第53話 始まりの場所
古びた洞窟を抜けた瞬間…
~古びた商店街~
その流れる空気が…はっきりと変わった。
ひんやりと湿った洞窟の空気から…
乾いて埃っぽい、人の気配を纏う風へ…
シズク「……寂れて…るのかと思っていたんですけど…」
少し拍子抜けしたように続ける。
シズク「寂れてる割に古い割に…人……いますよね?」
その言葉に、ハクは小さく苦笑した。
ハク「悪かったな……」
頭の後ろを軽くかきながら…肩をすくめて言う。
ハク「一部に冗談が混ざってたな…わりぃ」
そして…商店街の中央付近に置かれた、
年季の入った木製のベンチにハクは目を向ける…
ハク「……ここだ…そうここに座ったんだよ。以前背中におぶったモエと一緒にな…」
シズクは、その言葉にぴくっと反応する…
シズク「え……?」
ハク「本当に最近のことなのにな……」
ハクはそう言って…ベンチの背もたれを軽く叩いた。
ハク「そのモエは疲れ切っててさ。歩けるけど…意地張って無理してるのがまんま丸わかりでな」
一瞬…過去の光景が重なる…
白いぴっちりスーツの着衣者であるハクの背中に…
萌黄色のぴっちりスーツの着衣者であるモエがしがみつき…
ぶつぶつ文句を言いながらも、どこか安心した顔をしていた
そんな光景が…重なって見える…
シズク「……優しいんですね」
ぽつりと…思わず零れた言葉。
ハクは意外そうにシズクを見る。
ハク「ん?どうした…」
シズク「モエさんにも…オレジさんにも…それにきっときっと…誰に対しても…優しすぎる…だから…みんな、ハクの周りに集まるんだと思います」
ハクは一瞬、言葉に詰まったように黙り込む。
ハク「……買い被りすぎだ」
そう言いながらも…ハクの否定は弱かった…
商店街を吹き抜ける風が…
古い旗を揺らし…どこかで鈴の音が鳴る。
ちぃりーん~♪
ハク「さて…少し休んだら…この先の旋風の丘に進むぞ…」
シズク「はい…!!」
シズクはうなずきながら…もう一度ベンチを見た。
シズク「…(ここに、あのモエさんが……座ってた…)」
シズクは…そう思うと…
自分が今ハクの"隣"を歩いていることが…
不思議と重く…そして特別に感じられた。
古い商店街は過去と現在
そしてこれからの未来が交差する場所…
そんな気配を確かに宿していた…
そして…みんなを自然と笑顔に…
できる場所なのだろう…
~旋風の丘~
旋風の丘…そこは乾いた風が常に渦を巻き…
草一本すら素直に生えられぬその場所に…
ハクとシズクは立っていた。
ハク「本当に……懐かしいな」
ハクは丘の稜線を見つめ…ぽつりと呟く。
ここで…すべてが始まったのだ。
ハク「初めて俺がモエとの出会いを果たした場所だ…」
その声には、戦場をいくつも越えてきた者特有の静かな重みがあった。
ハク「その時のモエはな……今よりずっと強気でさ…周囲を一切信用していない目をしてたんだぜ?でも…妙にまっすぐでさ…それに危なっかしいのさ…」




