第41話 モエの心とアスの小屋
モエは…歩きながらほんの少しだけハク達に遅れた
奈落峠を越え…風の音に紛れるように…
自分の心の奥に意識が沈んでいく。
モエ「(……私の、心の欲望……)」
アスの言葉が…何度も頭の中で浮かび上がってくる…
オペリフェール遺跡が映し出したのは…事実ではなく…
欲望と言う歪んだ自分の心の揺らぎ…
オレジが呪いでハーピーになった…あの時
冗談めかした空気の中で…不意に距離が縮まり…
オレジにされた軽いはずのキスが…思いのほか深く胸に残った。
モエ「(あの瞬間……私も…変わった…)」
ハーピーそれは人間の用でありながら鳥の翼と鳥の足を持ち…
卵を産むとされる魔物。
理屈ではありえない。それに理解もしている。
それでも…『そういう存在』になってしまう想像を…
完全に否定できなかった自分がいた…
モエ「…(…私、意外と……むっつりなのね…)」
モエの頬が…ほんのり熱くなる。
誰にも気づかれないように…萌黄色のツインテールを揺らし…
視線を自然に前に戻す…
前方では…ハクとアスが何事もなかったかのように歩き、
オレジは鼻歌交じり…シズクは周囲を警戒している。
誰も…モエの内面の嵐には気づいていないのだから…
モエ「(遺跡が映したのが"私の欲望"なら……あれは私の一部でもあったのよ…)」
そう思うと…怖さと同時に奇妙な納得があった…
モエは背筋を伸して心の中で思う…
モエ「…(でも……それだけじゃない)」
今の自分であるモエはハクの仲間で…
ぴっちりキャッスルの暮らしを作る一員で…
スローライフを夢見る一人の女性なのだから…
そして…欲望があることと…欲望に流されてしまうのは…別だ…
モエ「…(まあちゃんと…心の選択は…自分で選ぶわ…)」
~奈落峠・アスの小屋~
ハク「改めて聞くけどさ……アス、お前もぴっちりキャッスルに戻るんだよな」
アスは即答だった。
アス「もちろんだ…そのつもりで呼ばれたんだろ?俺は…」
ハク「だよな」
続けて…ハクは少し真面目な声で…
ハク「アス帰り…頼めるか?」
アス「ああ。いつでも大丈夫だ」
それを聞いて…シズクが不安そうに首を傾げる…
シズク「もしかして……来た道を…今から全部逆走するんですか?奈落峠からオペリフェール遺跡にウルファス森そして…ルヴィン砂漠…」
その瞬間…アスは呆れて言った
アス「そんな訳あるか。体力の無駄だし…時間も無駄だ」
オレジ「じゃあさ…どうやって帰るの?」
ハクは「……実はな。ぴっちりキャッスルには…地下2階がある」
モエ「……え?」
モエは思わず声を出す…
オレジ「地下……2階?」
シズク「待って…」
シズクが即座に指摘する。
シズク「地下1階には、お風呂とクローゼットしかないし……地下へ進む階段なんて…無かったです!!」
オレジ「だよねー…完全に行き止まりだったよ?あそこ…」
ハクとアスは顔を見合わせて…同時に小さく笑った。
アス「見せてないだけだ」
ハク「正確には…"見えないようにしてある"」




