第36話 奈落四天王
奈落峠の岩陰…
立ち込める霧の奥から…異形の存在たちがゆっくりと姿を現した。
まず前に出たのは、紫色の翼と長い鼻を持つ天狗。
手には妖気を纏った太刀を構え…鋭い眼光でハクを睨めつけている。
その隣には…黒い羽毛に覆われた鷲の獣人。
筋肉質な腕で長槍を軽々と構え…地面に穂先を突き立てるだけで岩が砕け散った。
さらに後方では…銀色の甲羅を持つ巨大な亀が…
戦斧を肩に担ぎながら一歩踏み出すたびに大地を震わせる。
そして最後――最も異様な存在が岩場の地面を削りながら這い出てきた。
ハク「……ッ!!なんだ…と…?!」
ハクは思わず息を呑んだ。
赤黒く灼けた体表を持つ巨大なムカデ。
胴体の左右から伸びる六本の腕…それぞれが刀を握り…
刀からは炎の熱気と毒の瘴気が立ち上っている。
刀に触れた岩が…じゅっと音を立てて溶け始めていた。
オレジ「なに…あれ……」
ハク「……おいおい冗談だろ」
紫色の天狗が一歩前に出た
*「我は紫落天狗」
次に…黒き鷲の獣人が槍を地面から引き抜き…低く喋る。
*「大鷲のケルニャン」
ガリュン!!!
銀色の亀が戦斧を地面に叩きつけ…重々しく名乗る。
*「ワシは戦斧銀亀」
最後に、灼熱のムカデが六本の刀を同時に鳴らし…金属音を響かせながら宣言した。
*「オレェェア…灼熱ムカデだッ」
四体は同時に一歩踏み出し、声を揃える…
紫落天狗&大鷲のケルニャン&戦武銀亀&灼熱ムカデ「「「「我ら…奈落峠を支配する奈落四天王」」」」
その言葉が峠全体に反響し…空気が一層重くなる。
ハクは眉をひそめ…即座に問いかけた。
ハク「奈落四天王……?まさか…魔王軍か?」
その言葉を聞いた瞬間…紫落天狗の目が鋭く細まった。
紫落天狗「……ふん。そんな連中と一緒にするな」
天狗の翼が大きく広がり、殺気がさらに増す。
紫落天狗「我らは魔王に仕える存在ではない。奈落峠を守護し…支配する者…侵入者を試し…生贄へと…選別する存在だ」
シズク「試す……ですって?」
ケルニャンが嘴を歪め…冷笑する。
大鷲のケルニャン「ここを越えし者に…その資格があるかどうかを見るだけだ」
戦斧銀亀が低く唸る。
戦武銀亀「おいうぬら…引き返すなら…生贄になりたくなければ…今だぞ。それに奈落峠は…生半可な覚悟で踏み入る場所ではない」
そして灼熱ムカデが、ゆっくりと刀を構え直した。
灼熱ムカデ「進むなら…持てる全ての命を賭けろ」
重苦しい沈黙が落ちる…
四天王の圧倒的な存在感に…
普通の冒険者なら膝を折っていただろう…
だがハクは一歩前に出た。
ハク「……なるほどな」
その顔には…恐怖よりも覚悟が浮かんでいた。
ハク「俺たちは…この先に行く必要がある。引き返す選択肢はない!!」
モエもハクの隣に並び、静かに頷く。
モエ「そうね…ここまで来たんだもの」
シズクは笑みを浮かべ、ぴっちりスーツから神器を取り出そうと構える…
シズク「私の神器ライトアクアロッドはいつでもいけます♡」
オレジは肩を回し、いつもの軽い口調で言った。
オレジ「やれやれ…奈落四天王相手に前座なしとはね〜」
四天王とハク達…
奈落峠の中心で、両者の視線が真正面からぶつかる。
戦いは、もはや避けられなかったはずだった…!!




