第52話 ハクとシズクと洞窟と…
シズクは素直に答えた。
シズク「私は…ルヴィン砂漠の北西の方角から来ました」
ハク「北西……か」
ハクの表情が、ほんの一瞬だけ変わる。
ハク「じゃあ…あの辺りか。風が荒くて…水脈も不安定な地域だな」
シズク「はい」
シズクはうなずき…
シズク「だから…水の加護や魔法がなければ、正直……生き残るのは難しい場所でした」
淡々と語るその言葉の裏に…
彼女がどれほど過酷な環境を歩いてきたのかが滲む。
ハクはそれ以上…深くは踏み込まなかった。
ただ、少しだけ声を低くして言う。
ハク「よくここまで来たな…」
それは称賛であり…労いでもあった。
シズクは一瞬きょとんとしたあとに…照れながらほほ笑んだ
シズク「ありがとうございます。……でも、今はこうしてハクと一緒ですから」
ハク「だな…さて…いまからここを抜ければ…あの古い商店街だ」
そう告げて、
二人は並んで洞窟の闇へと足を踏み入れる…
~古びた洞窟~
古びた洞窟の中は…外のルヴィン砂漠とは…
まるで別世界だった。
天井から垂れ下がる岩肌は黒ずみ…ところどころに細い亀裂が走っている。
足元には長年踏み固められた砂と石が混ざり…
歩くたびに乾いた音が小さく反響する
ハクは「薄暗いから気をつけろよ。足元…急に段差がある場所があるし大穴だってある」
シズク「ですね…大穴?」
ハク「ああ大穴の先にはドラゴンがいるんだ。」
シズク「そうなんですね…」
シズクは慎重に一歩一歩足を運びながら頷いた…
洞窟の冷たい空気が…砂漠を歩いて火照った身体をゆっくりと冷ましていく。
しばらく無言で進んでいると…
ハクがぽつりと口を開いた。
ハク「……ここではな、前にちょっと大変なことが起きたんだぜ…」
シズクはその言葉に…すぐ反応する。
シズク「それって……モエさんとオレジさんと…古い商店街からこの洞窟に入った時の出来事ですか?」
ハクは少し驚いたように眉を上げ…それから小さく笑った。
ハク「ああそうだな。よく分かったなシズク」
シズク「何となく…です。それに…ハクが"懐かしい"って言う時は…大抵、楽しいだけじゃない思い出が混じってますから」
ハク「す…鋭いな……(これが…女のカンか…)」
ハクは肩をすくめてしまう…勘の鋭さに…
ハク「まあ、命の危険ってほどじゃなかったが、あの時は判断を一つ間違えりゃ…今こうして歩いてなかったかもしれない」
シズクは思わず息を呑んだ。
シズク「そんな……」
ハク「だからだ洞窟も人のいる商店街も…一見ただの通り道に見えるが、油断すると牙をむく場所なんだ」
その言葉には…
経験からくる重みがあった。
……とその時前方の暗さがわずかに揺らぎ光が差し込める…
シズク「……あっ!」
ハク「見えたな。もうすぐだ」
そして、少しだけ声を張って続けた。
ハク「古い商店街に出るぞ。もうすぐだ」
ハクとシズクは古い商店街に進んでいく…




