第54話 この我が名は…闇に堕ちし者
その隣で…シズクは静かに微笑んでいた。
水色のぴっちりスーツの着衣者である彼女の表情は…
柔らかくどこか温かい
シズク「……素敵な出会いだったのですね」
ハク「ああそうだな…」
その瞬間だった…
――ドンッフシャァアア!!!
爆音と共に…旋風の丘の地面が抉れて…地表の砂と岩が舞い上がる…
旋風の丘の風が乱れ…爆風が二人の身体を叩いた。
ハク「っ……!!」
ハクは即座にシズクを庇うように前へ出て…
ハク「今すぐ伏せろ!!シズク!!」
シズク「はいっ!!」
ハク「なんだ…!!」
二人は身構え…周囲に神経を研ぎ澄ます…
その視界が晴れた次の瞬間
旋風の丘の上空…
渦巻く風の中に…人影があった。
宙に立つように浮かぶ、フードを深く被った謎の人物。
その存在感は、ただならぬものだった。
ハク「……お前は……」
ハクが低く問いかけた…その時。
*「この仮面…その影に隠された真実を知りたいか?…この目に宿る闇は過去の記憶を呼び覚ます。果たしてその答えを受け入れる覚悟があるのか…?」
どこか芝居がかった、しかし冷たい声音。
フードを被った人物は、ゆっくりと両手を広げ…
ばさりと、全身を覆っていた布を脱ぎ捨てた。
現れたのは…女性。
黄緑色のぴっちりスーツが身体の線を余すことなく際立たせ、
同じく黄緑色のツインテールが…風に揺れる~
その姿はあまりにも…モエに酷似していた。
シズク「……っ!?」
シズクが息を呑む。
顔立ち…髪型…体格…
どこからどう見ても…モエそのもの。
だが、決定的な違いがあった。
右目は…妖しく輝く紫。
左目は…燃えるような赤。
そうオッドアイ…
交わるはずのない二つの色を宿した瞳が…
まっすぐハクを射抜いていた…
*「この我が名は…闇に堕ちし者。よろしくお願いしましょう」
その女性は…口元に不敵な笑みを浮かべ、こう言った。
*「私の名は…ジュベ」
その名を聞いた瞬間…
ハクの背筋を冷たいものが走る。
ハク「……ジュベだと?」
風が再び強く吹き荒れ…
旋風の丘は不穏な唸り声を上げる。
モエに瓜二つの外見。
異色の瞳。
そして…明らかなハクに対する敵意。
シズクは…ハクの背中越しに
ぎゅっと拳を握りしめ…
シズク「……ハクさん」
ハク「大丈夫だ、シズク」
ハクは低く…しかし揺るぎなく答える。
ハク「こいつは……ただの偶然じゃねえ…」
旋風の丘に…再び因縁の糸が絡みつこうとしていた。
そしてこの邂逅がモエ…ハク…そして世界そのものに影を落とすことを…
まだ誰も、闇に包まれた真実を知ることは叶わぬのだ。




