対応だ」




